マリナーズのトレーナーが語るクリフ・リーの調整方法=ア・リーグ最高の先発投手のルーティーンとは
7月にマリナーズからレンジャーズに移籍したリー 【Getty Images】
そのスケジュールのなかで、先発投手陣は中4日を基本として先発のマウンドに上る。今回はその先発投手の調整方法について、マリナーズのアシスタント・トレーナーである森本貴義氏に、身近に接してきたクリフ・リー投手(現レンジャーズ)の調整ルーティーンを紹介してもらった。
体力と精神力のタフさを問われる先発投手
日本は通常1週間に1度の休日がありますが、メジャーリーグでは試合数も多く、移動にも時間がかかるため2週間に1度休日があればいいほう。
6カ月の間に162試合をこなすメジャーリーガーの体力と精神力が尋常でないのは明らかです。特に、勝負の行方の80パーセントを握るといわれる先発投手は、中4日の登板で1試合100球を目安にゲームを作るという重責を担っています。
では、その先発投手は、登板の間にどんなコンディショニングを行っているのか。7月上旬までマリナーズに在籍し、その後トレードでレンジャーズに移籍したクリフ・リー投手の例を参考にみてみましょう。
まだ体全体の筋緊張が強く、疲れている状態。
彼は全身のストレッチののち、体の大きな筋肉のパーツを使うウェイトトレーニングを9種目2〜3セット行い、その後、外野エリアでのポール間インターバルランニングを16〜24本。その後バランスボールを使っての腹筋を7種目2セット行います。
そして全身の疲れを取るためのマッサージを1時間ほど行って、少し時間をおいてから、肩のPNFマニュアルエクササイズ(体に備わる反射を促通手技の結果として反応させて神経、筋機能の向上、各関節の可動域の回復などを図ろうとするもので、今では肩の運動療法には欠かせないものになっている)を11種目行います。
(2)登板後2日目
まだ2日前の投球の疲れは残るものの、自身でのコンディショニング、ウォーミングアップ後、キャッチボール、そしてブルペンで35〜45球ほど投げます。その後、グラウンドでのポール間の中間位置(約100メートル)までのランニングを10本行います。
(3)登板後3日目
疲労も抜け、体力も戻ってきている状態。
ウォーミングアップの後に下半身、腰背部、上腕部、胸部のウェイトトレーニングをそれぞれ2種目2セット行い、その後バランスボールを使っての腹筋を7種目2セット行います。
その後少し休憩をとり、約90フィート(約27.4メートル)のランニングを6〜8本こなしたあと、PNFマニュアルエクササイズ(6種目)を2セット行い、その後さらに休憩をとってから全身のストレッチ、マッサージを1時間半ほど行います。
(4)登板後4日目(登板前日)
前日のウェイトトレーニングでの体の張りをある程度残しながら、ウォーミングアップ後、軽めのキャッチボール。そして30メートルのランニングスプリントを8〜10本行い、翌日の投球に備えます。
最高のパフォーマンスを出せる投手
もともとは線の細い体だったのでしょうが、長い時間をかけて作り上げた身体は、肩甲骨の柔軟性に富み、なおかつその周辺部の筋肉は強くしなやかな状態を維持しています。
特に、リー投手はコア(体幹)のトレーニングをとても大切にしています。その幹となるエクササイズを中心に全体のトレーニングの組立を図っています。彼のコンディショニングに対する姿勢はほかの選手が近寄りがたいほど集中力にあふれていました。生まれ持った才能とともに、日々の調整に対する姿勢が彼をメジャーリーグのなかでも超一流の存在に押し上げてきたのでしょう。
<了>
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