“助っ人二世”メジャーリーガーに注目!=期待のルーキーに本塁打王、首位打者も

菊田康彦

日本と縁ある期待のルーキー

メッツ期待の若手、アイク・デイビスの父は元ヤクルトでプレーしたロン・デイビス 【Getty Images】

 今シーズン、メッツで1人のルーキーがメジャーデビューを果たした。2008年のドラフト1巡目で入団した23歳の一塁手、アイク・デイビスだ。4月19日(現地時間)にマイナーから昇格すると、その日のカブス戦に先発出場して2安打1打点。4日後のブレーブス戦では、先発の川上憲伸から同点弾となるメジャー初本塁打を放つなど、昨季のメッツ最優秀マイナー選手に選ばれた大器の片りんを見せた。

 このデイビス、実は日本とは縁がある。父親のロン・デイビスが、1989年にヤクルトでプレーしているのだ。インテリ然とした風ぼうとは裏腹に、サイドハンドからの剛速球を武器にヤンキースでセットアッパーとして活躍したロンは、82年にツインズへ移籍してからはクローザーを務めるなど、メジャー11年で通算130セーブをマーク。89年のシーズン途中でヤクルトに入団したが、36試合の登板でわずか7セーブに終わった。
 当時、捕手として球を受けた東京ヤクルトの中西親志バッテリーコーチも「真っすぐが速かったのは覚えているけど……」と言うぐらいで、熱心なメジャーリーグファン、あるいはヤクルトファンでもない限り、記憶にはほとんど残っていない投手だろう。
 父の来日時はまだ2歳だったアイクは、高校時代に打っては通算打率4割4分7厘、投げては23勝0敗14セーブの驚異的な成績を残し、デビルレイズ(現レイズ)からドラフト19巡目指名を受けたが、これを拒否。アリゾナ州立大進学後にメッツから1巡目で指名され、プロの世界に飛び込んだ。今季はメッツの正一塁手ダニエル・マーフィーが故障していることもあり、開幕からほどなくしてメジャーに昇格。5月に入って打率2割4分1厘とやや苦しんでいるが、7日のジャイアンツ戦では2ホーマーを放つなど、下位に低迷するメッツにあって期待の星であることは間違いない。

メジャー初の親子本塁打王

元阪神のセシル・フィルダーを父に持つプリンス・フィルダー 【Getty Images】

 現在のメジャーリーグで、父親がかつて日本でプレーしていたという“助っ人二世”は、デイビスだけではない。代表的なのはブルワーズのプリンス・フィルダー一塁手だろう。
 父のセシル・フィルダーは、ブルージェイズを経て89年に阪神へ入団。9月半ばまでホームランダービーのトップを走りながら、グラウンドにたたきつけたバットが跳ね返って手に当たる不運に見舞われ、小指を骨折。タイトルを逃す羽目になってしまった。しかし、翌年デトロイト・タイガースと契約してメジャーに復帰すると、なんと51本塁打、132打点でアメリカンリーグの二冠王を獲得。50本塁打超えは当時のメジャーでは13年ぶりの快挙だった。
 翌年も本塁打と打点の二冠を手にするなどメジャー13年で319本塁打を放った父に対し、息子のプリンスもパワーでは引けを取らない。「12歳のころに父が所属していたタイガースの本拠地球場で打撃練習をして、2階席に放り込んだ」との“伝説”は本人が否定したが、オーバーフェンスしたことは認めている。
 プロ入り後もそのパワーはいかんなく発揮され、07年には50本塁打で初の戴冠。親子で本塁打王を手にしたのは、メジャー史上初のことだった。ただし、父セシルの金銭問題などから、このころには親子の仲は険悪なものになっており、プリンスは父の年間最多記録に1本及ばなかったことに触れ「記録を抜いておやじを黙らせたかった」と口にしたほどだった。それでも26歳になったばかりのプリンスはメジャー6年目で通算166本塁打を記録しており、父のメジャー通算本塁打の更新は確実だろう。

“超優良助っ人”の息子

 フィルダーと並ぶ“助っ人二世”の代表格が、カブスのデレク・リー一塁手だ。父親はロッテなど3球団でプレーしたレオン・リー。日本では10年間で通算打率3割8厘、268本塁打と安定した成績を残し、ロッテでプレーした兄のレロン・リーと共に“超優良外国人”として知られた。また、引退後の03年にはオリックスの打撃コーチに就任し、石毛宏典監督が解任されてからは後任として指揮を執った。

 少年時代を父と共に日本で過ごしたデレクは、高校卒業時にドラフト1巡目指名でパドレスと契約。95年には、野茂英雄(当時ドジャース)がメジャーデビュー前に登板したマイナーの試合で、相手の4番打者として対戦したこともあった。03年には正一塁手としてマーリンズのワールドシリーズ制覇に貢献し、カブス移籍後の05年には首位打者を獲得。メジャー14年目の今季は、節目の通算300本塁打まであと3本と迫っており、メジャー経験のない父を実績では完全に凌駕(りょうが)している。

 ほかにも、5月19日のドジャース戦で本塁打が出ずにサイクル安打を逃したパドレスのウィル・ベナブル外野手の父親は、元千葉ロッテ外野手のマックス・ベナブル。今季は開幕からロイヤルズの先発ローテーションの一角を担っているブライアン・バニスター投手の父親は、元ヤクルト投手のフロイド・バニスターである。

 さらにここ数年のドラフト指名選手の中にも、“助っ人二世”が散見される。昨年のドラフトで言えばブルージェイズ34巡目指名のジョナサン・フェルナンデス(父は元西武のトニー・フェルナンデス)、08年のドラフトではアスレチックス8巡目のジェレミー・バーフィールド(父は元巨人のジェシー・バーフィールド)、07年はブルワーズ15巡目のジョーイ・パチョレック(父は元大洋、阪神のジム・パチョレック)などが、これに当たる。

 今後、こうした“助っ人二世”がメジャーで活躍する姿を見るのも、日本のファンにとっては楽しみのひとつとなりそうだ。そして――マーティ・キーオ(元南海)とマット・キーオ(元阪神)に次ぐ“親子助っ人”の誕生にも、ひそかに期待したいところだ。

<了>

※数字はすべて現地19日終了時点
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著者プロフィール

静岡県出身。地方公務員、英会話講師などを経てライターに。メジャーリーグに精通し、2004〜08年はスカパー!MLB中継、16〜17年はスポナビライブMLBに出演。30年を超えるスワローズ・ウォッチャーでもある。著書に『燕軍戦記 スワローズ、14年ぶり優勝への軌跡』(カンゼン)。編集協力に『石川雅規のピッチングバイブル』(ベースボール・マガジン社)、『東京ヤクルトスワローズ語録集 燕之書』(セブン&アイ出版)。

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