名将・小出監督が教えるフルマラソン完走術=東京マラソン直前対策

情報提供:角川SSC新書

数々の名ランナーを育て上げた名将・小出監督が伝授するフルマラソン完走の心得とは!? 【Photo:青木紘二/アフロスポーツ】

 有森裕子(92年バルセロナ、96年アトランタの五輪女子マラソン2大会連続メダリスト)、高橋尚子(シドニー五輪同金メダリスト)をはじめ、歴史に残る名ランナーたちを育て上げたマラソン指導の第一人者、小出義雄。その名将が昨年11月、著書「マラソンは毎日走っても完走できない」を上梓した。
 あらゆるランナーに対応するノウハウが記された本書では、今月28日開催の東京マラソンに数多く参加する初・中級ランナー向けのアドバイスも伝授されている。そこで、著作の一節から「東京マラソンで完走を目指すランナー」にも参考になるであろう、小出流フルマラソン完走の心得をご紹介したい。

前半は体力の消耗を極力減らす

<フルマラソンの流れ(1)/スタート〜中盤編>

 フルマラソンの理想はイーブンペース。つまり一定のペースで走り続けることが、体力の消耗を最低限に抑えるポイントです。完走を目指す人でも、いい記録を出したいと思う人でも、そこは基本的に変わりません。ただ、このイーブンペースを守るのが、初マラソンではやっぱり難しいんです。

 たとえば、参加者が何万人にも達する大きなマラソン大会になると、スタートの号砲が鳴ってからスタートラインを越えるまでに時間がかかることがよくあります。こういう大会はスタート地点を過ぎてからも大混雑。走れるような環境ではなく、のそのそと前に移動するだけです。ランナーが「ペースを守ろう」と考えていても、はじめから無理なんですね。

 こんなとき、人と人の間をジグザグにぬって追い抜いていく人がいます。混雑から抜け出そうとして、脚のバネを使って右に左へと走ってしまう。本人は、「これじゃあ、予定のペースで走れないヨ」と思っているのかもしれない。でも、こんなところで体力を使ってしまっては、それこそ後になって、ペース維持ができなくなります。

 大きな大会やスタート地点の道が狭いところなどでは、最初の1〜2キロはなかなか思いどおりには走れないものです。そこで焦らないこと。前半は体力の消耗を極力減らすことを意識してください。とにかく、後半まで体力の温存に努めなければなりません。

「ちょっと遅いかな」がちょうどいいペース

 どんな大会でも2〜3キロも走ると、だんだんランナーも落ち着いてきます。混雑もなくなり周りの流れも見えてきて走りやすくなる。そんな中で5キロくらいまでくると、体がふっと軽くなって、スピードを上げてしまうことがある。これがいわゆる「ランナーズハイ」。初心者だけでなく誰もが陥りやすい落とし穴です。どんなに調子がいいと感じられても、前半は「まだ早い、まだ早い」と自分を抑えること。調子のいいうちにタイムを稼ごうなどと考えると、かえって後半のペースダウンが激しくなります。

 もし、オーバーペースのまま走り続けてしまうと、疲労物質の乳酸がどんどん脚に蓄積されていきます。エネルギーの消耗はフォームを崩すことにもつながり、やがてひざや腰が痛みはじめ、30キロ過ぎるともう歩くことしかできません。「行けるところまで行ってやろう」という考え方は、フルマラソンでは通用しないと思ってください。

 初マラソンの人でも、ある程度経験を積んだランナーでも、前半はゆっくり行くことが鉄則です。むしろ「ちょっと遅いかな」というくらいが、ちょうどいいペース。普段の練習で、自分が楽に走れるペースというのを体で覚えておくといいでしょう。「これくらいのペースで走れば、5キロはだいたい何分だな」というタイムを頭に入れておく。もし、走っていると忘れそうだという人は、油性のペンで腕に設定したペースを書いておくと便利です。そうして、5キロ、10キロ、15キロ……と、5キロごとの距離表示を通過したところで時計を見ながら自分のペースを確認します。

 前半の10キロや中間点を過ぎたところで、予定していたタイムより2〜3分遅れていても、慌てる必要はありません。後半でいくらでも巻き返すことはできます。それより、調子が上がっても決して無理をしないこと。前半は我慢して、ペースをキープしたまま走ることが大事です。

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