羽生結弦が16歳にして持つ武器
フィギュアスケート・四大陸選手権

世界の強豪を抑えて堂々の銀メダル

フリーで4回転を決めるなど、堂々の演技で銀メダルを獲得した羽生結弦
フリーで4回転を決めるなど、堂々の演技で銀メダルを獲得した羽生結弦【写真:ロイター/アフロ】

「もう、驚くしかないじゃないですか! ショートプログラム3位であんなに驚いたのに、総合で2位……。なんだか、恐れ多いくらいの気持ちです(笑)」

 とは、フリー終了後の羽生結弦(東北高)のコメント。「驚くしかない」そんな気持ちは、見ていたこちらも同じかもしれない。日本からは高橋大輔(関大大学院)、小塚崇彦(トヨタ自動車)、さらに米国からジェレミー・アボット、アダム・リッポンと豪華メンバーがそろった四大陸選手権。これほどの大舞台で、シニア1年生・羽生結弦が堂々の銀メダル獲得である。

「でも小塚選手は、これがシーズン最後の試合じゃない。世界選手権に向けての調整として臨む、ってこと、試合前から聞いていました。だけど僕はこれが最後で、力を振りしぼらなくちゃいけない大会。立場は全然違います。だから今回は順位というよりも、フリーで4回転と2度のトリプルアクセルが入ったことが、来シーズンに向けての大きな自信になったかな」


 そう、驚いたことにフリーでは、昨年10月のNHK杯以来となる4回転ジャンプに成功。しかも全員挑戦した日本選手3人のなかでただひとり、どころか、男子の出場選手20人の中でたったひとりの4回転成功者となったのだ。

「今日の4回転は……跳んでから降りるまでが、すごく長かったな。シーズン締めくくりの試合で降りられて、ほんとよかったな……感動! って感じです」

 大人になる前の軽い体がジャンプに有利な女子選手と違い、男子はしっかり筋肉の付いた体が出来上がり、力も強くなってから、やっと4回転を身に付ける選手がほとんど。今回は日本のふたりに加えて、ジェレミー・アボット、ケビン・レイノルズ(カナダ)ら、20歳以上の4回転ジャンパーたちがそろって苦戦する中、16歳の羽生が加点の付く美しい4回転を見せてしまった――これはほんとうに脅威的なことなのだ。

ショートプログラムで見せた存在感

 そして彼は、跳べるだけでなく華もある。今大会で特に印象的だったのは、高橋大輔の直後に滑ったショートプログラムだろう。世界チャンピオンが「最初から最後まで気持ちよく滑れた」と自賛する演技で、会場が沸きに沸いたその直後。ジュニアチャンピオンといえど、シニアのチャンピオンシップ初出場の選手にとっては、どう考えても酷な状況だ。しかしそんな場面だからこそ、負けず嫌いの羽生結弦は発奮する。

 スタート地点で見せたのは不敵といっていいほどの面構え。そしてしっとりとした和風アレンジの「白鳥の湖」が流れれば、彼のスケーターとしての存在感は、高橋に引けを取らないものだった。

 見る人の印象に強く残るよう、阿部奈々美コーチが作り上げたプログラムは、大胆かつ派手な動きも多い。それを、まだ少年っぽさの残るすらりとした体で、嫌みなく滑りこなしてしまう。ビールマンスピンなどの見せ場も多く、16歳でこれだけ見せられれば、あとは年を重ねていくだけ。心身が成長すればするほど、どんどん味わいを増していくだろう。

「来シーズンも、奈々美先生に選んでもらった曲を、しっかり自分のものにしていきたいです。ジャズを滑ってみたいかな、なんて希望もあるけれど……先生がなんて言うかは、分からないな(笑)」

青嶋ひろの

静岡県浜松市出身、フリーライター。02年よりフィギュアスケートを取材。昨シーズンは『フィギュアスケート 2011─2012シーズン オフィシャルガイドブック』(朝日新聞出版)、『日本女子フィギュアスケートファンブック2012』(扶桑社)、『日本男子フィギュアスケートファンブックCutting Edge2012』(スキージャーナル)などに執筆。著書に『バンクーバー五輪フィギュアスケート男子日本代表リポート 最強男子。』(朝日新聞出版)、『浅田真央物語』(角川書店)などがある

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