岡田武史氏が語るリーダー論、マネジメント論=特別開講「岡田ゼミ」要旨

スポーツナビ

カメルーン戦前に選手たちに伝えた言葉

「岡田ゼミ」は旧知の仲である小野剛氏(右)との掛け合いで進められた。学生をはじめとする受講生は2人の話に聞き入った 【スポーツナビ】

テーマ3:ビッグマッチ

 大一番だからといって急にうまくなるわけじゃないです。いつもと一緒なんです。今の自分の力を出すこと以外できないんですよ。僕はよく言うんですけど、W杯のカメルーン戦の前にも言ったんですけど、「今の自分の力を出すしかないんだ。ミスしたり、うまくいかなかったりしたら、選んだ岡田が悪いと思ってくれ。それでいい。試合に使った岡田が悪いんだ」と。そういう感じなんですよ。今できることをやってダメだったらしょうがない。でも、やれる限りのことをやっていないとそういう心境にはなれないです。

 運はどこにでも流れている。それをつかむか、つかみ損ねるかだって選手によく言うんです。「お前がたった1回、ダッシュで1メートル手前で手を抜いたら、運をつかみそこねてW杯に行けないかもしれない。100パーセントといったら、98パーセントじゃない。100パーセントだ」。勝負を分けた点について、メディアや評論家は大上段に構えて戦術論やシステム論を話すけど、僕の感覚からすると、8割くらいはちょっとしたことなんです。たった1回まあいいか、たった1回これくらいでいいかって思う。それが実は勝負を分けるんです。

 日本がこれまで海外のW杯で1勝もできなかった。なぜか? 戦術で負けている? いや、お前がそこについていればやられなかった。みんなそうなんです。運を全部つかんでも勝てるかどうかは分からないですよ。でも、運をつかまない限り絶対に勝てない。運をつかむために準備してきたら、あとは自分の力を出すしかない。それでダメだったら、自分の力がないんだから、すいませんって言うしかないんだから。開き直りというか、自分を信じることだと思います。

ジャンプする時に一回しゃがみ込むのはなぜか?

若者、学生たちへのメッセージ

 就職率が50数%と大変なことだと思います。でも、僕もいつも大変な目に遭っています。いろんなものに抑え込まれることがあって、その時はのたうち回って苦しみます。もう先がないように思うかもしれない。でも、あとで考えるとそれは重力みたいなもんで、重力がないと骨も筋肉もダメになる。それを乗り越えることで、自分を鍛えてくれるもの。そして、そういうものってどういうわけか、必ずあきらめないでやっていると乗り越えられるんです。

 選手たちも右肩上がりに進んでいかないです。落ちた時にみんな後ろを向くんです。それは何のために落ちているか。より高いところに行くために落ちているんだ。こんな低いところにいちゃダメなんだ。ジャンプする時に一回しゃがみ込む。それはなぜかというと、より高いところに行くためにしゃがみ込む。いろんな困難、苦難はこれからも絶対来るんです、人生を生きていけば。その時にそれをどうとらえるか。

 僕の場合は、それが必ず次へのステップになってきました。ただ、その時に簡単にあきらめない。僕は指導者としてそんなに優れているとは思っていないですけど、何かあるとしたら、簡単にあきらめない、投げ出さない。それだけです。そうしていると不思議と神様は最後にご褒美をくれるんですよ。苦難が来た時にチャンスだとは思えないと思うけど、その時に頑張るんですよ。僕もそんなに強い人間じゃなかったけど、頑張っているとだんだん強くなっていくんです、不思議と。学生にとって大変な時代かもしれないですけど、逆に言うと、こういう大変な時代を生き抜いたというすごい世代になる可能性もあるわけです。ぜひ、頑張ってもらいたいと思います。

<了>

2/2ページ

著者プロフィール

スポーツナビ編集部による執筆・編集・構成の記事。コラムやインタビューなどの深い読み物や、“今知りたい”スポーツの最新情報をお届けします。

新着記事

編集部ピックアップ

コラムランキング

おすすめ記事(Doスポーツ)

記事一覧

新着公式情報

公式情報一覧

日本オリンピック委員会公式サイト

JOC公式アカウント