浦田&西堀、はちまきに込めた想い=ビーチバレージャパン女子
開幕戦以来、2度目の優勝を飾った浦田(右)と西堀。茄子紺色のはちまきを締めて、試合に臨んだ 【岩本勝暁】
優勝からの、苦しい3カ月
優勝を決めた直後のコートインタビューで、浦田がこんなエピソードを観客席に向かって披露した。JBV(国内)ツアー2010第1戦東京オープンで優勝し、その後第2戦で準優勝、第3戦で3位と、ほかのチームに比べれば安定した成績を残しながらも、当の本人たちにとっては第1戦以降、下降線をたどるような3カ月を過ごしてきた。ロンドン五輪を目指してランキングポイント獲得のためにワールドツアーに参戦するも、予選突破ならず。苦しい状況の中で、シーズンの折り返し点である今大会に出場していた。
今大会、浦田・西堀組は、茄子紺色のはちまきをしてゲームに臨んだ。浦田も西堀も、ともに春の高校バレー経験者。西堀は中学、高校で全国制覇を成し遂げている。大好きなバレーで勝ちたいと思っていた10代のころの純粋な自分を、今再び取り戻そう。ヨーロッパのワールドツアー転戦で疲弊し切っていた時、浦田の心の底からわき上がってきたのは、初心に帰る思いだったという。
「それをカタチにするなら、あのころギュッと締めていたはちまきなのかなって」
猛暑の湘南・鵠沼海岸。決勝戦のセンターコートで名前がコールされると、浦田と西堀ははちまきをギュッと締め直して大歓声のコート中央に走っていった。
浅尾・草野組との決勝戦
猛暑の決勝戦。ゲーム序盤は浅尾・草野組のリズムで試合が進んだ。草野には強烈なジャンプサーブやスパイクを、浅尾には狙いすましたショットを決められ、9−12とリードされたままテクニカルタイムアウトを迎えた。しかしその後、サーブレシーブから浦田のスパイクが連続して浅尾・草野組のコートに突き刺さり、第1セットを21−18で浦田・西堀組が奪った。
続く第2セット、第1セットからの勢いにのる浦田・西堀組だったが、浅尾・草野組の軟硬織り交ぜた攻撃におされ、21−23でセットを落とす。そうして迎えたファイナルセットでは、浦田のスパイクに加え西堀の得意のブロックも決まり、結局15−10で浦田・西堀組が試合を制したのだった。
「初心に帰ろう」
「“初心に帰ろう”という気持ちと、技術以上に基礎的なフィジカル強化をしようというチームの方針が共有できたから、迷わず取り組めました。今大会、身体がキレてるという実感を感じながらプレーできていました」(西堀)
浦田は、何度も浅尾・草野組のサーブで狙われながらもきっちりとサーブレシーブをすると、西堀の絶妙なトスワークでスパイクを何本も放った。ラリーが続く苦しい場面でもショットに逃げずに強打を繰り出し続けていた。あるいは草野のスパイクを浦田がダイビングレシーブすると、西堀が冷静なカットショットで確実に決めていく。長いフルセットを戦い抜いて勝つ基礎体力を、わずかの期間で構築してきた結果、2度目の優勝にたどり着いた。
「“はちまきに入れるスポンサー募集中です!”って、優勝したから言えますね」(浦田)
今年は11月に中国・広州で開催されるアジア大会に日本代表として出場が決定している。もちろん、その先にあるのは、2年後のロンドン五輪。新たな覚悟で臨んだ真夏の頂上決戦が、浦田・西堀組の大きなステップになるのか。そんな節目の勝利であってほしい。
<了>
(取材・文/宮崎恵理)
ビーチバレースタイル7月号 『水着SHOW〜2010SUMMER〜』
『ビーチバレースタイル』7月号表紙 【写真/ビーチバレースタイル】
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