バルセロナの2つの誤算=新会長ロセイの就任と進まぬ補強
誤算(2)セスク獲得の失敗
ロセイ会長就任後、選手補強はアドリアーノ1人にとどまっている 【写真:AP/アフロ】
その直前に新会長は「セスクの獲得は可能だ。まとめるのは今しかない。われわれは話を長引かせるつもりはない」と、短期間での交渉成立を宣言し、「5000万ユーロ(約53億3000万円)と言われればさようなら。3000万ユーロ(約32億円)なら応じる」と適正価格での獲得にまで自信を示していた。
しかし、ベンゲルの強硬な姿勢はロセイの想像を超えるものだった。セスクの直談判も実らず、本人がアーセナル残留を宣言したのはその1カ月後。その間、クラブはセスク獲得資金の確保を優先していたため、ほかの選手の獲得に動けず、MFヤヤ・トゥーレ(→マンチェスター・シティ)、FWティエリ・アンリ、DFラファエル・マルケス(→共にニューヨーク・レッドブルズ)らの放出ばかりが先立つことになってしまった。
残り1週間、さらなる補強はあるか?
ロセイは実際、セスク獲得を断念した後にある選手の移籍交渉をまとめていた。それは先日、レアル・マドリーに入団したMFのメスト・エジルである。ロセイは大のバルサファンを公言していたエジルと2度の極秘交渉を行い、レアル・マドリーが払った1500万ユーロ(約16億円)より安い移籍金(固定額1000万ユーロ=約11億円+出来高200万ユーロ=約2億1000万円)で合意に達していた。それが実現しなかったのは、最終的な決断を仰いだグアルディオラに「必要ない」と判断されたからだった。
現時点で可能性として浮上しているのは、いまだはっきりしていないヤヤ・トゥーレの代役候補として以前からうさわされてきたMFハビエル・マスチェラーノ獲得の有無だ。さらに最近では、FWズラタン・イブラヒモビッチをミランに期限付きで放出し、浮いた彼の年俸分1000万ユーロ(約11億円)を残る補強予算に加えた破格オファーでセスク獲得に再チャレンジする、なんていううわさも飛び出している。
移籍市場が閉まるまで残りわずか。これまで目立った動きを見せてこなかった新会長だが、最後の最後であっと驚くようなニュースを提供してくれないだろうか。
<了>
文:工藤拓