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J1昇格をつかんだ福岡、躍進の要因
低い前評判を覆して
昇格を決め、福岡空港でサポーターと喜びを分かち合う福岡の選手たち
昇格を決め、福岡空港でサポーターと喜びを分かち合う福岡の選手たち【写真は共同】

 2006年シーズンでJ2に降格してからの過去3年間、昇格を口にしながら7位、8位、11位と低迷。アビスパ福岡は、ただの一度も昇格争いに顔を出すことなく苦しいシーズンを過ごしてきた。シーズン前、福岡は昇格候補のひとつとして数えられることはなかった。しかし、それを一変させてのJ1昇格権の獲得。その要因はどこにあったのだろうか。

待ち続けた歓喜の瞬間

「やりましたー」。福岡空港で丹羽大輝が叫ぶ。選手たちの凱旋を心待ちにしていた500人を超えるサポーターが「アビスパ福岡」の大合唱で応える。誰もが待ち受けていた瞬間だった。昇格の権利を得るまであと一歩と迫っていた福岡は、この日、アウエーで戦ったFC岐阜戦を2−0で勝利。遅れて試合を行っていた4位のジェフ千葉がザスパ草津に0−2で敗れたために3位以内が確定し、福岡は5年ぶりにJ1の舞台に立つ権利を手に入れた。


 あらためて振り返れば、第6節から4連敗を喫したのが唯一のピンチらしいピンチ。それ以降は、安定した戦いで確実に勝点を積み上げ、第25節にレベルファイブスタジアムで行われた昇格争いの千葉との直接対決を制して3位に浮上してからは、一度も順位を落とすことなく昇格への足固めをしてきた。もちろん、昇格の行方に影響を及ぼす大一番もいくつかあったが、全体を見渡せば、淡々と、そして確実に勝点を積み重ねてきた印象が強く残る。過去3年間、J1昇格を目標に挙げながら、7位、8位、11位と低迷したチームとは、まったく別の姿を見せて、福岡は2010年シーズンを駆け抜けた。

ストロングポイントはシンプルなサッカーとフィジカルの強さ

 昨シーズンと大きく変わったのは、チームの戦いが極めてシンプルになったこと。「変わらなくてはいけない」と宣言して2010年シーズンをスタートさせた篠田善之監督がチームに求めたのは、アグレッシブでスピーディなサッカー。それを表現するために、攻守の切り替えのスピードを上げること、そして、奪ったボールを素早く、シンプルに相手のディフェンスラインの背後に送ることを徹底した。ドリブル、クロス、パスなどを見れば、J2では平均的な数字でありながら、決定機の数で相手チームを上回り、総得点数でJ2の3位(第36節時点)につけるという事実からも、いかにシンプルに戦っているかが分かる。


 それを可能にしたのが、新たにチームに加わった永里源気と、スピードなら誰にも負けない田中佑昌の存在。シンプルに裏を狙う戦い方は、2人の縦に抜けるスピードを余すことなく引き出すことにつながった。

 シーズン前半戦では、引いてスペースを消してくるチームや、ロングボールを多用するチームに苦労する傾向もあったが、ワールドカップによる中断期間中も新たな方法に取り組むことなく、自分たちのストロングポイントをさらに磨くことを徹底。欠点を補うのではなく、自分たちの強みをさらに伸ばすことで相手ゴールを奪ってきた。


 もうひとつ、チームを大きく変えたのはフィジカルの強さだった。今シーズンからフィジカルコーチに就任した松本良一コーチは、いわゆる素走りではなく、常にボールを持って体を動かすことでゲーム体力の強化に着手。常に体を動かしながら、同時に頭をフル回転させることを求めたトレーニングの効果は抜群で、開幕で戦ったヴァンフォーレ甲府戦、続くアウエーのコンサドーレ札幌戦で見せた圧倒的な運動量とスピードは、日頃からチームを見守るサポーターにも、取材を続ける地元メディアにも、驚異的に映ったほどだ。


 しかし、その本当の強みが現れたのは中断期間を挟んでリーグ戦が再開されてからだった。猛暑の中で90分間を変わらぬ運動量で戦う福岡と、対戦相手の運動量の差は一目瞭然。それは結果にも直結した。第24節のカターレ富山戦から第26節の横浜FC戦まで、天皇杯2回戦のファジアーノ岡山との戦いを含めて4連続逆転勝ちを収めたが、後半に運動量とスピードで相手を圧倒するというのが福岡のパターンになった。

 そして、選手たちは「どんなに悪い状況でも、あるいは失点していても、我慢していれば、必ず相手の運動量が落ちる」という言葉を盛んに口にするようになった。昨シーズンまでは、悪い流れの中でバタバタして失点を重ねたり、後半に入ると大きくリズムを崩すのが福岡のパータン。それが、我慢すれば勝機がやってくるという自信が、どんな状況に陥っても決してあわててないという別の側面も引き出した。

中倉一志

1957年生まれ。サッカーとの出会いは小学校6年生の時。偶然つけたTVで伝説の「三菱ダイヤモンドサッカー」を目にしたのがきっかけ。長髪をなびかせて左サイドを疾走するジョージ・ベストの姿を見た瞬間にサッカーの虜となる。大学卒業後は生命保険会社に勤務し典型的なワーカホリックとなったが、Jリーグの開幕が再び消し切れぬサッカーへの思いに火をつけ、1998年からスタジアムでの取材を開始した。現在は福岡に在住。アビスパ福岡を中心に、幼稚園、女子サッカー、天皇杯まで、ありとあらゆるカテゴリーのサッカーを見ることを信条にしている

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