最後の高円宮杯、大本命は小林擁する東京Vユース=高円宮杯全日本ユース(U−18)選手権プレビュー

川端暁彦

大本命は小林らを擁する東京ヴェルディユース

トップチームでの出場歴もある東京Vユースの小林。天皇杯出場がどう影響するか。 【写真:松岡健三郎/アフロ】

 9月4日から高円宮杯全日本ユース(U−18)選手権が、関東、静岡、北海道を舞台に開幕する。同大会は高校の部活動、クラブチームといった垣根を越えて高校年代真の日本一を決するために創設されたトーナメントで、今年で21回目を迎える。全国9地域で開催されたJFAプリンスリーグU−18の上位20チームに、全国高校総体の決勝進出2チーム、日本クラブユース選手権(U−18)の決勝進出2チームを加えた全24チームが参加する。

 大会は4チームずつ6つのグループに分けた総当たり戦から開幕。1週間に1試合のペースで試合を消化し、決勝トーナメント進出16チームを決定する。ラウンド16からは完全なノックアウト方式となり、10月11日の体育の日に決勝戦が行われる(埼玉スタジアム2002にて開催)。なお、正式決定ではないが、この大会方式は今回が最後となる見込みで、来年度からは全国を東西2ブロックに分けてのホーム&アウエー方式によるリーグ戦が行われ、そのチャンピオン同士による決勝戦という形式になる見込み。現行のプリンスリーグは約4カ月の半期制のリーグだが、この新リーグは12月までかけて行う通年制のリーグとなる。プリンスリーグ自体が廃止されるわけではなく、9地域のリーグ及びその下に展開する都道府県リーグはその下部リーグとして存続する。

 その最後のチャンピオンの大本命と目されるのは、グループCに入った東京ヴェルディユース。すでにトップチームでも出場を果たしているFW南秀仁、MF小林祐希ら豊富なタレントを擁しているだけでなく、攻守のまとまりもある。経営危機にあるクラブとしての危機感を共有し、夏のクラブユース選手権では「ヴェルディのために」という合言葉の下で質の高いパフォーマンスを発揮し続けた。DF高野光司、MF渋谷亮、FW相馬将夏ら献身的な選手が要所を固め、スキが少ない。不安要素は大会前日の3日に天皇杯1回戦を戦ったことか。

対抗はFC東京U−18、“高体連最強”の流通経済大柏などか

 ただ、高円宮杯は夏に今一つだったチームが躍進する傾向を持つ。その意味で対抗に挙がるのは、クラブユース選手権でグループリーグ敗退だったFC東京U−18か。昨年の重松健太郎(現FC東京)のような個人としての“破壊力”を持ったタレントはいないが、素早い攻守の切り替え、運動量、球際の強さ、勝利への執着心といった“FC東京らしさ”は優るとも劣らない。センターバック松藤正伸を中心とした守備は計算できるだけに、FW前岡真吾、秋岡活哉といった攻撃陣の出来がカギとなる。

 夏は早期敗退ながら、なお“高体連最強”の誉れも高い流通経済大柏も注目だ。自慢のハイプレス戦術は健在で、ポゼッション型のチームを前から激しく追い込み、陥れる。189センチの長身センターバック増田繁人ら個々の力もあり、大会で旋風を起こす可能性は十分。
 ただ、流経大柏の入ったグループBはまぎれもない最激戦区。メイン会場の埼玉をホームグラウンドとする浦和レッズユースは高いスキルと戦術眼を持った選手を各ポジションに配し、4−3−3のシステムを巧みに機能させている好チーム。FW矢島倫太郎、礒部裕基の両ウイングをはじめとして個人で打開できる選手もそろっている。そして同じくグループBの清水エスパルスユースも面白い存在だ。2列目に成田恭輔、柴原誠、石原崇兆と個性豊かなアタッカーがおり、ワントップにはU−17日本代表のパワフルFW柏瀬暁が入る。クラブユース選手権では守備から崩れたが、センターバックの田代諒、犬飼智也はともに代表経験もある全国区の実力派。大榎克己監督は立て直してきているはず。総体準優勝で樋口寛規、浜口孝太の強力2トップを擁する滝川第二を含めた4チームの争いは予断を許さないものとなりそうだ。

 そのほかの注目チームとしては青森山田も無視できない。今年は鹿島アントラーズ内定のMF柴崎岳、清水内定のGK櫛引政敏を擁する。夏は市立船橋得意のカウンターに沈んだが、同じ失敗は繰り返さないだろう。青森山田と同じグループDに入ったのは、MF大島僚太、秋山一輝といった夏の総体を故障で棒に振った選手の戻った静岡学園、今年もアイデア豊富なセットプレーなど“せこい”(いい意味で)プレーに磨きをかけている立正大淞南、そして「育成のジェフ復活」を志し、改革の真っ最中であるジェフユナイテッド千葉U−18。アクの強いチームが多く、混戦となりそうだ。

 高校とクラブが垣根を越えて戦うという歴史的に大きな役割を担ったこの大会も、今回で一つの節目を迎える。きれいにトライアングルを構築してボールを動かす柏レイソルU−18や、“魂”のこもったサッカーを見せるサンフレッチェ広島ユースなど、スタジアムで見なければ良さの分からないチームも数多い。最後を迎える同大会、この機会に足を運んでみてはどうだろうか。

<了>

『エルゴラプリンチペ』高円宮杯特集号

「エルゴラ・プリンチペ」高円宮杯特集号 【エル・ゴラッソ】

 サッカー専門新聞『エル・ゴラッソ』では、この大会開幕に合わせて、育成年代に特化したムック本『季刊エルゴラ2010秋・エルゴラプリンチペ』を昨年に引き続き発行いたします。大会の展望、注目選手紹介に加えて、出場24チームの完全名鑑、チーム紹介にとどまらず、「育成年代を読者と一緒に考える本」として今年も読み応え十分の一冊となっております。是非、高円宮杯の熱戦とともにお楽しみください!

『季刊エルゴラ2010秋・エルゴラプリンチベ』

9月4日 全国書店にて発売
580円(税込み)
A4変型/オールカラー/64ページ

主要コンテンツ
日本サッカー、育成の未来図
・田嶋幸三日本サッカー協会副会長インタビュー
・通年化+東西化。リーグ時代の黒船到来
・トップ選手の育ち方・育て方

高円宮杯全日本ユース(U−18)大会展望・日程
・全24チーム完全名鑑、紹介

選手インタビュー
・宇佐美貴史(ガンバ大阪)

指導者インタビュー
・U−19日本代表・布啓一郎監督
・横浜F・マリノスユース・松橋力蔵監督
・市立船橋高・石渡靖之監督
・東京ヴェルディユース・楠瀬直木監督

年代別日本代表特集
・U−16日本代表・豊田国際ユース
・SBSカップU−19日本代表レポート

夏休み特集
・全国高校総体
・日本クラブユース選手権(U−18)

・JFAプリンスリーグ2010全記録
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著者プロフィール

1979年8月7日生まれ。大分県中津市出身。フリーライターとして取材活動を始め、2004年10月に創刊したサッカー専門新聞『エル・ゴラッソ』の創刊事業に参画。創刊後は同紙の記者、編集者として活動し、2010年からは3年にわたって編集長を務めた。2013年8月からフリーランスとしての活動を再開。古巣の『エル・ゴラッソ』をはじめ、『スポーツナビ』『サッカーキング』『フットボリスタ』『サッカークリニック』『GOAL』など各種媒体にライターとして寄稿するほか、フリーの編集者としての活動も行っている。近著に『2050年W杯 日本代表優勝プラン』(ソル・メディア)がある

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