バルセロナの2つの誤算=新会長ロセイの就任と進まぬ補強

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誤算(2)セスク獲得の失敗

ロセイ会長就任後、選手補強はアドリアーノ1人にとどまっている 【写真:AP/アフロ】

 2つ目の誤算は、アーセナルのMFセスク・ファブレガスの獲得交渉に失敗したことだ。ビジャ獲得の手柄を退任直前のラポルタに持っていかれたロセイにとって、セスク獲得は自身の会長就任を飾る目玉補強となるはずだった。就任直後の7月初旬、ロセイは自ら南アフリカへと飛んで、ワールドカップ観戦中のベンゲル監督と会談。セスクの獲得交渉を一気にまとめるつもりでいた。

 その直前に新会長は「セスクの獲得は可能だ。まとめるのは今しかない。われわれは話を長引かせるつもりはない」と、短期間での交渉成立を宣言し、「5000万ユーロ(約53億3000万円)と言われればさようなら。3000万ユーロ(約32億円)なら応じる」と適正価格での獲得にまで自信を示していた。

 しかし、ベンゲルの強硬な姿勢はロセイの想像を超えるものだった。セスクの直談判も実らず、本人がアーセナル残留を宣言したのはその1カ月後。その間、クラブはセスク獲得資金の確保を優先していたため、ほかの選手の獲得に動けず、MFヤヤ・トゥーレ(→マンチェスター・シティ)、FWティエリ・アンリ、DFラファエル・マルケス(→共にニューヨーク・レッドブルズ)らの放出ばかりが先立つことになってしまった。

残り1週間、さらなる補強はあるか?

 とはいえ、移籍市場が閉まる8月31日までにバルセロナが何らかの動きを見せる可能性は残されている。ロセイ会長によれば、クラブは今夏使える補強予算として5000万ユーロ(約53億1000万円)を確保。そのうち1000万ユーロ(約11億円)はアドリアーノ獲得に費やしたものの、その後チグリンスキとヤヤ・トゥーレを売却して得た移籍金を加えた予算総額は8900万ユーロ(約94億6000万円)にも上る。トップチームの登録選手がわずか19人という「超・少数精鋭」のチームとなっている現在、執行部がそれだけの予算を抱えながら、何もせずにいるわけにはいかないだろう。

 ロセイは実際、セスク獲得を断念した後にある選手の移籍交渉をまとめていた。それは先日、レアル・マドリーに入団したMFのメスト・エジルである。ロセイは大のバルサファンを公言していたエジルと2度の極秘交渉を行い、レアル・マドリーが払った1500万ユーロ(約16億円)より安い移籍金(固定額1000万ユーロ=約11億円+出来高200万ユーロ=約2億1000万円)で合意に達していた。それが実現しなかったのは、最終的な決断を仰いだグアルディオラに「必要ない」と判断されたからだった。

 現時点で可能性として浮上しているのは、いまだはっきりしていないヤヤ・トゥーレの代役候補として以前からうさわされてきたMFハビエル・マスチェラーノ獲得の有無だ。さらに最近では、FWズラタン・イブラヒモビッチをミランに期限付きで放出し、浮いた彼の年俸分1000万ユーロ(約11億円)を残る補強予算に加えた破格オファーでセスク獲得に再チャレンジする、なんていううわさも飛び出している。
 移籍市場が閉まるまで残りわずか。これまで目立った動きを見せてこなかった新会長だが、最後の最後であっと驚くようなニュースを提供してくれないだろうか。

<了>

文:工藤拓

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