バルセロナの2つの誤算=新会長ロセイの就任と進まぬ補強
「政治家ラポルタ」から「ビジネスマン・ロセイ」へ
新会長に選出されたロセイ氏がバルセロナに戻ってきた 【写真:MarcaMedia/アフロ】
ロセイは元々ラポルタの親友で、7年前の会長選挙ではラポルタの右腕として共に戦い、執行部では副会長兼スポーツ部門の責任者を務めた男だ。次第に独裁色を強めたラポルタと対立して執行部を去るまでの2年間、彼がナイキ社やバルセロナ五輪のマーケティング部門で活躍した敏腕ビジネスマンとして、ロナウジーニョ獲得に一役買ったのは有名な話である。
そのロセイが6月の総選挙で、クラブ史上最多の得票数(3万5021票)、61.35%の最多得票率を集めて圧勝した。逆に、ラポルタ政権の継続派として出馬したジャウマ・フェレールは、候補者4人の中で最低の6168票にとどまり大敗。これは多くのソシオ(クラブ会員)が自身の政治的思想をクラブ経営に持ち込んだラポルタの横暴に辟易(へきえき)し、よりロジカルで効率的なクラブ経営を目指すロセイによる変革を求めた結果だった。
「あなたたちを裏切らない。決して裏切らない」という新会長の力強い言葉で発足した新執行部の船出はしかし、すべてが順調に進んでいるわけではない。特に、移籍市場が閉まるまで1週間を切った段階で獲得した新戦力がアドリアーノ・コレイア1人という状況は、就任前にロセイが描いていたイメージとは随分と異なるものだ(ダビド・ビジャは就任前に加入が決まっていた)。
誤算(1)深刻な財政状況の悪化
この現実に直面した新執行部はまず、DFドミトロ・チグリンスキを1500万ユーロ(約16億円)で古巣のシャフタル・ドネツクへ売却した。わずか1年前に2500万ユーロ(約33億5000万円/当時)を払って獲得したチグリンスキについて、グアルディオラ監督は「自分が監督である限り、彼を放出することはない」とコメントするなど、2年目の飛躍に期待を寄せていた。
よって、チグリンスキの放出は指揮官の意向に反していたのだが、それもロセイいわく、「6月末までに選手へ支払うべき給料分すら持ち合わせがなかった」という切迫した財政状況を前には、やむを得ない放出だったようだ。