ブラッターの再選と膨らむ疑念=地に落ちたFIFAへの信頼
ヨーロッパ各国のクラブは反旗を翻すと脅迫
6月1日のナイジェリア対アルゼンチン戦で八百長疑惑が浮上。賭博に絡んだ問題は今なお絶えない 【写真:ロイター/アフロ】
ヨーロッパ各国のクラブも黙ってはいない。バイエルン・ミュンヘンのカール・ハインツ・ルンメニゲ代表は、欧州サッカーにかかわる決定を下す際にFIFAが自分たちの意見に耳を傾けないのであれば、ビッグクラブが結集して作ったECA(ヨーロピアン・クラブ・アソシエーション)はFIFAに反旗を翻すと脅迫している。
ECAは、EU(欧州連合)パスポートを持たない選手の出場を5人以内に制限する「6+5ルール」の導入にFIFAが賛同しているだけでなく、将来的に「9+9ルール」の適用まで望んでいることに不満を示している。この9+9ルールでは、18歳になるまでの間、クラブの下部組織に所属しなかった選手は9人までしか登録することができない。
ドイツサッカー協会のテオ・ツバンツィガー会長、イタリアサッカー協会のジャンカルロ・アベテ会長といった各国協会の首脳は、「ほかに候補者がいない現状でFIFAを弱体化させてはならない」という名目を小声で主張しつつ、実は2015年にミッシェル・プラティニUEFA会長が後継者となることを期待しているがゆえに、ブラッターを支持している。そう考えると、ヨーロッパの将来も安心できたものではない。
北中米カリブ海サッカー連盟(CONCACAF)が抱える問題もまた深刻だ。同連盟のジャック・ワーナー会長(トリニダード・トバゴ)は、ゼネラル・セクレタリーを務めるチャック・ブレイザー(米国)がビン・ハマムへの投票を買収しようと試みたとして訴えを起こした。この件についてはFIFAの倫理委員会による調査が続いている。
早急な解決策が求められるが……
多くの疑念が渦巻くこのタイミングで、クライフが委員会への参加を受け入れるかどうかは分からない。また、史上最も血にまみれた争いを繰り広げた70年代の米国政府に関与したキッシンジャーのような人物が、サッカー界に介入することを南米各国はどのように受け取るだろうか。
フランツ・ベッケンバウアーやペレ、ボビー・チャールトンらで構成される「FIFAタスク・フォース・フットボール2014」も実際に機能しているのかは疑問だ。彼らはPKを与えた際に一発退場とみなされる“最終DF”の基準の緩和、延長戦における4人目の交代枠の導入といったルール改正を検証しているが、判定ミス減少へ向けたテクノロジーの導入有無という第一に検討すべき問題については、いまだに話し合いを行っていない。
FIFAの首脳陣は続投するが、もはや状況は過去と異なる。彼らに対するコントロールは今後、ますます厳しくなっていくことだろう。
<了>
(翻訳:工藤拓)