アラゴネス前監督は苦言、ファンは楽観視=スペイン代表のグループリーグを評価

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ジャーナリストの疑問

ファンはスペイン代表に全幅の信頼を寄せている 【(C) FIFA/FIFA via Getty Image】

 一方、全64試合を放送するスペインのテジタルCS局Canal+の解説として試合会場を飛び回っているジャーナリスト、“マルディーニ”ことフリオ・マルドナードはスイス戦後、「1試合の失敗だけで、本命としてW杯を迎えたチームとその素晴らしいプレーへの信用を放棄してはならない」と、代表への信頼を呼び掛けた。
 ただ、彼も試合内容に疑問を抱いていた点はアラゴネスと同じで、「ボールを独占し、圧倒的にゲームを支配していた。だが、スイスのGKベナーリオすらヒーローにならなかったこの試合では、何らかの問題があったはずだ」と納得する敗因を見つけ出すのに苦労していた。

 また『アス』紙編集長のアルフレッド・レラーニョも、今大会のスペインに正体不明の違和感を感じている1人だ。「今大会これまで目にしてきたスペインは、過去2年間のスペインではない。W杯予選を戦ったチームとも違う。今は以前より慎重で、魅力を失い、疑念を抱き始めている」とチームの印象を語る。ラウンド16で対戦するポルトガルを「今のスペインにとっては非常に強力なライバル」と警戒していた。

ファンが抱く盲目なまでの自信

 だが唯一、ファンだけは違った。勝利が求められるグループリーグ最終節、チリ戦のキックオフ1時間前。大一番の直前にスタジアム外で盛り上がるスペインサポーターの数人に話を聴くと、驚くほど強気な発言ばかりが飛び出した。

 バジャドリー出身のエドゥアルドは「スイス戦の敗戦が地に足をつけてくれた。人々の頭を冷やして、これがW杯なんだってこと、まだ何も勝ち得ていないことを思い出させてくれたんだ」と、スイス戦の敗戦をプラスにとらえた。ホンジュラス戦で露呈した決定力不足についても、「あそこで悪運を使っておけば、今日から幸運に恵まれるはずさ」とポジティブ思考を貫き、一切の不安を見せなかった。

「スイス戦はモーターを温めるための一戦だった」と冗談半分に話したバルセロナ出身のビクトルは、「今日はスペインのサッカーを見せてやる。バルサベースのサッカーをね。おれはこの代表を100%信頼している」と自信満々に話した。
 また、アルカジェテのホルヘは「決定力不足? 今大会をここまで見る限り、どの試合もロースコアで終わっているじゃないか。どこも得点を挙げるのには苦労しているんだよ」との考えを示した。

 しかし、何より驚いたのは、話を聞いたスペイン人全員が次ラウンドの対戦相手として、ポルトガルではなくブラジルを望んだことだ(実際はポルトガルとなった)。ユーロ2008の優勝以来、スペインは勝者のメンタリティーを身に付けたと言われる。それは選手だけでなくファンも同じで、元々楽観主義者の彼らは、単純にW杯優勝が可能だと信じ込んでいる節がある。
 とはいえ、腕を組んで眉間にしわを寄せて試合を凝視するよりは、よほど健康的なのかもしれない。W杯はお祭りなのだから。

<了>

文:工藤拓

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