「大山加奈の妹」からの卒業 ビーチバレーに転向、大山未希インタビュー
姉・加奈への思い
「負けると悔しいです」。ビーチに転向して間もない大山だが、勝負への気持ちに甘えはない 【写真/ビーチバレースタイル】
まさか(インドアを)辞めるのが一緒になるとは思わなかったです。バレーを一緒に始めて、一緒に辞めました。別に「もう今年辞めようよ」と相談したわけじゃなくて、それぞれが今年辞めると決めていて、辞めるタイミングがぶつかった時になってお互いに「あ、辞めるんだ」みたいな感じでした。
――お互いに相談はしなかったんですね。
姉は腰を痛めてリーグの途中からチームを離れていて、私も最後のシーズンにしようと思っていたので大事な時期でしたし、あまり相談にのることはできませんでした。
――これまでお姉さんはどんな存在でしたか?
『姉妹でこれだけ仲がいいのは珍しいね』って周りに言われるぐらい、休みの日もずっと一緒にいましたね。バレーでは、私の方が教えてあげることが多かったです。「スパイクちょっと助走つけたほうがいいよ」とか、私が言ったことをすごく素直に受け入れてくれました。悩んでいる時は、『何が悪いと思う?』と(姉から)聞いてきたり。
(加奈が)お姉ちゃんでいてくれてよかったっていう部分もあるし、それで悔しい思いをした部分もあります。私が頑張っても、「大山の妹」と言われるので……。でもビーチを始めて、最初は「大山加奈の妹」って皆言うと思うんですけど、それはもう、利用しようと思って開き直っています。やっぱりビーチは、スポンサーについてもらうのも大変だから。チャンスをつかんで、あとは自分の実力で頑張っていこうと。やっぱり実力がないと、「結局は話題性だけか」みたいなことになっちゃうと思うので。実力をつけて、ビーチを、自分の力で盛り上げられたらな、と思っているんです。
――プレーヤーとして、ビーチの世界で目指すところは?
オリンピックです。日本のビーチでは、私が今一番背が高いと言われているので、周りの人もすごく期待してくれていますし、その期待に応えなきゃと思います。私、意外と期待や注目をされた方が伸びるタイプなので(笑)。ロンドンも、頑張れば可能性はあるみたいなので、可能性がゼロじゃない限り頑張ろうと思っています。
「加奈の妹」という肩書を利用します、と語るたくましい笑顔が印象的だ。インドアの選手たちの中でも際立って色白だった未希が、こんがりと日焼けしていた。
「水着はいいんですけど、日焼けするのが嫌で、それで(転向を)悩みました。日焼けがなかったらもっと早く転向していたかも。でも今はもう(焼けても)いいやって吹っ切っています」と、大山は白い歯をのぞかせた。
学生時代、選抜チームの監督に『未希は何でもそつなくこなすけれど、“これ”という光るものがない』と言われたことが記憶に残っている。それはちょっとしたコンプレックスだった。
「ものすごいジャンプ力があるとか、とびぬけて背が高いとか、自分にも何か光るものがあればなーと思うことはありました」(大山)
選抜チームでは先発よりも控えでスタートすることが多かった。試合の流れによってレフト、ライト、時にはセッターも、どこでもこなせる、ベンチに置いておきたい選手だった。
ビーチバレーでは、何でもこなせる能力こそが、未希を輝かせることになるだろう。
「大山の妹」から、ビーチバレーボーラー・大山未希へ。新たな挑戦が始まった。
<了>
(取材・文/米虫紀子)
大山未希/Miki Oyama
1985年10月3日生まれ、東京都出身。身長179cm。グランディア所属。小学1年よりバレーボールを始める。97年全日本小学生大会で全国制覇。成徳学園中に進学し、99年東京選抜に選ばれ、さわやか杯(全国都道府県対抗中学大会)で優勝した。成徳学園高(現下北沢成徳)では、1年生からレギュラーを獲得。姉・加奈から主将を引き継ぎ、春の高校バレーで優勝を果たした。2004年、東レアローズに入団。06年よりセッターに転向した。2010年5月末日をもって東レを退団、ビーチバレーに転向することを発表した。同年8月に開催される第21回全日本ビーチバレー女子選手権大会に大阪代表として出場予定。ビーチバレー界待望の大型選手として期待されている。
◇大山未希選手出場予定の大会◇
大会名:第21回全日本ビーチバレー女子選手権(ビーチバレージャパンレディース2010)
日程:8月19日(木)〜22日(日)
会場:大阪府泉南郡 淡輪海水浴場
ビーチバレースタイル7月号 『水着SHOW〜2010SUMMER〜』
『ビーチバレースタイル』7月号表紙 【写真/ビーチバレースタイル】