内田篤人、高いレベルだからこそ生きる特長=周囲との連動、頭を使って戦い抜く

了戒美子

最大のストロングポイントを生かして

ブレーメン戦では正確なクロスからアシストを記録。現地メディアの評価も急上昇している 【写真:アフロ】

 もちろん、攻撃に関しても、個の能力を誇張することはない。大切にしているのはむしろバランス感覚だ。少ない回数で、精度の高い攻撃をする。鹿島時代に比べて守備に時間を割かれることが増えた今、彼が成長した点でもある。
「僕はDFなので、やっぱり状況を頭に入れてサッカーをしないと。アウエーで90分間いいゲームができて、第2戦のここで頭を使わないとホントもったいないので。そんなに僕が攻撃に行かなくても、前の選手がみんな行けるから(自分は行かなくていい)。僕はしっかりとバランスを取って、相手の攻撃のカウンターの芽だけ摘めばいいかなという感じでした」
 どのコメントにも共通し、おそらく意識的に強調しているのは、「周囲と連動しながら」「頭を使いながら」という点だ。もはや、彼はその2点が自分の最大のストロングポイントだと気づいているのかもしれない。

 そんな内田にもかわいらしいところがある。ハーフタイムには、インテルの右サイドバックでブラジル代表のマイコンにユニホーム交換をせがまれた時のことだ。
「え? おれ? 今?って言って。こっちがオブリガード(ありがとう)って言っちゃった。ちょっとうれしかった。こういう環境でやれているのが、刺激があってうれしい」と顔をほころばせる。

 そして、来るマンU戦に思いをはせる。「テレビで見る限り、あのチームは雰囲気がいいと思う。でも、試合をやるからには楽しみたい。きついだろうし、走らなくてはいけないけれど、楽しめればいいかな」
 テレビ観戦の感想に、ちょっとした洞察が加わるところが、クレバーなところと言ったら言葉を深読みしすぎだろうか。

ラングニック監督との相性の良さ

 ここ最近の内田の躍動については、相性抜群に映るラングニック新監督の存在が大きい。わずか2年でホッフェンハイムをブンデスリーガ3部から1部に昇格させた実績を持つ指揮官は、プロ選手としてのキャリアはないが、理論派として知られ、「プロフェッサー(教授)」とも呼ばれている。
 重視するのは、技術とタイミング、スピード。彼の就任以降、まだ片手ほどの試合しかこなしていないが、シャルケの攻撃は明らかにテンポアップした。「ゴールに直結する縦パスを入れるようになっている」と内田も話している通り、サイドバックのプレー1つを取っても変化している。無駄な横パスは減り、スピーディーな攻撃が展開されるようになった。

 そのラングニック監督はインテル戦後に「内田は若いのに成熟していて、スピードがあってスタミナがある」と話した。ニュアンスは伝わりづらいが、おそらくこれはベタ褒めなのだ。内田は、ラングニックがサイドバックに求める要素が詰まった選手なのだろう。 この短期間でメディアの評価もうなぎ上りである。CLの興奮が冷めやらない中で行われた週末のブレーメン戦ではアシストを記録。すると、ドイツの専門誌『キッカー』は「堅実な守備。効果的な攻撃参加」と評した。効果的というところが、指揮官との相性を反映しているように思える。

 今季も残すところ、リーグ戦4試合、CLは決勝まで含めれば最大で3試合、さらにDFBカップ決勝が5月21日に行われる。
 新生シャルケがどこまで到達するのか。そして内田はどんな驚きをもたらしてくれるのか。さらなる飛躍を期待し、シーズン終盤の戦いを見守りたい。

<了>

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著者プロフィール

2004年、ライターとして本格的に活動開始。Jリーグだけでなく、育成年代から日本代表まで幅広く取材。09年はU−20ワールドカップに日本代表が出場できないため、連続取材記録が3大会で途絶えそうなのが気がかり。

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