大宮、さいたまダービーを浮上のきっかけに

土地将靖

金久保がキーマンとなるか

FC東京戦でプロ初ゴールを決めた金久保。さいたまダービーで力を発揮できるか 【写真提供:大宮アルディージャ】

 もう1つの良い兆しは、金久保である。鈴木監督就任直後から先発メンバーに抜てきされながら、7月のリーグ戦再開後は「少し調子を落としていた」(鈴木監督)とベンチメンバーからも外されるようになってしまった。だが、ここへ来て復調。再び先発メンバーに名を連ねるようになり、先発復帰初戦となった第22節の清水エスパルス戦では、積極的な縦への動きからイ・チョンスのJリーグ初ゴールを引き出した。

 続く鹿島アントラーズ戦は地元・茨城でのゲームに意気込んだものの、いいところを見せられず。その悔しさを、FC東京戦に込めた。決勝点となったプロ初ゴールは、自身のサッカー人生の中でも「初めてじゃないか」と振り返るヘディングによるもので、ラファエルのクロスに体ごと飛び込んで決めた。パスをさばく、スルーパスを出すという役割だけでなく、得点に絡む――いやいや、自ら得点を決め、プロ入り時の目標であった「試合を決められる選手」になるというところにまで踏み込んでいくことで、チームとしての攻撃力は一気に厚みを増すことになる。前回はスタンドから見ていたさいたまダービーで、いよいよ力を見せる時だ。

 堅牢さを備えつつある土台の上に、数々のピースを組み合わせ構築されていく大宮のサッカー。まだまだその完成形には及ばないが、おぼろげながらその姿が見え始めている。

「浦和はいいチームだが、何が起こるか分からないのがサッカー」

 前述したように、浦和とのダービーマッチは、大宮にとって「きっかけになる」ゲームだ。前回の対戦では、村上和弘の退場で、前半のうちに10人となってしまい、45分間以上をひたすら守備に費やした。先制点を守り切ることで勝利したわけで、内容的に上回って勝ったとは言えない。本来目指すべき姿が見えつつある今、今度こそ11人対11人の“ガチンコ”で90分間プレーし、そして勝ったならば、自分たちの成長に確信を持つことができる。そうすれば、天皇杯3回戦をはさんで行なわれるG大阪、川崎との連戦にも、臆することなく臨めるはずだ。

 鈴木が累積警告で出場停止となり、最終ラインの構成は流動的だが、中盤から前はいつものメンバーが並ぶことだろう。浦和もポンテが出場停止、スピラノビッチを含め多くのけが人を抱え万全ではないようだが、持てる力のすべてを出し尽くしてほしい。
 エース格の働きが期待されるイ・チョンスはFC東京戦後、「ダービーは、プレッシャーが大きいのであまり好きじゃない」と苦笑いした。報道陣に対して、あえてそれを公言するところに、ある種の余裕が見え隠れする。「浦和はいいチームだが、何が起こるか分からないのがサッカー」。そう言ってはいたが、「自分たちのプレーをいつも通りにすれば問題なく勝てるよ」と言っているように聞こえたのは、わたしの錯覚だろうか――。

<了>

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著者プロフィール

1967年1月28日、埼玉県生まれ。93年、現在のWEB版「J's GOAL」の前身である試合速報テレホンサービス「J's GOAL」にて、試合リポーター兼ライターとして業界入り。2001年よりフリーランスとなりライターとして本格活動を開始、大宮アルディージャに密着し週刊サッカーマガジン(ベースボール・マガジン社)ほか専門誌等に寄稿している。

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