浦田&西堀、はちまきに込めた想い=ビーチバレージャパン女子

ビーチバレースタイル

開幕戦以来、2度目の優勝を飾った浦田(右)と西堀。茄子紺色のはちまきを締めて、試合に臨んだ 【岩本勝暁】

 8月12日に開幕した「MasterCard第24回ビーチバレージャパン」。大会最終日の15日(日)、男女準決勝、決勝が行われ、男子は朝日健太郎(フリー)・白鳥勝浩(湘南ベルマーレ)組が大会5連覇を達成した。一方、女子は、浦田聖子(さとこ)・西堀健実(たけみ=ともにフリー)組が、浅尾美和・草野歩(ともにエスワン)組を下し、今季国内大会2度目の優勝を飾った。

優勝からの、苦しい3カ月

「昨日、試合後に別れた後、タケ(西堀)から“前回の優勝はサトコさんのおかげで初めて勝てました。明日は私が頑張ってサトコさんに勝利をプレゼントします!”というメールがきたんです。それを見て安心して眠れました」
 優勝を決めた直後のコートインタビューで、浦田がこんなエピソードを観客席に向かって披露した。JBV(国内)ツアー2010第1戦東京オープンで優勝し、その後第2戦で準優勝、第3戦で3位と、ほかのチームに比べれば安定した成績を残しながらも、当の本人たちにとっては第1戦以降、下降線をたどるような3カ月を過ごしてきた。ロンドン五輪を目指してランキングポイント獲得のためにワールドツアーに参戦するも、予選突破ならず。苦しい状況の中で、シーズンの折り返し点である今大会に出場していた。

 今大会、浦田・西堀組は、茄子紺色のはちまきをしてゲームに臨んだ。浦田も西堀も、ともに春の高校バレー経験者。西堀は中学、高校で全国制覇を成し遂げている。大好きなバレーで勝ちたいと思っていた10代のころの純粋な自分を、今再び取り戻そう。ヨーロッパのワールドツアー転戦で疲弊し切っていた時、浦田の心の底からわき上がってきたのは、初心に帰る思いだったという。
「それをカタチにするなら、あのころギュッと締めていたはちまきなのかなって」
 猛暑の湘南・鵠沼海岸。決勝戦のセンターコートで名前がコールされると、浦田と西堀ははちまきをギュッと締め直して大歓声のコート中央に走っていった。

浅尾・草野組との決勝戦

 敗者復活戦のあるビーチバレージャパンでは、トーナメントで1回負けてももう一度だけチャンスがある。決勝のカードとなった浦田・西堀組、浅尾・草野組はともに2回戦で敗れたが、敗者復活戦を勝ち上がり、決勝進出を決めたのだった。対戦相手の浅尾・草野組にとっては、ペア結成後初の決勝戦。どちらも負けられない意地が激突する。

 猛暑の決勝戦。ゲーム序盤は浅尾・草野組のリズムで試合が進んだ。草野には強烈なジャンプサーブやスパイクを、浅尾には狙いすましたショットを決められ、9−12とリードされたままテクニカルタイムアウトを迎えた。しかしその後、サーブレシーブから浦田のスパイクが連続して浅尾・草野組のコートに突き刺さり、第1セットを21−18で浦田・西堀組が奪った。
 続く第2セット、第1セットからの勢いにのる浦田・西堀組だったが、浅尾・草野組の軟硬織り交ぜた攻撃におされ、21−23でセットを落とす。そうして迎えたファイナルセットでは、浦田のスパイクに加え西堀の得意のブロックも決まり、結局15−10で浦田・西堀組が試合を制したのだった。

「初心に帰ろう」

「ワールドツアーで気持ちを入れ替えたつもりだったのに、JBVツアー第3戦の大阪カップでふがいない結果になってしまった。それでもう一度、身体づくりから見直してフィジカルトレーニングに注力してきたのがよかったと思います」(浦田)
「“初心に帰ろう”という気持ちと、技術以上に基礎的なフィジカル強化をしようというチームの方針が共有できたから、迷わず取り組めました。今大会、身体がキレてるという実感を感じながらプレーできていました」(西堀)

 浦田は、何度も浅尾・草野組のサーブで狙われながらもきっちりとサーブレシーブをすると、西堀の絶妙なトスワークでスパイクを何本も放った。ラリーが続く苦しい場面でもショットに逃げずに強打を繰り出し続けていた。あるいは草野のスパイクを浦田がダイビングレシーブすると、西堀が冷静なカットショットで確実に決めていく。長いフルセットを戦い抜いて勝つ基礎体力を、わずかの期間で構築してきた結果、2度目の優勝にたどり着いた。

「“はちまきに入れるスポンサー募集中です!”って、優勝したから言えますね」(浦田)
 今年は11月に中国・広州で開催されるアジア大会に日本代表として出場が決定している。もちろん、その先にあるのは、2年後のロンドン五輪。新たな覚悟で臨んだ真夏の頂上決戦が、浦田・西堀組の大きなステップになるのか。そんな節目の勝利であってほしい。

<了>

(取材・文/宮崎恵理)

ビーチバレースタイル7月号 『水着SHOW〜2010SUMMER〜』

『ビーチバレースタイル』7月号表紙 【写真/ビーチバレースタイル】

 6月25日発売号の特集は、浦田聖子、西堀健実、浅尾美和、草野歩、田中姿子、溝江明香、尾崎睦、金田洋世、駒田順子、周藤玲美ら、トップ選手10人の戦闘ウエアを一挙公開。選手たちが着用する『水着』へのこだわりとは!? 第2特集は、JBVツアー前半戦ハイライト。明暗分かれた開幕戦をもう一度おさらい。これを読めば、各チームの浮き沈みがまるわかり! そのほか、好評連載中の技術指導企画、フィジカルトレーニング論なども掲載。
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著者プロフィール

2009年4月創刊。国内トップ選手の情報、大会レポート、技術指導、トレーニング論など、ビーチバレーを「見る」「やる」両方の視点から、役立つ情報が満載。雑誌のほかに、ビーチバレースタイルオンラインとして、WEBサイトでも大会速報、大会レポートなど、ビーチバレーに関する報道を行っている。

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