因縁のマリナーズとエンゼルス、それぞれの誤算

丹羽政善

響いたモラレスの離脱

エ軍のモラレスはサヨナラ弾を放った際、ホームで手荒い歓迎を受け負傷。今季中の復帰が難しくなった 【Getty Images】

 なかでも、彼らにとってはケンドリー・モラレスの離脱が痛かったはず。

 今も、その光景がはっきりと目に焼き付いている。サヨナラ満塁本塁打を放ったモラレスは、ホームベースを踏むときに、高く跳ねた。記者席からは頭が浮いて見えた。
 ところが次の瞬間、倒れ込んだ彼を心配そうにチームメートが見つめる。沸いていたスタンドが静まり返る。苦痛に顔をゆがめたモラレスはやがてストレッチャーで運ばれていったが、あとでカメラマンから見せてもらった写真には、左足のつま先があらぬ方を向いていた。

 くしくも、それが5月29日のマリナーズ戦のことである。

 あの敗戦は、マリナーズにとっても痛かった。借金が10となり、それまでギリギリで保たれていた緊張感が、切れてしまったように思う。しかし、結果的にあの劇的な勝利で、よりダメージを負ったのはエンゼルスだったか。モラレスはあの時点で、チームの三冠王だったのである。

両チームとも後半で大きく後退

 エンゼルスはオールスター明け、マリナーズに3勝1敗と勝ち越し、好スタートを切った。しかし、その後の15試合で4勝11敗と負け越して貯金を吐き出す。

 このとき、マイク・ソーシア監督は、「こんな戦いを続けていたら、トリプルAのチームにも追いつかれる」と自嘲(じちょう)気味に話したが、そのころのマリナーズはと言えば、ショーン・フィギンズとドン・ワカマツ監督がダッグアウトで乱闘騒ぎを起こし、遠征で7戦全敗。さらには監督解任という、ブレーキの壊れた車が下り坂を爆走する凄まじさで、破壊的な道を進んでいた。
 その間、エンゼルスは、アスレチックスにかわされて3位に転落したが、マリナーズとのゲーム差は13.5。マリナーズは、トリプルAのチームにさえ劣った――。

 およそ3年前の今ごろのことだ。やはり、マリナーズ対エンゼルスのシリーズがシアトルで組まれていた。このときは、マリナーズが2ゲーム差で首位のエンゼルスを追っていたが、地元で3連敗したあとはズルズル。
 ただ、その3連戦では、45998人、44394人、46046人という記録的なファンが詰めかけている。以来、そういう数字を記録したことはない。

 最終日も、閑散とした中で粛々と試合が進行。松井の勝ち越し2ランで決着がつくと、シアトルのファンは静かに球場を後にした。

<了>

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著者プロフィール

1967年、愛知県生まれ。立教大学経済学部卒業。出版社に勤務の後、95年秋に渡米。インディアナ州立大学スポーツマーケティング学部卒業。シアトルに居を構え、MLB、NBAなど現地のスポーツを精力的に取材し、コラムや記事の配信を行う。

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