エナンvs.シャラポワ、元女王の因縁の邂逅=全仏テニス第8日
1セットずつ取って順延へ
キャリアグランドスラム達成を目指したシャラポワだが…… 【Getty Images】
日没による順延を挟み再開された最終セットでも、前日の勢いをそのまま持ち込んだシャラポワが、ゲームカウント2−0と先行。だが「後が無くなったので、積極的に行くしかないと思った」というエナンが、ここから逆襲に転じる。果敢にネットに詰めボレーを決めると、フットワークにも本来の軽快さが戻ってきた。追う者の開き直りが追われる者を焦りを誘い、最後はシャラポワのショットがラインを割って、勝敗が決した。
エナンが勝利 第二キャリアの“始まりの終わり”
この勝利で、優勝候補の筆頭に立ったのでは?――試合後にそう聞かれたエナンは、上記のように返答し、性急な記者をやんわりといさめた。だが、以前はこの手の質問をされると、かたくなまでに「一試合ごとに集中するだけ。先のことは考えない」と繰り返していた彼女にしてみれば、十分に優勝を意識した発言と見ることができる。今年1月の現役復帰から半年が経過し、最大のライバルの一人を大舞台で破ったエナンである。もはや彼女を語る際に「復帰」という言葉を持ち出す必要はないだろう。この勝利は、第二のキャリアの“始まりの終わり”を記す一里塚になる。
敗れたシャラポワにしても、今回の試合で得た物は、決して少なくないはずだ。試合後の会見で、記者から「今日のようなプレーをすれば、全仏でも優勝できるのでは?」と聞かれ、「どんなに良いプレーをしても、負けは負け」とまつ毛を伏せたシャラポワだが、「将来に向け、何をすれば良いか分かった」と自信ものぞかせる。悔しさと同時にクレーコートでの手応えを覚えた今回の敗戦は、足りない最後のピースを得る戦いの“始まりの始まり”となるかもしれない。
<了>