エナン敗退 重く響いた不在の1年8カ月=全仏テニス第9日

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全仏オープン第9日、3年ぶりの優勝を狙ったエナンだったが、昨年の全仏ベスト4のストーサーに逆転負けを喫し、準々決勝進出はならなかった 【Getty Images】

 全仏オープンテニス第9日が31日、パリ郊外のローランギャロスで行われ、男女のベスト8が出そろった。“番狂わせ”とはいえないのかもしれないが、多くの人が願ったドラマの筋書きを狂わせたのがジュスティーヌ・エナン(ベルギー)の敗退だった。

エナン不在の間、急成長したストーサー

 2日にまたがるマリア・シャラポワ(ロシア)との3回戦の勝利は、全豪オープンの2回戦でエレナ・デメンティエワ(ロシア)との激戦をくぐり抜けたあとのように、エナンの加勢につながる1勝と思われたが、思いがけないところに敵がいた。昨年の全仏でグランドスラム初の準決勝進出を果たした26歳のサマンサ・ストーサー(オーストラリア)。去年の快挙は決してまぐれではなかったのだ。現在、世界ランクは自己最高の7位。昨秋大阪で行なわれたHPオープンでツアー初優勝を果たしたことを覚えている日本のテニスファンもいるだろうか。

 先月のシュツットガルト決勝で両者は対戦し、フルセットを制したエナンが復帰後初優勝を果たした。そんなストーサーをエナンは決して侮ってはいなかったはずだ。

 2008年5月、4連覇のかかった全仏オープンの直前に引退したエナンがツアーを離れていた期間は1年8カ月。ほんのわずかな時間のようだが、テニス界の移り変わりはめまぐるしい。この間に急成長した選手の一人が、遅咲きのストーサーだった。

 エナン引退の衝撃がくすぶる2年前のローランギャロス、ストーサーはワイルドカードとして出場していた。世界ランクは149位。07年には20位台まで達したにもかかわらず、ウイルス性の疾患が原因でその年の全米オープン以降を棒に振ったためだ。しかしそこからじわじわと復活を遂げたストーサーは昨年の全仏ベスト4で脚光を浴びた。

「相手が素晴らしかった。私には自信を取り戻すのにもう少し時間が必要」

 エナンは相手を讃えた上で、自身の不完全さを語った。全盛期のころと何ら変わりないテニスのように見えても、内面的には失われてまだ埋まらない部分がある。メンタルの作用が大きいと言われるクレーでそれが出た。

伊達を下したグロースは4回戦敗退

 ところで、ストーサーと同じオーストラリアはもう一人、2回戦でクルム伊達公子(エステティックTBC)が敗れた相手ジャミラ・グロースが4回戦に勝ち進んでいたが、ヤロスロワ・シュウェドワ (カザフスタン)とのノーシード対決に敗れた。クルム伊達がディナラ・サフィナ (ロシア)をつぶしたことでこの山は“総崩れ”の様子。もともと、絶不調のサフィナと8位のアグニエシュカ・ラドワンスカ(ポーランド)しか上位の選手はいない山だから、こうなっても不思議ではないのだが、クルム伊達の足が万全だったらと想像せずにはいられない。対戦する相手はみんな去年一度は対戦したことのある選手。

 しかしそんな「たら・れば」はツアーにちりほども存在する。現実を見るしかない。

 男子はほぼ順当だが、フェルナンド・ベルダスコ(スペイン)がニコラス・アルマグロ(スペイン)から初黒星を喫したことが、この先どう影響するだろうか。次の相手はラファエル・ナダル(スペイン)だから重大だ。

 <了>
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