被災地のクラブ、水戸が背負うもの=「復興」のシンボルになるために
本間「何があっても茨城にいたかった」
ボランティア活動に励む本間(中央) 【佐藤拓也】
参加した本間は茨城県日立市出身で、JFL時代から12年間水戸のゴールを守り続ける“水戸の魂”とも言える選手だ。生まれ育った茨城に対して、「何があっても茨城にいたかった。こういう状況で水戸の空気を味わっていたかった。そこから得られるものがあるんじゃないかと思っていた」と、強い思いを持っており、震災直後から「もう練習している場合ではないと思い、チームメートと『自分たちに何ができるか』と話し合っていた」という。そしてこう語る。
「今までも茨城で生まれ育った自分が茨城でプレーする意義があると考えてきたけど、より強くなったというか、震災の被災地となった茨城のために何ができるか、そればかりを考えています。自分はサッカー選手なので、震災で苦しんでいる人たちに何かを与えられるようなプレーをしないといけない。それと同時に、ボランティア活動などを続けていくことが大事だと思っています。水戸は水戸の町とともにあるチーム。それを忘れてはいけないとあらためて思いました」
水戸は「復興」への希望の光とならなければ
開幕白星を挙げた水戸。柱谷監督のもと復興のシンボルとなるようなプレーを見せられるか 【佐藤拓也】
また、リーグ再開後のプレーも期待されている。今季の開幕戦で昇格候補の京都サンガを撃破。昨季の主力がこぞって抜けたものの、柱谷哲二新監督のもと、若い選手たちが躍動し、見る者に大きな希望を与えてみせたのである。“闘将”柱谷監督がチームコンセプトとして掲げる「90分走り続けるサッカー」を貫くことができれば、「復興」への希望の光となれるかもしれない。
「みんながなかなか明るい気持ちになれない中で、僕らがこの町に笑顔を取り戻さなければならない。そのためには必ず感動を与えるプレーをしないといけないし、プレーでメッセージを伝えられるようにしていきたい」
クラブが経営難であることを感じさせないくらい本間は目を輝かせながら語った。
チームは28日に練習再開予定。“茨城のために戦う”というチームの進むべき道は明確となっており、「みんな同じ思いを持って水戸に戻ってくるはず」と、本間は期待を寄せている。今まで以上に熱い気持ちをピッチの上で見せてくれるに違いない。
今回の大震災でクラブは経営的に多大なる被害を受けた。オーバーではなく、このまま危機的状況に陥っても決して不思議ではない。むしろ、その可能性の方が高いといえるだろう。しかし、もし水戸がこの苦境から立ち上がったならば、その時こそ本当の意味での「復興」のシンボルとなれるはずだ。このまま震災で倒れるわけにはいかない。震災から立ち上がる町とともに水戸は戦い続ける。
<了>