大学バレーの名門、東海大の強さの理由=黒鷲旗・全日本男女選抜大会

田中夕子

日本の将来を見据えたチーム作り

東海大のエース、八子大輔。代表候補にも選出され、日本バレーの将来を担う存在だ 【坂本清】

 大学生には、明るい未来を描かせる義務があると、積山監督は言う。
「あまりにコテンパンに負けてしまったら、見ている人は将来のバレー界に希望など持てません。元気な姿を見せて、若いやつらもいい選手がいっぱいいるじゃないかと思わせないと、先には続いていかないでしょう」
 宇佐美大輔(パナソニック)、阿部裕太(東レ)など多くの代表選手を輩出している東海大。現在のチームからも八子、安永、星野の3人が代表候補53人に選出された。中でもエースの八子は、日本代表の植田辰哉監督から高い期待を寄せられる若きホープでもある。八子自身も「大学にいても、常に世界を見据えたプレーがしたい」と言い、チーム内にも、ただ勝つためだけでなく、これからに羽ばたく選手を育てるシステムが自然に形成されている。
 リベロの大矢が明かす。
「本当はヒデ(星野)と2枚でサーブカットをしたほうが安定するんです。でも(八子)大輔さんがこれから上でやっていくためには、サーブカットもしなきゃならない。だからカットは大輔さんも含めた3枚で取る。先生から直接言われたわけではないですけど、みんなの中でそういう意識が根付いているのは確かです」
 将来のためにすべきことを考え、実践できる個々の能力。大学バレー界を牽引(けんいん)する存在として強さを誇り、世界で戦うOBが多いことも、これならば納得せざるをえない。

東海大を率いる積山和明監督は「大学生には明るい未来を描かせる義務がある」と言う 【坂本清】

 とはいえ、勝者を称賛するばかりではバレー界全体にとって真の強化にはつながらない。
 豊富なキャリアやスキルを携えた大学生とはいえ、格上であるならば、そうたやすく負けることなど許されないはずだ。
 OBを代表して、現在東レに所属する富松が言った。
「向かってくる大学生に対して、『やりにくいな』と考えているうちは“受け”ているんです。そうじゃなくて、おれらはお前たちより上なんだから、ボッコボコにぶっつぶしてやる。それぐらいの勢いで戦わないとダメだと思うんですよ」
 プレミアリーグ勢にとって、シーズンを締めくくる黒鷲旗。これからへ向けた輝かしい可能性とともに、とてつもなく大きな課題を大学生から突き付けられた。

<了>

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著者プロフィール

神奈川県生まれ。神奈川新聞運動部でのアルバイトを経て、『月刊トレーニングジャーナル』編集部勤務。2004年にフリーとなり、バレーボール、水泳、フェンシング、レスリングなど五輪競技を取材。著書に『高校バレーは頭脳が9割』(日本文化出版)。共著に『海と、がれきと、ボールと、絆』(講談社)、『青春サプリ』(ポプラ社)。『SAORI』(日本文化出版)、『夢を泳ぐ』(徳間書店)、『絆があれば何度でもやり直せる』(カンゼン)など女子アスリートの著書や、前橋育英高校硬式野球部の荒井直樹監督が記した『当たり前の積み重ねが本物になる』『凡事徹底 前橋育英高校野球部で教え続けていること』(カンゼン)などで構成を担当

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