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ロンドンへの扉をたたく選手たち
サッカー総理大臣杯で光った才能

要注目はW杯サポートメンバーの永井、山村

W杯にサポートメンバーとして帯同した福岡大のFW永井はたぐいまれなスピードが持ち味
W杯にサポートメンバーとして帯同した福岡大のFW永井はたぐいまれなスピードが持ち味【飯嶋玲子】

 7月4日から10日まで大阪を中心とした関西地域で、総理大臣杯全国大学サッカートーナメントが行われた。“大学サッカー夏の陣”といわれる総理大臣杯は、北海道、東北、関東、東海、北信越、関西、中国、四国、九州の9地域の代表大学がしのぎを削る全国大会。今年は関東第2代表の駒澤大が、初優勝を狙う中京大を延長戦の末に下して6年ぶり6度目の栄冠に輝いた。駒澤大は2002年から04年にかけて、この大会で3連覇を達成。当時は巻誠一郎、深井正樹(共に千葉)、赤嶺真吾(FC東京)、巻佑樹(名古屋)らが活躍していたことからも分かるように、この大会で高い評価を受けてJリーグに進むというパターンも少なくない。

 当然、今大会でも新たな“原石”の発掘が期待された。中でも注目したいのが、12年のロンドン五輪に参加する資格を持つ21歳以下の選手だ。前回の北京五輪予選では長友佑都(FC東京=当時明治大)、本田拓也(清水=同法政大)ら無名の大学生選手が代表に選ばれ、そのまま本大会メンバーに残るというサプライズがあった。だが前回と違い、現在の大学生にはすでにU−21日本代表に選ばれている選手も多い。よって、今年発足するロンドン五輪代表候補は、前回以上に大学生選手の存在がクローズアップされることだろう。


 その筆頭ともいえるのが、ワールドカップ(W杯)・南アフリカ大会でサポートメンバーとして日本代表に帯同したFW永井謙介(福岡大・4年)とDF山村和也(流通経済大・3年)だ。4年生ながら早生まれのため、五輪代表に入るチャンスを持つ永井。彼の持ち味は、なんといってもそのスピードだ。1本のパスを確実にチャンスにつなげる俊足FWは、複数のJクラブからラブコールを受けており、トップスピードでのボールコントロールやミドルシュートの正確性など、技術面での評価も高い。父親の仕事の関係で少年期をブラジルで過ごしたこともあり、日本人選手にはまれな“したたかさ”が備わっているのも魅力。今大会1回戦の流通経済大戦では、ペナルティーエリア内で同じW杯帯同メンバーの山村から巧みにファウルを誘い出しPKをゲット。これを自ら決め、福岡大の勝利に大きく貢献した。

 一方、1回戦の“サポートメンバー対決”に敗れた形にはなったものの、山村の潜在能力の高さにも注目したい。184センチの長身を生かした空中戦や当たりの強さ、アグレッシブな守備には定評がある。ロングフィードや少し高い位置でボールをさばく技術も高く、そのためU−21代表では流経大でプレーするセンターバックではなく、ボランチでの出場が多い。海外のチームとの戦いでは、中盤で確実にボールを跳ね返し、攻撃につなぐことのできる“大型ボランチ”山村の存在は貴重だ。


 ほかにも、流通経済大には要注目選手が目白押し。的確な指示とカバーリング能力に長けたGK増田卓也、身体能力の高さと強いフィジカルを武器に攻守両面で活躍する左サイドバックの比嘉祐介(共に3年)は、何度もU−20、U−21などの年代別代表に招集されている“五輪代表候補”だ。また、07年度の高校選手権で圧倒的な強さを見せつけた流経大柏高を中盤の底でコントロールしたMF中里崇宏(3年・横浜FC特別指定選手)も能力の高い選手。

 07年度の高校選手権で活躍した選手といえば、準優勝の藤枝東高から慶応大に進んだMF河井陽介(3年・清水特別指定選手)も覚えておきたい。昨年はU−20代表に選ばれ、水原国際ユース大会で2得点2アシストと活躍。165センチと小柄だが突破力に優れ、前線でタメを作ることのできる技術の高さを持つ。同じ慶応大の右サイドバック、田中奏一(3年)もそのスピード、攻撃力を買われてU−20代表に選出されている。

中京大の屋台骨となった元Jリーガー須崎

慶応大のMF河井は突破力と高い技術を併せ持つ
慶応大のMF河井は突破力と高い技術を併せ持つ【飯嶋玲子】

 いわゆる地方大学の、代表歴のない選手の中にも目を引く選手はいる。例えば仙台大の奥埜博亮(3年=仙台特別指定選手)と佐藤世弥(3年)。テクニックとボディーコントロールに優れた奥埜とスピードのある佐藤の2トップは、関東の屈強なセンターバックとしたたかに戦い、決定力の高さを存分に発揮して仙台大を11年ぶりのベスト4へと導いた。

 また、準々決勝で敗れた高知大のセンターバック實藤友紀も注目選手だ。4年生だが永井同様早生まれのために五輪出場の資格を持つ。その身体能力の高さに川崎が早くからほれ込み、来季の入団が内定している逸材だが、実はセンターバックに転向したのは2年前という“変り種”。もともとはFWやトップ下でプレーをしていただけに、今大会でもパワープレーで上がった前線でタメを作るという一面を見せた。

 変り種といえば、初の決勝進出を果たした中京大のDF須崎恭平だ。磐田ユース時代は各年代の代表に選ばれ、中心選手として活躍。そのままトップに昇格したが、ほとんど出場機会を得られないまま退団。今年から中京大でプレーしている。したがって学年は1年生だが、年齢的には五輪世代ど真ん中。今大会では、プロ仕込みのハードディフェンスで“堅守”中京大の屋台骨となり、準優勝という結果を残した。これを足掛かりに、かつての代表仲間たちとの再会を狙えるか。


 今大会では1、2年選手の活躍も光った。中にはU−19代表に選ばれている選手もいるが、今後の活躍によっては五輪代表候補に“飛び級”が期待できるかもしれない。実際、2年生ながら前年度優勝校・福岡大のゲームキャプテンを任されたDF牟田雄祐は、今年初めのU−21トゥーロン国際大会メンバーに選ばれている。186センチの体格を生かした空中戦の強さは一見の価値あり。福岡大はU−19代表FWの清武功暉(2年)の得点力、192センチのGK大森圭悟(1年)の高さにも注目したい。

 また慶応大のボランチ、藤田息吹(2年)も注目選手の1人。U−19代表ではサイドバックと中盤を兼務するユーティリティー性の高い選手で、鋭いミドルシュートでゴールを狙う。代表歴はないが、切れ味鋭いドリブルで攻撃の起点となった国士舘大のMF金子昌広(2年)と駒澤大のMF湯澤陽介(2年)も面白い存在だ。国士館大のボランチ佐藤優平、中京大のMF佐藤和弘(2年)は技術力の高さが光った。

 高校選手権での活躍も記憶に新しい山本大貴(元ルーテル学院高)と碓井鉄平(元山梨学院大附高)の1年生コンビも、駒澤大優勝に大きく貢献。特にFWの山本は準決勝で1ゴール1アシスト、決勝でも相手のファウルを誘ってPKを獲得するなど、大事なところで大きい仕事をしてみせた。マークを外してシュートに持ち込むうまさも特徴的で、高校選手権得点王の肩書きはダテではないことを証明。一方、碓井は早くも駒澤大の“心臓”としての期待が懸かる。もとより状況判断力とボールをさばく力には定評があったが、秋田浩一監督は彼のシュートのうまさを生かすため、ボランチより少し前目のポジションでもプレーさせたい意向のようだ。

飯嶋玲子

東京都出身。1980年代、テレビで見たワールドカップで衝撃を受けサッカーファンに。JSL(当時)時代には元日本代表・宮内聡のプレーに心酔。出版社で7年間雑誌編集を勤めたのちフリーとなり、『サッカルチョ』『Football Japan』などの編集に携わる。90年代半ばより大学サッカー関連の記事を執筆。99年からは6大会連続でユニバーシアードを現地取材。2001、03、05年の日本の三連覇を目撃した(たぶん)唯一のライター。有料メールマガジン『飯嶋玲子・大学サッカーメールマガジン』(http://clg.6mag.net/)も配信中

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