大震災を乗り越えて、バスケで笑顔と元気を東北に! 仙台89ERS、岩手ビッグブルズの挑戦=bjリーグ
大震災の影響で活動休止に追い込まれた仙台だが、2011-2012シーズンには参戦することが認められた 【写真は共同】
プロバスケットボールリーグ・bjリーグに所属する仙台89ERSも、震災によってチーム存続の危機に立たされた。多くの人々の熱意により、2011-2012シーズンに参戦することが認められた仙台だが、スポンサー企業や活動をバックアップしてくれる地元の人々も津波によって被災し、今後活動を続けていくことの厳しさは依然変わらない。
しかし仙台89ERSの試合を心待ちにしているブースターのために、チームは前に向かって進むことを決めた。
そして、新規参入の岩手ビッグブルズも震災で大きな影響を受けた。試合をしたこともない、選手もいないという、まだチームの形がない中での被災。それでも厳しい現実に直面しながら、10月の開幕を目指している。
3月11日で止まった針を動かすために 〜仙台89ERS〜
イースタン・カンファレンス2位につけ、プレーオフ進出は目前に迫っていた仙台89ERSは直ちに活動休止となり、ヘッドコーチ・選手には契約解除が告げられた。地元の甚大な被害を目の当たりにした仙台89ERSの中村彰久球団代表は、「震災直後は、今後どうなるのか分からない。倒産という最悪の状況も想定していた」という。
だが、日がたつにつれて、全国各地から寄せられる応援のメッセージ、存続を願うブースターの声、そしてスポンサー企業の契約続行も追い風となり「バスケをすることによって笑顔や勇気をもってもらえるなら」と2011−2012シーズンの参戦に向けて動き始めた。
しかし、ドラフト会議に先立ち、既存の選手をプロテクトするか否かで「選手の人件費やチーム経費は抑えなくてはいけない。そういった条件面もそうだが、決して整っていない環境の中に選手をとどめていていいのだろうか」と中村球団代表は悩んだという。
そんな中、チームの現状を選手に話すと、「ああいう形でシーズンが途中で終わったままでは嫌です。3月11日で止まったままのシーズンをしっかり終わらせるためにも、このまま仙台で残ってプレーしたい」という力強い言葉を受けたという。
チームを取り巻く状況は厳しいながらも、地元を思う気持ち・チームを愛する気持ちが一つになって、新生仙台89ERSは動き出した。
暗い話題が多いからこそ、バスケを続ける意味がある 〜岩手ビッグブルズ
「本当にチームとして活動できるのか?という不安の声もいただきました」(木戸雅之GM)
地元では休止になるだろうといううわさも流れたという。「確かに地震直後は、チームがどうなるかなんて考える余裕はなかったです。でも、応援してくださる皆さんの声もあって、こんな時だからこそやろう! という思いで活動を再開しました」
しかし、動き出したビックブルズを待ち受けていたのは厳しい現実だった。「バックアップを約束してくれたスポンサーさんの会社が津波に流されてしまって……」。他で資金提供をしてくれるスポンサーを見つけようにも、同じく被災している人たちに向かって「営業にきました」とは言えなかったという。
「チーム作りはできますが、肝心な資金面での営業ではなかなか厳しいものがあり、今でももどかしさはあります。でも日を追う毎ごとに状況は少しずつですが良くなってはきています。だからなんとかリーグ開幕までにはチームを作り上げたい」(木戸GM)
大変な状況にある中で、チームには朗報も訪れた。震災前にオファーを出し了承を得ていたブライキディス・ブラシオスヘッドコーチとの契約だ。正直断れると思っていたという。しかし岩手の状況を知ったブラシオス氏がチームに伝えたのはキャンセルの返事ではなく、『震災があったからこそ、被災された岩手の皆さんとともにこの状況でチャレンジしてみたい』という前向きな言葉だった。
「県内が暗い話題ばかりの今だからこそ、バスケを見て元気になれる人がいれば、チームとして活動すべきではないか」(木戸GM)。多くの声に後押しされて活動を再開した岩手ビックブルズ。岩手のバスケファンの明日への活力へとなるチームを目指して、開幕に向けて動き出している。
そして、bjリーグ2011−2012シーズンの開幕戦では、岩手vs.仙台のカードが発表された。両チームの想いは一つ。「バスケを通して笑顔と元気を東北に!」。10月8日土曜日、震災から7カ月。開幕を待ち望んだブースターの笑顔と歓声が、岩手県営体育館に響き渡ることだろう。
<了>
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