J1昇格をつかんだ福岡、躍進の要因=低い前評判を覆して
的確な補強と選手の成長
チームが強くなった要因はさまざまなものがあるが、根底にあるのはメンタル面での変化だ 【写真は共同】
そして、2人の存在は攻撃だけではなく、守備面にも変化をもたらしている。昨シーズン、51試合で71失点を喫してリーグ11位だった守備は、今シーズンは36節を終えた段階で34試合を戦って33失点、リーグ3位と大きく改善。ここまで、安定した戦いを続けてきた最大の要因になっている。
同じく、人的な面で見れば、丹羽、田中誠の不動のセンターバックコンビのチームに対する貢献度も高い。「昨シーズンは自分で何とかしようとして空回りしていた部分もあったし、シーズン途中で大きなけがをしてしまってチームに貢献することができなかった。けれど、今シーズンはJ2の戦い方も分かったし、安定して力を出せるようになった」と話すのは田中。的確なポジショニングとカバーリングでディフェンスラインに安定感をもたらした。
そして丹羽。福岡に移籍してきてから、一時は出場機会が与えられない苦しい時期もあったが、常にポジティブに物事をとらえる姿勢は確実に自らを成長させ、今や押しも押されぬキャプテン。彼が発する大きなコーチングの声と、勝利に対する強い気持ちが伝わってくるプレーは、チームメートのみならず、サポーターにも大きな勇気を与えている。
そして、城後寿の復帰もチームにとっては大きな戦力補強となった。約8か月にわたるリハビリを経て第17節の大分トリニータ戦で復帰を果たし、第22節の甲府戦で2ゴールを挙げると、以後15試合で8得点とゴールを量産。昇格に向けての天王山と言われた第25節の千葉戦では、終了間際に劇的なゴールを挙げてチームに勝利をもたらした。抜群の動き出しと、前へ出るパワーで相手に脅威を与え続けてた。
チャレンジャー精神とぶれなかった姿勢
「明らかに練習中の空気が変わった。ポジティブな声掛けが増えていて、みんなが良くなろうという意欲が出ている。選手の中に、今年はみんなで助け合いながらやっていこうという雰囲気ができている」
それは試合内容に顕著に表れた。昨シーズンまでの福岡はミスがそのまま失点に直結することが多く、さらに失点が失点を呼ぶという悪循環に陥っていた。昨シーズン23節(対甲府)の0−6、26節(対水戸ホーリーホック)の0−5は、その典型と言える。ところが、今シーズンは3失点以上を喫したのは1試合だけ。第36節を終えた段階でリーグ3位の攻撃力が注目される一方で、ミスを全員でカバーし、最後のシーンで体を張ってはじき返すことが多かったのも、今シーズンの福岡の特徴でもあった。
また、自分たちがチャレンジャーであるという意識も徹底されていた。「目標は昇格。けれど、過去3年間、昇格を口にしながら全く成績を残せなかった。僕たちは軽々しく昇格を口にできる立場にはいない。チャレンジャーとして目の前の試合をしっかりと戦っていくだけ」。これは昇格への期待が高まりだした夏場に城後が話した言葉だが、選手たちの意識は最後まで全く変わらなかった。
こうした意識の変化は、結果を積み重ねることでさらに研ぎ澄まされ、チームの結束力を強めることへとつながった。どんな時でも、誰に尋ねても、選手たちが口にしてきたのは「大事なことは相手云々ではなく、自分たちのサッカーをすることだけ。そして、先のことや、昇格争いの相手の結果を考えず、目の前の相手に100パーセントの力でぶつかることだけを考える」というもの。それは、全くぶれない姿勢とチームの意思統一の強さを表すものでもあった。
昇格は新たな挑戦の始まり
しかし、これは新たな挑戦へのスタート地点。地域の誇りとなるチームになることを目標に掲げるクラブにとっては、ここからが始まり。福岡はさらに前進すべく挑戦を続ける。
<了>