裕樹が王者対決制し初の2階級制覇達成 引退決意の龍二はセレモニーに登場=RISE

長谷川亮

RISEとしては初の二冠王者となった裕樹(下段) 【t.SAKUMA】

 打撃格闘技イベントRISEの2010年最終大会となる「73R(セブンスリーアール)が19日、東京・ディファ有明で開催された。

 メーンイベントは吉本光志と裕樹による「初代RISEライト級(63キロ以下)王者決定戦」。吉本は現スーパーライト級(65キロ以下)王者、裕樹は元スーパーフェザー級(60キロ以下)王者であり、どちらが勝ってもRISE史上初の2階級王者が誕生する戦いとなった。

初の2冠王者・裕樹は大和哲也へ挑戦状

裕樹がローキック連発で吉本を破った 【t.SAKUMA】

 タイトルマッチは5ラウンドで行われるため、長期戦では無尽蔵のスタミナを誇る吉本が有利と思われたが、裕樹は開始からリズミカルに左右のローを当てていく。
 吉本はこのローにカウンターのヒザを合わせるのだが、裕樹のローは左・右と止まらない。裕樹のスピードが大きく上回る。
 吉本は1ラウンド終盤には裕樹のジャブに右クロスをかぶせるなどして応戦したが、2ラウンドに入るとローのダメージが隠せなくなり、まず左ローを連打して裕樹が最初のダウンを奪う。
 気力で立ち上がった吉本だがやはり裕樹のロー地獄から逃れることはできず、そこからさらに左ローで2度のダウンを追加され万事休す。裕樹はピョンピョン跳び上がって喜びを表し、RISE2本目のベルトを腰にした。

 試合後マイクを取った裕樹は、「おい、大和哲也! おれのタイトルに挑戦せいや! 逆か(笑)。でも来年はまたK−1に上がり、RISEでもベルトを守っていきたいと思います」と語り、今年敗れた大和へのリベンジ・K−1再出撃・RISEのタイトル防衛と、来年のビジョンを明かした上で2010年の戦いを締めくくった。
 タフな吉本を粉砕し、改めてローの強さを見せつけた裕樹。来年もその猛威が広範囲に振るわれることとなりそうだ。

K−1本戦出場アピールへ、小宮が実力者降す

小宮(上段右)が延長の末に実力者ザノリニを下す、来年はK−1本戦出場だ 【t.SAKUMA】

 セミファイナルで行われたのは小宮由紀博とダニロ・ザノリニ(ブラジル)の70キロ級注目対決。小宮は今年K−1に出場して2戦2勝、対するザノリニも敗れたはしたが佐藤嘉洋と対戦と、ともにK−1を経験してきた両者による一戦となった。

 大「ダニロ」コールを送る応援団の声援を得て、ザノリニはワイルドなフォームで右フックを振るっていく。しかし小宮はザノリニが攻めて出ようとすると素早くバックステップし、このワイルドフックにクリーンヒットを与えない。小宮はジャブと右ローを的確に当て、ザノリニが跳びヒザ・左右のビッグフックと攻めてきてもパニックにならずガードとボディワークで対応する。
 ザノリニはラウンド後半に必ず攻勢をまとめるなどするが、判定は29−29、29−28(ザノリニ)、29−29と本戦では決着がつかずドロー。延長ラウンドに突入となる。

 ここで小宮はヒット・アンド・アウェーに戦法をチェンジ。ジャブ・ローを素早く打ち込み離れると、突っ込んでくるザノリニをステップでかわし、そこへ右ストレートを打ち込んでいく。ザノリニは疲れからか打ち終わりに手が落ちる場面が多くなり、小宮の右ストレートを被弾してしまう。

 結局延長で優勢を明らかにした小宮が判定をものにして3−0で勝利。
 K−1での今年の2試合はオープニングファイトでの登場であったが、実力者ザノリニを降し、来年は本戦への進出をアピールする価値ある1勝をゲットした。

小宮山、ハイキック一閃KOで王座戦アピール

長堂“RIOT”雄司を1ラウンドKOで降した小宮山工介(写真)は試合後王座戦をアピール 【t.SAKUMA】

 第12試合では小宮山工介と長堂“RIOT”雄司が激突。RIOT(ライオット)は老舗団体MAキックでバンタムとフェザーの2階級制覇を成し遂げたサウスポー。磨き上げた蹴り主体のムエタイスタイルを武器に、RISEのベルトも手に入れんと初参戦を果たしてきた。

 迎え撃つ小宮山は“天才空手兄弟”小宮山ブラザーズの次男としてK−1・63キロ級でも活躍を期待されたが、トーナメント開幕戦で尾崎圭司との“回転対決”に敗れ敗退。しかし10月のRISEで復活を果たすと、現在は王者・板橋寛の保持するRISEスーパーフェザー級(60キロ以下)王座に狙いを定めている。

 試合が始まるや、小宮山はRIOTに圧倒的スピードの違いを見せる。離れた距離でステップを踏み、タイミングを取らせない速い踏み込みから右ミドル、右フック。しかしRIOTも冷静さを崩さず、左ミドルと左インローを返す。
 プレッシャーを掛けRIOTにロープを背負わせた小宮山は、ミドルの軌道からわずかに高さを変えたハイキック(掛け蹴り)を一閃! この1発でRIOTを前のめりに倒し、“速さと強さ”を強烈に印象づけるKO勝ちを果たした。

 試合後マイクを取った小宮山は、「関係者のみなさん、ぜひ2月にタイトルマッチをよろしくお願いします」と来年2月27日に開催される後楽園ホール大会でのスーパーフェザー級王座戦をアピール。
「スーパーフェザー級のキングは板橋選手ですが、僕はエースだと思っているので、キング対エースの対決を是非見に来て下さい。僕勝ちますんで」
 この日のKOを見れば小宮山のセリフは説得力十分に思われるが、王者・板橋もムエタイの伝説アヌワットからダウンを奪い勝利した60キロ級屈指の実力者。正式決定・発表が待たれる、キング対エースの直接対決だ。

現役引退の龍二「指導者として強い選手を育てる」

左目網膜剥離により引退することになった龍二(上段・右から4人目)がセレモニーに登場 【t.SAKUMA】

 また、第9試合と第10試合の間には、2003年旗揚げのRISEに初期から参戦し、70キロ級トーナメント優勝(07年)、ミドル級王座戴冠(09年)、K−1 MAX出場と活躍した龍二の引退セレモニーが実施された。

 左目網膜剥離により引退を決意することになった龍二だが、まず保持したままだったミドル級王座をコミッショナーに返上すると、その後これまで拳を交えてきた“戦友”の我龍真吾、白須康仁、城戸康裕、日菜太から花束を贈られる。
 そして「今後は指導者として強い選手を育て、RISEのリングに上げられるよう頑張ります。応援ありがとうございました」とあいさつをし、10カウントゴングで現役生活に別れを告げた。

 生涯戦績36戦29勝7敗(16KO)。打ち合いにめっぽう強く、その中でフワリと繰り出すハイキック、決して下がらない気持ちの強さも印象的な名選手だった。

 また、この日のメーンでは同門の後輩・裕樹が初代ライト級王者となり、「今日は大先輩の龍二さんの引退の花道を飾れて良かったです。龍二さん、今までありがとうございました」と感謝を述べて2人で記念写真に納まり、龍二の引退に忘れられない1ページを付け加えた。
■「RISE 73R(セブンスリーアール)」
12月19日(日)東京・ディファ有明


<第14試合 初代RISEライト級 王者決定戦 3分5R・延長1R>
●吉本光志(ヌンサヤーム/初代RISEスーパーライト級王者)
(2R2分09秒 KO)
○裕樹(リアルディール/同級1位・初代RISEスーパーフェザー級王者)

<第13試合 ミドル級 3分3R・延長1R>
○小宮由紀博(スクランブル渋谷/2009年RISE −70kg TOURNAMENT優勝)
(延長R3−0)
●ダニロ・ザノリニ(志村道場/ブラジリアン・タイ/HEATキックルール・ミドル級王者)
※本戦判定29−29、29−28(ダニロ)、29−29
※延長判定3者10−9

<第12試合 スーパーフェザー級 3分3R・延長1R>
○小宮山工介(北斗会館/同級1位/2008年RISING ROOKIES CUP同級優勝)
(1R2分17秒 KO)
●長堂“RIOT”雄司(真樹ジムオキナワ/第14代MAキックバンタム級王者、第16代同フェザー級王者)

<第11試合 スーパーライト級 次期挑戦者決定戦 3分3R・延長1R>
○菅原勇介(TARGET/同級1位・前J−NETスーパーライト級王者)
(3R判定3−0)
●國安浩史(シルバーウルフ/同級3位・2008年 RISING ROOKIES CUP ミドル級優勝)
※30−29、30−28、30−29

<第10試合 ヘビー級 3分3R・延長1R>
○上原 誠(士魂村上塾/同級1位)
(3R判定2−0)
●羅王丸(TARGET/同級3位・2010年RISING ROOKIES CUPヘビー級優勝)
※30−29、29−29、29−28

<龍二インタイセレモニー>

<第9試合 ライト級 3分3R・延長1R>
○渡辺理想(極真会館/同級2位)
(3R判定3−0)
●花田元誓(リアルディール/同級4位)
※30−28、29−28、30−27

<第8試合 フェザー級 3分3R・延長1R>
●九島 亮(ヌンサヤーム/同級1位)
(3R判定3−0)
○リョウ・ペガサス(ROOF TOP ACADEMY/同級2位)
※30−28、30−29、30−29

<第7試合 ミドル級 3分3R・延長1R>
○守屋拓郎(スクランブル渋谷/同級4位/2009年RISE 70キロトーナメント準優勝)
(3R0分29秒 KO)
●晴矢(フリー)

<第6試合 ヘビー級 3分3R・延長1R>
○清水賢吾(極真会館/同級3位)
(1R1分50秒 KO)
●Ismael“Cobra”Aoki(Soul Fighters Japan/2008年柔術全アメリカ大会パンアメリカーノ優勝)

<第5試合 バンタム級 3分3R>
○Dyki(TARGET/同級1位・2009年 RISING ROOKIES CUPバンタム級準優勝)
(2R1分04秒 KO)
●萬田千晴(九州比山/J−NETスーパーフライ級4位)

<第4試合 ミドル級 3分3R>
△森田崇文(レーング東中野/同級5位・2010年 RISING ROOKIES CUPミドル級優勝)
(3R判定ドロー)
△ハイン・ディオ(スクランブル渋谷)
※30−30、30−30、30−29(森田)

<第3試合 スーパーライト級 3分3R>
○左右田泰臣(シルバーウルフ/同級2位・2010年 RISING ROOKIES CUPスーパーライト級優勝)
(3R判定3−0)
●キューピー(S−cute/第101回新空手交流大会軽中量級優勝)
※30−28、30−28、30−27

<第2試合 スーパーフェザー級 3分3R>
●石井新一(TARGET/同級6位)
(3R判定3−0)
○悠矢(大和/KCJスーパーフェザー級4位)
※30−26、30−27、30−26

<第1試合 フェザー級 3分3R>
○戸邊隆馬(シルバーウルフ/同級7位)
(3R判定3−0)
●大西晃樹(フォルティス渋谷/J−NET同級5位)
※3者30−28
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著者プロフィール

1977年、東京都出身。「ゴング格闘技」編集部を経て2005年よりフリーのライターに。格闘技を中心に取材を行い、同年よりスポーツナビにも執筆を開始。そのほか映画関連やコラムの執筆、ドキュメンタリー映画『琉球シネマパラダイス』(2017)『沖縄工芸パラダイス』(2019)の監督も。

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