J1昇格をつかんだ福岡、躍進の要因=低い前評判を覆して
昇格を決め、福岡空港でサポーターと喜びを分かち合う福岡の選手たち 【写真は共同】
待ち続けた歓喜の瞬間
あらためて振り返れば、第6節から4連敗を喫したのが唯一のピンチらしいピンチ。それ以降は、安定した戦いで確実に勝点を積み上げ、第25節にレベルファイブスタジアムで行われた昇格争いの千葉との直接対決を制して3位に浮上してからは、一度も順位を落とすことなく昇格への足固めをしてきた。もちろん、昇格の行方に影響を及ぼす大一番もいくつかあったが、全体を見渡せば、淡々と、そして確実に勝点を積み重ねてきた印象が強く残る。過去3年間、J1昇格を目標に挙げながら、7位、8位、11位と低迷したチームとは、まったく別の姿を見せて、福岡は2010年シーズンを駆け抜けた。
ストロングポイントはシンプルなサッカーとフィジカルの強さ
それを可能にしたのが、新たにチームに加わった永里源気と、スピードなら誰にも負けない田中佑昌の存在。シンプルに裏を狙う戦い方は、2人の縦に抜けるスピードを余すことなく引き出すことにつながった。
シーズン前半戦では、引いてスペースを消してくるチームや、ロングボールを多用するチームに苦労する傾向もあったが、ワールドカップによる中断期間中も新たな方法に取り組むことなく、自分たちのストロングポイントをさらに磨くことを徹底。欠点を補うのではなく、自分たちの強みをさらに伸ばすことで相手ゴールを奪ってきた。
もうひとつ、チームを大きく変えたのはフィジカルの強さだった。今シーズンからフィジカルコーチに就任した松本良一コーチは、いわゆる素走りではなく、常にボールを持って体を動かすことでゲーム体力の強化に着手。常に体を動かしながら、同時に頭をフル回転させることを求めたトレーニングの効果は抜群で、開幕で戦ったヴァンフォーレ甲府戦、続くアウエーのコンサドーレ札幌戦で見せた圧倒的な運動量とスピードは、日頃からチームを見守るサポーターにも、取材を続ける地元メディアにも、驚異的に映ったほどだ。
しかし、その本当の強みが現れたのは中断期間を挟んでリーグ戦が再開されてからだった。猛暑の中で90分間を変わらぬ運動量で戦う福岡と、対戦相手の運動量の差は一目瞭然。それは結果にも直結した。第24節のカターレ富山戦から第26節の横浜FC戦まで、天皇杯2回戦のファジアーノ岡山との戦いを含めて4連続逆転勝ちを収めたが、後半に運動量とスピードで相手を圧倒するというのが福岡のパターンになった。
そして、選手たちは「どんなに悪い状況でも、あるいは失点していても、我慢していれば、必ず相手の運動量が落ちる」という言葉を盛んに口にするようになった。昨シーズンまでは、悪い流れの中でバタバタして失点を重ねたり、後半に入ると大きくリズムを崩すのが福岡のパータン。それが、我慢すれば勝機がやってくるという自信が、どんな状況に陥っても決してあわててないという別の側面も引き出した。