石川遼、3年目の飛躍なるか? 丸山、今田との比較から見えた課題

小川勝

米ツアー挑戦3年目を迎える石川遼。悲願の初優勝へはバンカーからのリカバリー率を上げることも課題の一つとなる 【写真:Yasuhiro JJ Tanabe/アフロ】

 石川遼の新しいシーズンが始まる。米ツアーへの参戦は3年目。今年は2月17日から行われるノーザントラスト・オープンが初陣となる。
 日本ツアーでは、2009年に史上最年少の18歳80日で賞金王に輝き、昨年5月の中日クラウンズ最終日には18ホールの世界最少スコア「58」(ツアータイ記録の12バーディー)を樹立するなど、すでに驚くべき実績を残している。
 一方で、米ツアーは昨年も10試合に参戦したが、最高成績はアクセンチュア・マッチプレー選手権の9位タイ。マスターズ、全米プロというメジャートーナメントを含め、予選落ちが4試合もあった。日本ツアーでの活躍ぶりからすると、いささか落差が大きい印象を禁じ得ない。
 いったい何が足りないのか――。それを探るため、ここでは米ツアー優勝経験を持つ2人の日本人選手、丸山茂樹、今田竜二と石川の成績を比較してみよう。
 丸山は02年、米ツアー25試合に出場し、予選落ちはわずか3試合。優勝1回を含むトップ10入り5回、トップ25入りは出場試合の半数以上となる13回に達した。今田は08年に25試合中、優勝1回、2位2回を含むトップ10入り5回という自己最高成績を残した。それぞれのシーズンにおける2人の主な個人成績と、昨年の石川を比較すると次のようになる。

              丸山(02年)   今田(08年)   石川(10年)
平均スコア         70.26       70.56       71.49
ドライバー平均飛距離   280.0y       278.6y      286.0y
フェアウェーキープ率   65.1%       59.6%       62.0%
パーオン率         63.9%       61.4%       60.7%
平均パット数        1.753       1.758       1.817
サンドセーブ率       59.1%       57.2%       44.4%

「平均パット」と「サンドセーブ率」

 上記を見ると分かるように、ドライバーの飛距離は石川が一番飛ばしている。さらに、フェアウェーキープ率やパーオン率も、丸山、今田に引けを取っていない。
 では何が違うかといえば、まずは平均パット数(パーオンしたホールのみ対象)だ。1.8を超えている石川に対して、丸山と今田はともに1.75台をマークしている。この差がそのまま平均スコアの開きにつながっていると言っても過言ではない。なお石川は昨季の日本ツアーでは、1.736で全体2位だった。
 日本でも米国でも、ティーショット自体は基本的にコースの影響をあまり受けない。芝の上にボールを置いて打つわけではないからだ。しかし、パットはそうではない。芝の種類や質、グリーンの形状や傾斜がコースごとに大きく変化し、日本よりも難易度が高い。いいスコアを出すには、その特徴を把握して対処する必要がある。これはやはり、ある程度実戦で経験を積み、身につけていくもの。フル参戦ではないが、米ツアー3年目の今年、石川もそろそろ経験を生かせる時期かもしれない。

 もう一つはサンドセーブ率(グリーン周りのバンカーから2打以内でカップインする確率)。昨年は出場が10試合だけとは言え、石川の44.4%はやはり物足りない。日本ツアーでは、58.0%(全体4位)という高確率を記録しているのである。なぜ海を渡るとこれほど違うのか。
 もちろん先のグリーンと同じく、バンカー自体の難易度が違うことが大前提だが、バンカーに入れてピンチに陥ったときの、メンタル面での対応能力も問われることになる。石川の場合、日本ツアーでは予選落ちがほとんどない(昨年は22試合中、2試合のみ)。だが選手のレベルが高く、わずかなミスでも予選落ちにつながる米ツアーでは、バンカーに入れた際のプレッシャーも、それだけ大きくなって不思議はない。メンタルスポーツと呼ばれるゴルフの最高峰で丸山、今田に肩を並べる成績を残すには、技術的な進化はもちろん、精神的な向上も求められる。

期待高まる“20歳の飛躍”

 石川は今年9月で20歳になる。これはタイガー・ウッズがプロに転向、そして初優勝を果たした年齢でもある。また石川より2歳年上で、現在若手ナンバーワンとの呼び声が高い、世界ランク7位のロリー・マキロイ(北アイルランド)は、20歳を迎えた09年に欧州ツアー初優勝を飾るなど飛躍。4大メジャーで次のような成績を残している。

・マスターズ:20位タイ(19歳)
・全米オープン:10位タイ(20歳)
・全英オープン:47位タイ(20歳)
・全米プロ:3位タイ(20歳)

 さらにマキロイは昨年5月、2日後に誕生日を迎える20歳最後の大会で、悲願の米ツアー初優勝を成し遂げた。実力者たちがその名を轟かせた20歳を迎える年に、石川も彼らのように飛躍できるか。注目のシーズンになる。

<了>
  • 前へ
  • 1
  • 次へ

1/1ページ

著者プロフィール

1959年、東京生まれ。青山学院大学理工学部卒。82年、スポーツニッポン新聞社に入社。アマ野球、プロ野球、北米4大スポーツ、長野五輪などを担当。01年5月に独立してスポーツライターに。著書に「幻の東京カッブス」(毎日新聞社)、「イチローは『天才』ではない」(角川書店)、「10秒の壁」(集英社)など。

新着記事

編集部ピックアップ

コラムランキング

おすすめ記事(Doスポーツ)

記事一覧

新着公式情報

公式情報一覧

日本オリンピック委員会公式サイト

JOC公式アカウント