コートジボワールに時間はない

 2010年ワールドカップ(W杯)・南アフリカ大会の予選を突破したのに監督のいないチームがある。コートジボワールはその1つだ。アフリカネーションズカップの失敗でバヒド・ハリルホジッチ監督が解任された。新監督に残されている時間はわずかだ。

 W杯に出場するアフリカの6カ国の中で、予選敗退の南アフリカを除く5カ国(ガーナ、コートジボワール、ナイジェリア、カメルーン、アルジェリア)がネーションズカップに参加していた。必然的にベスト4に入れない国が1つは生まれる。前回王者のエジプトはW杯予選で敗れているから、この5カ国には含まれていない。つまり、W杯に出場するうちの2チームがネーションズカップ準決勝に参加できない可能性はかなり高かった。結局、エジプトは優勝し、ベスト4からはじかれたのはコートジボワールとカメルーンという結果になった。

 ベスト8で敗退した2チームの事情は異なる。カメルーンが負けた相手は大会のチャンピオンとなったエジプトであり、延長戦の結果だった。カメルーンの首都ヤウンデのメディアは、GKトレーニングの問題、ディフェンス、ベテラン選手など、あらゆる疑問を投げ掛けた。しかし、ポール・ルグエン監督の進退問題には発展しなかった。ルグエンはW杯予選のチーム状態が悪いときに就任し、その後、立て直して予選を突破した。その手腕への信頼が残っており、ここで監督まで交代したら変化が大きすぎると考えられている。

 しかし、コートジボワールは違った。W杯予選を早々に突破し、メディアもファンもそれが当たり前だと受け取った。アフリカ大陸でも最も才能が集まっているチームであり、彼らはヨーロッパのトップクラブでプレーしている。ハリルホジッチは普通の仕事をしたにすぎないと思われているので、ネーションズカップでアルジェリアに敗れると窮地に立たされた。ハリルホジッチが率いた21カ月間でコートジボワールは22試合にわたって無敗を記録していたのだが。
 このボスニア人監督によれば、彼の更迭は政治的な決断であり、それに対してはどうすることもできないということらしい。まず、協会はFIFA(国際サッカー連盟)のプレワールドカップ・ワークショップにハリルホジッチを派遣しなかった。FIFAから指名されていたにもかかわらずだ。その数日後の2月27日、協会はハリルホジッチを解任し、7〜10日後に新監督を発表するといった。しかし、現時点でもまだ正式に発表されていない。

 一方で、チームは3月3日にロンドンで韓国と試合をすることが決まっていたので、アシスタントコーチのジョルジュ・クアディオが一時的な代理監督に指名された。4人のFWを起用する超攻撃システムは完全に裏目となり、韓国のMFをコントロールできないまま0−2で完敗。とはいえ、監督不在の才能集団は、監督たちにとっては魅力的だ。すぐにたくさんの照会状が届いたが、協会が最初に白羽の矢を立てたのがベルギー人のエリック・ゲレツだった。しかし、現在アル・ヒラル(サウジアラビア)の監督を務めているゲレツは興味を示さず。新聞は有名監督の名を上げ連ねている。フィリップ・トルシエ、フース・ヒディンク、スベン・ゴラン・エリクソンの名が出ているが、彼らを雇うには大金が必要だ。協会はそこも考慮しなければならない。

 中でも最も有力な候補はヒディンクだ。6月にロシア協会との契約が切れ、8月にはトルコ代表監督に就任するが、その間にW杯の指揮を執ろうというわけだ。実現すればオランダ(1998年)、韓国(02年)、オーストラリア(06年)に続く4大会連続のW杯になる。チェルシーでも短期間監督を務めたので、ディディエ・ドログバとサロモン・カルーについてはよく知っている。

 W杯の直後にはネーションズカップの予選が始まるので、短期の監督でいいのかどうかという問題があるが、選手たちに監督交代への不安はないようだ。だが、ガーナが1−2でボスニア・ヘルツェゴビナに敗れ、南アフリカはFIFAランキング111位のナミビアに1−1と、3月のアフリカ勢の親善試合は散々な結果に終わっている。カメルーンはイタリアと0−0だったが、相手は2軍だった。コートジボワールはブックメーカーの予想ではポルトガルに次ぐ10番目の優勝候補である。アフリカでは最上位だが、さほど楽観的な状況ではない。

<了>
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著者プロフィール

1965年10月20日生まれ。1992年よりスポーツジャーナリズムの世界に入り、主に記者としてフランスの雑誌やインターネットサイトに寄稿している。フランスのサイト『www.sporever.fr』と『www.football365.fr』の編集長も務める。98年フランスワールドカップ中には、イスラエルのラジオ番組『ラジオ99』に携わった。イタリア・セリエA専門誌『Il Guerin Sportivo』をはじめ、海外の雑誌にも数多く寄稿。97年より『ストライカー』、『サッカーダイジェスト』、『サッカー批評』、『Number』といった日本の雑誌にも執筆している。ボクシングへの造詣も深い。携帯版スポーツナビでも連載中

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