“タレント軍団”パナソニックを支えたキーマン=バレーV・プレミアリーグ男子総括
“負けられない”チーム
パナソニックが2年ぶり優勝! “タレント軍団”のキーマンとは――。写真は、優勝を決めて喜ぶ清水(右)と永野 【坂本清】
しかもただ勝つだけではなく、スタートから最後まで、圧倒的な強さを発揮するに違いない、と思われていた。そんな戦前の予想を裏付ける、明確な理由。それをリベロの永野健が代弁する。
「負けられないですよ、メンバーがメンバーですから」
パナソニックには、日本代表でもエースとして活躍する清水邦広、福澤達哉に加え、ブラジル代表のウイングスパイカー、ジョンパウロ・タヴァレスがいる。そして、高さとスピード、パワーを兼ね備えた攻撃三本柱を操るセッターは、日本代表主将の宇佐美大輔。さらに2メートルの高さを武器に昨秋のワールドグランドチャンピオンズカップ(以下、グラチャン)にも出場した枩田優介、ユニバーシアード代表からアジア選手権ではリベロに抜擢(ばってき)された永野を加えると、コートに立つ7人のうち、6人がナショナルチームの選手たち。確かに、これでは負けられない。
昨秋のグラチャンで、日本チームの新たな「顔」として活躍した清水と福澤。08年の北京五輪以後、休む間なく走り続けてきた2人の若武者が、社会人1年目の今シーズンに懸ける思いは並々ならぬものがあった。
レギュラーラウンドを戦う最中にも、幾度となく、2人は同じ言葉を口にした。
「2人で同じチームに入って、内定選手のころから試合に出させてもらったのに、去年は勝つことができませんでした。あんな悔しさを、今年は味わいたくない。絶対に優勝したい、優勝しなきゃいけないと思っています」
エースの意地とプライドを懸けて、さらなる高みへ到達するために、それぞれに掲げた課題があった。
「サーブの安定感」を追求した福澤
試合開始のサーブで、堺を崩した福澤 【坂本清】
「何度練習しても、一度感覚が狂うとなかなか元に戻らない。簡単そうに見えて、サーブを修正するのが一番難しい。打つこと自体が嫌になることもあります」
とはいえ、ジャンプサーブを武器とする福澤は、サーブで相手のレシーブを崩す役割も担う。勝負どころで確実に、なおかつ攻めのサーブを打てるように、連戦が続くリーグ期間中も、トスの位置や、助走の距離を変え、どのポイントで打てばサーブの入る確率が高まるか試行錯誤を繰り返した。
その成果が、最も効果的に発揮されたのが、堺ブレイザーズとのファイナルラウンドだった。レギュラーラウンドは堺に4戦全敗を喫している。敗因は、常に明確。
「相手のサーブと勢いに押され、崩れたまま立て直せずに終わってしまった」
セミファイナルでようやく勝利し、苦手意識は払拭(ふっしょく)したものの、わずか1週間後のファイナルでの再戦。セミファイナル以上に、サーブが鍵になることは十分に理解していた。
「とにかく思い切り打つ。攻めることだけ、考えていました」
福澤のサーブから始まった決勝、1本目、2本目はともにネットすれすれの低い軌道を描いた。そして、堺の守備が乱れたところを、相手のお株を奪うようなブロックでチャンスを広げ、確実に得点へつなげる。
「決勝は、特に1セット目の入り方が大事。福澤のサーブで、いいスタートが切れた」
宇佐美がそう言ったように、立ち上がりから波に乗ったパナソニックが第1セットは危なげなく先取した。