ベニテス監督につきまとう解任論=続投への条件はクラブW杯制覇

ホンマヨシカ

苦しい戦いが続く昨季の三冠王者

クラブW杯初戦は快勝で飾ったが、今季のインテルは苦しい戦いが続いている 【写真:アフロ】

 UAE(アラブ首長国連邦)のアブダビで開催されているFIFA(国際サッカー連盟)クラブワールドカップ(W杯)は15日に準決勝が行われ、欧州王者のインテル(イタリア)が危なげない試合運びを見せて、城南一和(韓国)に3−0で勝利した。
 開始早々に司令塔のスナイデルが負傷退場するハプニングに見舞われたインテルだが、3分にスタンコビッチがゴールを決めて先制すると、その後も試合を支配。32分にサネッティ、73分にはミリートが追加点を挙げ、欧州王者の貫録を見せつけた。

 大会初戦となる準決勝で快勝を収め、幸先の良いスタートを切ったインテルだが、今シーズンはここまで苦戦が続いており、昨季の三冠王者(セリエA、コッパ・イタリア、チャンピオンズリーグ=CL=)の面影はない。

 第16節を終えたセリエAカンピオナートでは、消化試合が1試合少ないとはいえ、首位を走るミランとのポイント差が13にまで広がっている。CLでも2位でグループリーグを突破するなど、毎試合苦しい戦いを強いられた。
 ちなみに今シーズンと昨シーズンの同時期の成績を比べてみると、今シーズンは23戦10勝6分け7敗、35ゴール28失点。昨シーズンは22戦13勝5分け4敗、42ゴール21失点。これらの数字を比べるだけでも今シーズンのこれまでの不振ぶりが分かると思う。

カペッロ、トラパットーニらが後任監督の候補に

 インテルが不振から抜け出せない状態が続くと、マスコミの話題は当然のごとくベニテス監督のシーズン中での解任の可能性と、それに伴ってうわさされる後任監督候補の名前となる。
 ミラノの2大クラブ(ミランとインテル)に新監督が就任した場合、その監督がクリスマスまで監督を続けられるかどうかを「パネットーネ(ミラノの伝統的なクリスマスケーキ)を食べられるかどうか」という表現で、シーズン前から話題として取り上げられるのが常である。これはスクデット獲得が当然の目標であるミラノの両クラブの監督に課せられた儀式のようなもので、シーズン前のサッカーファンの間では茶飲み話のような感じでこの話題を取り上げる。
 しかしシーズンが進むにつれ、チームの連敗や監督の統制力に疑問が生まれるなどの問題が表面化すると、この話題が現実味を帯びてくるのだ。

 今シーズンのインテルの場合、第12節でのミラン戦に敗れた翌日の新聞に、ベニテスを批判するモラッティ会長の談話が掲載された。
 もちろん紳士的なモラッティはベニテスを名指しで非難したのではなく、チームが見せた試合へのアプローチに対しての不満だったが、この批判が間接的にベニテスに向けられているものであることは明白だった。

 インテルが第13節のキエーボ戦でも敗れると、ベニテスの立場はさらに危うくなった。11月18日付けのイタリア紙『ラ・ガゼッタ・デッロ・スポルト』の第一面には「ベニテスクイズ」という見出しの下に、「食べることができるだろうか?」と書かれたパネットーネ(クリスマスケーキ)の写真が掲載され、紙面には後任監督候補としてトラパットーニ、レオナルドを筆頭にスパッレッティやライカールト、ドゥンガなどの名前が挙がっていた。
 そして最近では現イングランド代表監督のカペッロや、今シーズン終了までの応急処置としてだが、インテリスタにも人気がある元インテルのGKだったワルテル・ゼンガの名前も取りざたされるようになった。

 こんな状態が続いていたため、インテリスタの話題にクラブW杯が上がることは、まったくと言っていいほどなかった。話題に上ったとしても「果たしてこんな状態で戦えるのか」といった不安視する声ばかりだった。

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著者プロフィール

1953年奈良県生まれ。74年に美術勉強のためにイタリアに渡る。現地の美術学校卒業後、ファッション・イラストレーターを経て、フリーの造形作家として活動。サッカーの魅力に憑(つ)かれて44年。そもそも留学の動機は、本場のサッカーを生で観戦するためであった。現在『欧州サッカー批評』(双葉社)にイラスト&コラムを連載中

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