首位の柏に染み渡る“ネルシーニョ・イズム”=好調は単なるフロックや勢いではない

鈴木潤

得点ランクトップを走るベテランの存在

浦和戦でも2ゴールを挙げるなど北嶋は得点ランキングのトップを走っている 【写真は共同】

 また、現在の柏の好調を語る上で、戦術的な部分以外で欠かせないのが北嶋秀朗の存在だ。昨年、若手FW工藤壮人の台頭とは対照的に、調子の上がらない北嶋は出場機会を失っていった。一部のメディアから、それは「世代交代」と言われ、夏場まで北嶋はベンチ入りすらままならない日々が続いた。

「プロ生活14年間で最も苦しい時期だった」。北嶋は当時をそう振り返る。しかし、彼はそこで腐るどころか、「チャンスは待つものではなく自分でつかみ取るもの」と自らの考えを改めた。チャンスをつかみ取るために工藤の長所である裏への抜け出しを参考にし、自身のプレーに採り入れて進化を期するなど、努力を怠ることがなかったのだ。そして練習試合ではゴールを重ねてネルシーニョにアピール。ようやく手にした公式戦のチャンスで見事に結果を残したのである。

 昨年9月、やや陰りの見え始めた柏のJ2独走の勢いが再点火した大きな要因は、北嶋が復活してチームに多大なる刺激を与えたからにほかならない。同じく今シーズンもサブからのスタートとなったものの、北嶋は昨シーズンと全く変わらぬスタンスでトレーニングに打ち込み、先日の浦和戦ではまたしてもスタメンの座を獲得。なおかつ2ゴールで勝利に貢献しただけでなく、第10節終了時点での4ゴールは目下J1のゴールランキングでトップの数字だ。

「J2経由ACL行き」は実現されるのか

 北嶋は今年でプロ15年目を迎え、5月23日には33歳になる柏のチームリーダー。そんな立場の彼がひた向きに努力する姿勢が、チームに好影響を与えないわけがない。事実、チーム内からは「キタジさん(北嶋)があれだけやっているのだから……」との声があらゆるところから聞こえてくる。若手の中には「試合に出られないのはまだ努力が足りないから」と自らを戒める選手もおり、こうしてチーム内の活性化が自然と行われ、それによって底上げも進む。これもまた、柏の好調を生む要因の1つだろう。

 今シーズンの柏は「6位以内」を目標に掲げている。ただし、一昨年の広島、昨年のC大阪が昇格1年目にもかかわらず、AFCチャンピオンズリーグ(ACL)圏内まで躍進したことになぞらえ、柏にもその姿を重ね合わせる向きもある。そして、ここまでの序盤戦を見る限りでは、そんな前評判に違わぬパフォーマンスを示していると言っても過言ではない。果たして3年連続で「J2経由、ACL行き」は実現するのか。大きく期待が膨らむ。

<了>

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著者プロフィール

1972年生まれ、千葉県出身。会社員を経て02年にフリーランスへ転身。03年から柏レイソルの取材を始め、現在はクラブ公式の刊行物を執筆する傍ら、各サッカー媒体にも寄稿中。また、14年から自身の責任編集によるウェブマガジン『柏フットボールジャーナル』を立ち上げ、日々の取材で得た情報を発信している。

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