ゴール欠乏症は形にこだわりすぎたから=清水秀彦の中国戦分析・東アジア選手権
日本−中国 後半、ボレーシュートを試みる平山。左端は岡崎=味スタ 【共同】
コンセプトに縛られ意外性が足りない
それでもゴールを奪えなかった。これは決定力不足もありますが、コンセプト、形にこだわりすぎてしまったことが一番の要因だと思います。きれいにパスをつないで、サイドチェンジをして、いいところまで崩すけれど、ゴールが奪えない。サイド攻撃がなかなか機能しなかったベネズエラ戦の反省を生かしてのことだと思いますが、そればかりにとらわれすぎてゴール前での割り切り、大胆さ、リスクを冒してのプレーなど、変化が少なかったような気がします。もっと、貪欲(どんよく)にゴールを狙わないと。
例えば、前半はチャンスを作れていたのにCKがなかったです。どんな形でもいいんです。FKでもいいんです。1点を取るために、クロスを放り込んでクリアされたらまたそれを拾って、畳み掛けたり、CKを何度も奪って押し込むとか。でもこの試合では、一度クロスを跳ね返されたらもう終わりです。攻撃に厚みがない。セカンドボールを拾ってからのミドルシュートは1本もなかったんじゃないですか。サイド攻撃を意識するあまり、形にばかりこだわってしまった感は否めないでしょう。シンプルに縦パス1本で決めたっていいわけです。以前から言われていることですが、コンセプトに縛られてしまい、ダイナミックさ、意外性が足りなかった。そこが大きな問題だと思います。サイド攻撃がよくなったとはいえ、事実として2試合連続ノーゴールに終わっているわけですから。
今回の取り組み(3トップ)を評価するのは、正直なところ難しいです。W杯で欧州組が入った時に、じゃあ実際に今日のようなサッカーをするのかといったら、恐らくそうではないと思います。前線はタイプの似た選手に置き換えられないですから。中村俊のプレースタイルは大久保や玉田と明らかに違うわけです。サイド攻撃を意識するためのものだったと思いますが、その先にどうつながっていくのか、またオプションとして成立するのかは分かりません。
香港戦は貪欲にゴールを目指せ
また、終盤に1点が欲しい展開で、残り2枚のカードの切り方もどこか中途半端でした。勝ちたいのか、それともこのままでいいのかがちょっと見えませんでした。いい形が作れていてこのまま先制点が取れればいいなと思っていたら、逆に1点を取られてしまう。この試合は(相手の)PKが決まっていたら負けたかもしれない。サッカーでは往々にしてそういうことがよくあって、場合によっては後手に回る恐れもあります。だから、平山の投入は展開によって決まっていたとして、金崎、佐藤の起用はどうだったんだろうと。テストとして見たいのであれば、もっと長い時間プレーさせるべきだし、残り5分では厳しいです。チーム内の事情は分からないので何とも言えませんが、ちょっと意図が見えてこないなと。W杯という本番を想定した場合、気になる点ではありました。
右サイドバックに内田が復帰しましたが、持ち味は発揮できていたと思います。高い位置でサイドに起点ができたおかげでタイミングよく上がれたし、カットインからゴールに向かう、内田らしいプレーもありました。ポストに嫌われたシュートシーンも含め2回くらいありましたかね。この試合の内田とベネズエラ戦の徳永を比べるのは、状況がまったく違うので、現時点では何とも言い難いですね。
以上のような点から、この試合を総合的に評価すると、100点満点中、50点をあげられるかどうかといったところでしょう。試合後すぐにサポーターからブーイングが起こりました。それが答えなのかなと。次の香港戦でこの状況を打破するには、必ずしもコンセプトにこだわらず、泥臭くてもいいから貪欲にゴールを目指すしかないと思います。
<了>
東アジア選手権(男子・女子)日本戦をフジテレビで放送中
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