早大・斎藤、“有終の美”でうれし涙=明治神宮大会大学の部リポート

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躍動感のあるフォームで胴上げ投手に

 試合後、一塁側の学生応援席へのあいさつで、下げた頭を中々上げられなかった。目頭を抑えたまま、「よく分からないけど泣いてしまった」といううれし涙がほおを伝った。4年間常に注目を浴びながら大学球界をけん引してきた斎藤佑樹が主将を務める早大は2対1と東海大に逆転勝ちし、明治神宮大会初制覇を果たした。「4年間で出た答は一生懸命やること。一生懸命やったら神様もご褒美をくれると信じていた」という斎藤は胴上げ投手に輝き、見事“有終の美”を飾った。

 広島ドラフト1位の福井優也が6イニング1失点、西武ドラフト1位の大石達也が2イニング・5奪三振・無失点とリードを守ったままつないでくれた9回のマウンドに背番号10が上がる。東海大打線は準決勝で本塁打を放っている4番・伏見寅威から。前日に應武篤良監督から抑えを告げられて「正直びっくりした。先発だと思っていた」という斎藤だが、「2人の気持ちを背負ってランナーを1人も出さないように投げようと思った」と気合十分だった。投げたあとの右足が前に蹴り上がる躍動感のあるフォームで放たれた初球のストレートは148キロを計時した。伏見を2ストライク1ボールからの4球目、スライダーで空振り三振に打ち取ると、5番・大野裕太には4球すべて変化球で最後は落ちるボールで空振り三振。続く代打・市川達也には2ストライク1ボールから145キロのストレートでサードゴロに打ち取った。ボールが一塁に転送されて日本一が決まると、斎藤は両手を上げてガッツポーズした。

「大学を選んで、ワセダを選んで良かった」

 早稲田実高3年夏に甲子園を制し、全国に“ハンカチ王子”フィーバーが巻き起こした。プロをけって進学した早大1年春の東京六大学リーグで80年ぶりの1年生開幕投手を務めると、6月の大学選手権で日本一に貢献した。3年にはフォームを崩すなど不調に苦しむも、早大100代目の主将に就任した4年で自己初の150キロを記録。4年秋のリーグ戦では50年ぶりの早慶戦による東京六大学優勝決定戦を制し、明治神宮大会で大学生活2度目の日本一に輝いた。リーグ史上6人目の30勝&300奪三振を記録し、リーグ通算31勝。4年連続大学日本代表に選出された。不調時には「斎藤はダメになった」という声が聞かれる中、周りのプレッシャーに押しつぶされることなく、結果を残し続けてきた。主将が重荷に感じたこともあったというが、「みんなが喜んでくれて良かった。主将をやっていて良かった」とこの日の日本一で苦労も報われた。斎藤は「大学を選んで、ワセダに来て良かった。山あり谷ありと苦しいことあったけどこうやって終われた。成長できた4年間だった」と感慨深げに振り返った。
 今日は試合終了後にベンチ裏で泣いて迎えてくれた4年生たちと「近所に迷惑をかけるかもしれない(笑)」ぐらいの大騒ぎで、喜びをわかち合う。その後は、「次のステージでもエンターテインメントできるようにがんばる」と神宮球場に駆け付けた1万6千人のファンに誓ったプロの世界が待っている。
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