陸上日本選手権4日開幕! 福島、室伏らが出場=見どころ

折山淑美

塚原vs.江里口、男子短距離も熱い

男子100メートルは、塚原(右)と江里口ら主力選手の仕上がりの遅さも気がかりの一つ 【写真/陸上競技マガジン】

 昨年は好記録ラッシュだった男子短距離だが、今年は主力選手たちの仕上がりの遅さが気になるところだ。100メートルの塚原直貴(富士通)と江里口匡史(早大)はともに、5月の大阪がシーズン初戦だった。 その中で100メートルの王者を争う二人だが米国で新しいスタートを身につけようとしている塚原は、大阪を10秒36で走った後、翌週の東日本実業団選手権では10秒30と、ステップを一つ上げている状況だ。一方の江里口は大阪の10秒38の後、関東学生陸上競技対校選手権(関東インカレ)では向かい風0.4メートルで10秒38だが、まだスタートがシックリいっていないようでもあった。
 ともに今年は来年の世界選手権、再来年のロンドン五輪へ向けての土台作りを意識している年。記録への期待というより、その段階の1レースとしての勝負を楽しみたい。

 その二人と違い、ケガで出遅れているのが200メートルの高平慎士(富士通)だ。開幕戦だった4月上旬の順大記録会で軽度の半膜様筋を断裂してしまった。その後は大阪で復帰して日本人トップになり、東日本実業団でも優勝しているが、記録は条件にも恵まれず20秒78と20秒94に、さらに5月23日のダイヤモンド・リーグ上海大会では、向かい風0.8メートルで21秒12に止まっている。
 男子200メートルでは今季、5月3日の静岡国際予選で、中大1年の飯塚翔太が20秒58で走り、雨が降る条件だった関東インカレでも20秒76で圧勝と大器ぶりをみせている。飯塚は世界ジュニアに万全を期すために日本選手権へは出場しないが、優勝を義務付けられている高平にしてみれば、存在感を見せつけるためにも20秒5台以内の記録では走っておきたいところだ。

福島を追いかける高橋らの活躍にも期待

 一方、女子短距離は、4×100メートルリレーでの世界挑戦を考えれば、福島以外の選手の頑張りに期待したい。その筆頭は高橋萌木子(平成国際大)だが、関東インカレの100メートルでは向かい風1.2メートルで11秒67と大会新記録を出し、徐々に走りを取り戻してきている。さらに今季は不満を感じているという後半も、リレーで少し感触をつかめたとも言う。福島に追いすがるためにも、100メートルでは11秒2台、200メートルは23秒1台前半は欲しい。
 ほかには織田記念で自己記録を一気に0秒16縮める11秒59を出した佐野夢加(都留文科大職)も期待の一人だ。今季は冬から代表合宿にも参加して底力を上げた。昨年400メートルリレーの主力の一人となった渡辺真弓(ナチュリル)が故障で出遅れているだけに、25歳の佐野は年長者として若いチームを精神的に引っ張る役割もある。彼女がさらに自己記録を上げていけば、福島、高橋との格差を縮めることが最大の課題である女子短距離チームにとって刺激を与えるはず。できれば誰かが11秒4台に入ってくれれば、というのがスタッフの願いでもある。

 その役割は100メートルハードルの寺田明日香(北海道ハイテクAC)も同じだ。織田では13秒25、大阪では13秒13と徐々に記録を上げているが、彼女の12秒台は100、200メートルの記録向上とともに期待されているものだ。

 <了>

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著者プロフィール

1953年1月26日長野県生まれ。神奈川大学工学部卒業後、『週刊プレイボーイ』『月刊プレイボーイ』『Number』『Sportiva』ほかで活躍中の「アマチュアスポーツ」専門ライター。著書『誰よりも遠くへ―原田雅彦と男達の熱き闘い―』(集英社)『高橋尚子 金メダルへの絆』(構成/日本文芸社)『船木和喜をK点まで運んだ3つの風』(学習研究社)『眠らないウサギ―井上康生の柔道一直線!』(創美社)『末続慎吾×高野進--栄光への助走 日本人でも世界と戦える! 』(集英社)『泳げ!北島ッ 金メダルまでの軌跡』(太田出版)ほか多数。

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