全米に衝撃を与えた“イチロー元年”=ICHIRO Decade 2001

木本大志

惨劇乗り越え、年間最多勝Vに貢献

ア・リーグ西地区優勝を決め、チームメートの佐々木主浩(左)と喜ぶイチロー 【写真は共同】

 9月――。

 いよいよ優勝へのカウントダウンが始まったが、今日にも優勝が決まるという日だった。
「9・11」――惨劇が米国を襲ったのは。

 シーズンは1週間中断され、時間が止まった。

 アナハイムに遠征中だったマリナーズの選手は、陸路でシアトルに戻っている。

 再開されてすぐに地区優勝を決めたマリナーズだったが、選手にもファンにも底なしの笑みはなく、試合終了後、選手らは星条旗を持ってグラウンドを一周。それがあいさつ代わりとなった。

 イチローはシーズンが中断されている間、「野球どころじゃないという気持ちは当然みんな持っていると思います。でも、僕たちにできることがあるとすれば、それは野球。再開に向けて準備をするだけです」と話したが、チームはその言葉通り、野球をして、米国の再出発につなげた。

 優勝を決めた試合で、何よりもそれをアピールしたのは、イチローの1打席目。初球をとらえて痛烈な投手強襲安打を放ち、気持ちの切り替え、前を向くことを促した。あの1本の安打は、01年にイチローが放った242本の安打の中でも、強く記憶に残っている。

 記録的なシーズンは結局、116勝で終わり、1906年にカブスがマークした年間最多勝とタイ。抜くことはできなかったものの、100年近く頂点にあった記録に並んだことこそ、奇跡と言えた。

 プレーオフでは、リーグチャンピオンシップでヤンキースに敗れている。このとき、来季の雪辱を疑う声はなかったものの、以来、マリナーズはその舞台から遠ざかることになる……。

〜Decade 2002に続く〜
<2001 NOTES>

◆200安打達成
日付:8月28日/129試合目(チーム132試合目)
対戦チーム:デビルレイズ(現レイズ)
対戦投手:ポール・ウィルソン
結果:センター前ヒット

◆シーズン成績
打率:3割5分
安打数:242
タイトル:MVP、新人王、首位打者、最多安打、最多盗塁、ゴールドグラブ、シルバースラッガー、オールスター出場

◆マリナーズ成績
116勝46敗(ア・リーグ西地区1位)
監督:ルー・ピネラ

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