瀬古氏が語る、世界陸上男子マラソン展望「自分に負けたレースをしてはいけない」
瀬古氏は、初出場の5選手について「怖いもの知らずという利点を生かしてほしい」と話す 【加藤康博】
しかし近年、世界の男子マラソンはアフリカの選手を中心に高速化が進み、日本は苦しい戦いを強いられている。今大会でなんとしてもロンドン五輪へ向けた光明を見出したいところだ。
出場する日本男子マラソン陣はどのような顔ぶれなのか、またどのような戦い方をすべきなのか。レースの見どころと併せ、瀬古利彦氏(現・エスビー食品スポーツ推進局局長)に聞いた。
世界大会の経験不足をどう跳ね返すか
とはいえ、世界選手権は厳しい戦いになることは間違いありません。スピードがあり、スタミナも備え、かつ暑さにも強い世界の強豪ランナーが多数参加します。そこに挑むにあたって期待したいのはまず尾田選手。彼はスピードがありますから、レースの流れにさえ乗れれば日本人の中でも主役になるのではないでしょうか。
対して川内選手はスタミナ型の選手。今年の東京マラソンでも後半の強さを見せて尾田選手に勝っています。世界選手権の舞台でも粘って、後半に順位を上げていければ面白いでしょう。
ただこの2名はもちろん、日本代表5人すべてに言えるのは世界大会の経験が乏しいこと。これが不安材料ですね。私も現役時代、何度も海外のレースに出場しましたが、それでもいつもレース前には緊張していました。怖いもの知らずでレースに臨めるという利点を生かし、こちらの不安を吹き飛ばす思い切った走りを見せて欲しいものです。
安定した結果を残す北岡に期待
その夏のレースで成功するのは、やはり普段から安定して結果を残している選手だと私は思います。そういう選手は、自分の能力の発揮方法を知っているため、条件が厳しい夏のレースでもアクシデントを起こさず、しっかり走りきれる。これは世界選手権という大舞台で結果を出すためにも、とても大切なことなのです。
その点から期待できるのは北岡選手。彼は過去2戦のマラソンキャリアですが、2回とも安定した走りを見せていますし、ハーフマラソンでも日本代表として結果を出しています。無理をして自滅することもないですし、後半にジワジワと順位を上げてくるのではないでしょうか。