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アジア制覇狙う韓国、「夢見心地」の日本を迎え撃つ
反体制派の新指揮官に率いられて

日韓の新体制作りのスピードに違い

韓国はベストメンバーをそろえて必勝を期す。ただし、大黒柱のパク・チソン(写真)はけがのため欠場の予定
韓国はベストメンバーをそろえて必勝を期す。ただし、大黒柱のパク・チソン(写真)はけがのため欠場の予定【Getty Images】

 ワールドカップ(W杯)・南アフリカ大会後に韓国フル代表監督に就任したチョ・グァンレはすでに2度、日本の試合を視察している。9月4日のパラグアイ戦と、先日のアルゼンチン戦だ。後者を埼玉スタジアムで見届けた翌9日、韓国入国時に空港でメディアの取材に応じた。こんなコメントを残している。

「日本はパラグアイ戦とは雰囲気が違った。ザッケローニ監督が就任後、全体的に活気づいたように思う。(3日後の)韓日戦では、中盤での主導権争いが試合のポイントになるだろう」

「3トップのアウトサイドは、逆サイドにボールが入ると中に絞ってくる。内田の攻撃参加を含め、サイド攻撃には要注意だ」


 では、逆にアルベルト・ザッケローニが新生韓国代表の2試合を偵察したか? そんなワケはない。12日の韓国戦、少なくとも情報戦では相手に先んじられている。W杯・南ア大会後、両国の新体制作りのスピードに違いがあったことの証左だ。韓国は7月の世界ベスト16入り以降、抜かりのない強化体制を続けている。

 南アでの敗退後、わずか1カ月で新監督を選定した。代表監督人事のゴタゴタ(2002年〜10年に6人の監督が指揮)は韓国のお家事情でもあるのだが、今回は違った。敗退後、約20日後に大韓サッカー協会チョ・ジュンヨン会長が「新監督は国内から選ぶ」と宣言。ヒディンク以降、監督の座に就いたコエリョ(ポルトガル)、ボンフレーレ、ピム・ファーベーク(共にオランダ)らの時代より、南アでチームを率いたホ・ジョンムの時代(08年1月〜10年7月)の方が成績が安定していたという理由からだ。

反体制派、在野精神を持つチョ・グァンレ監督

 韓国が新監督選定を急いだ背景には、W杯後にも明確な目標が存在する点がある。


<2011年1月のアジアカップ制覇>


 自国開催の1960年大会以来、実に50年もこの大会で優勝していない。国内メディアも度々「アジアカップ・ジンクス」という言葉を用いるほどに、この大会への苦手意識が強い。96年大会・準々決勝敗退、00年大会・3位、04年大会・準々決勝敗退、07年大会・3位。度重なる敗退が国内サッカーの雰囲気を悪くしてきた。ライバル日本の後塵を拝することも度々あったからだ。

 コンフェデレーションズカップには、01年大会に開催国として出場した以外、出場歴がない。また、02年W杯後の04年大会予選ではオマーン、ベトナムに連敗を喫するというスキャンダルを起こしてしまった。これで02年W杯ベスト4の熱気は一気に冷めた。今回は、南アでの「他国開催初のベスト16入り」の雰囲気を削ぎたくはない。

 さらに、来年1月の大会後、長年代表の屋台骨を支えてきたパク・チソン、イ・ヨンピョの2人が代表引退を宣言している。世代交代を進める意味でも、時間を無駄にできなかった。


 そんな大韓協会の決意の表れは、かつて「反体制派」として知られたチョ・グァンレ監督へのオファーにも表れている。

 今年56歳のチョは現役時代、正確なパスを武器にしたゲームメーカーとして知られた。86年W杯・メキシコ大会に出場。87年に現役引退後、安養LG(現FCソウル)、慶南FCなどの監督を歴任。00年に安養LGでKリーグ優勝を果たし、今季も代表監督就任前まで率いた地方チーム、慶南を上位に導いた。特に若手選手の抜てき、育成の目に長け、慶南時代のチームは「チョ・グァンレ幼稚園」と呼ばれるほどだった。


 一方で長年、韓国サッカー界に絶大な影響力を及ぼしているチョン・モンジュン大韓サッカー協会名誉会長に反旗を翻してきたことでも知られる。「サッカー界はサッカー人が率いるべき」とアンチ・キャンペーンを繰り広げてきた。09年の大韓協会会長選挙の際には、公然と革新派の候補を支持。代表監督就任の話が挙がった際にはこう言ってのけたほどだ。

「自分のような在野精神を持つ監督が代表を率いた方が、韓国サッカーのためになる」

 日本で例えるなら、東京ヴェルディの川勝良一監督のようなギラギラ感を持つ「チョイ悪オヤジ」の就任とでも言おうか。

吉崎エイジーニョ

1974年生まれ、北九州市出身。大阪外国語大学(現大阪大学外国語学部)朝鮮語科卒。『Number』で7年、「週刊サッカーマガジン」で12年間連載歴あり。97年に韓国、05年にドイツ在住。日韓欧の比較で見える「日本とは何ぞや?」を描く。近著にサッカー海外組エピソード満載の「メッシと滅私」(集英社新書)、翻訳書に「パク・チソン自伝 名もなき挑戦: 世界最高峰にたどり着けた理由」(SHOPRO)、「ホン・ミョンボ」、(実業之日本社)などがある。ほか教育関連書、北朝鮮関連翻訳本なども。本名は吉崎英治。

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