フェデラーが土壇場で見せた経験の差=全豪テニス

テニスネットPro

新鋭マレー(右)をストレートで下し、王者の貫禄を見せつけたフェデラー 【Photo:Getty Images】

 テニスのグランドスラム(4大大会)初戦、全豪オープンの男子シングルス決勝は、第1シードのロジャー・フェデラー(スイス)が第5シードのアンディ・マレー(英国)を6−3、6−4、7−6で下し、3年ぶり4度目の優勝を果たした。

 フェデラーは、昨年のウィンブルドン選手権以来となる通算16個目のグランドスラムタイトルを獲得し、自身が持つ史上最多の優勝記録を更新。一方のマレーは、2008年全米オープン決勝でフェデラーに敗退した悔しさを胸に、英国男子として74年ぶりのグランドスラムを狙ったが、あと一歩及ばなかった。

“史上最強”のプレーを披露するフェデラー

 今大会絶好調のフェデラーは緊張を隠せないマレーから、第1セットの第2ゲームをブレークし、大舞台での経験の差を早くも見せつける。一方、マレーもフェデラーのネットプレーに食らい付き、パッシングショット(ネットに向かってくる相手の横を抜くショット)3本ですぐにブレークバックを果たす。
 しかし、この日のマレーはファーストサーブが決まらず、苦しい展開を強いられた。フェデラーが第8ゲームでブレークに成功すると、そのまま第1セットを奪った。

 第2セットになってもフェデラーの勢いは衰えない。強力な武器であるフォアハンドに加え、バックハンドのダウンザライン(サイドから相手コートのサイドに、ストレートのショットを打つこと)、アングルショット(角度をつけて打つショット)がさえ渡り、第3ゲームをブレーク。すると、ここからフェデラーの華麗なテニスが全開モードとなる。ドロップショット(ボールにスピンをかけ、ネット際に落とすショット)で揺さぶりをかけながら、ライン上にエースを放つ。“史上最強”と呼ばれる能力を如何なく発揮し、最後は豪快なフォアのドライブボレーで2セットを連取した。

終盤に反撃を見せたマレーだったが……

 グランドスラムで2セットリードから逆転負けを喫したことが一度もないフェデラーだったが、追い込まれたマレーは第3セットについに牙をむいた。
 マレーはファーストサーブの確率を上げ、フェデラーの短いボールを思い切りハードヒットする戦略に出る。そして第6ゲームでチャンスを得ると、フェデラーのドロップボレーに反応し、フォアボレーでブレークに成功した。

 5−4とリードしたまま、自らのサービスゲームを迎えたマレー。しかし、ここで執念を見せたフェデラーは焦るマレーのミスを誘い、ブレークバックに成功。この後はお互いサービスキープが続き、タイブレークに突入した。
 タイブレークで最初にチャンスをつかんだのはマレー。ネットに出てくるフェデラーにアングルショットを決めてセットポイントをつかむ。しかし、この絶好のチャンスにフォアハンドをネットに掛けてしまう。

 こういう展開になると、やはり経験の差が大きくものを言う。フェデラーは大胆なドロップショットとフォアハンドの強打で3度目のチャンピオンシップポイントを獲得。最後はマレーのバックハンドがネットに掛かり、フェデラーが3年ぶり4度目の全豪オープン制覇を果たした。

新たなモチベーションを手に戦い続ける王者

 昨年のウィンブルドンで前人未踏となる15個目のグランドスラムを手にしたフェデラーだったが、その後は全米オープン決勝、ロンドンのツアーファイナルで敗退し、実力の陰りを指摘する声もあった。しかし、今回の優勝で、あらためてグランドスラムに賭ける執念と、テニスに対する情熱の強さを見せつけた。

 昨年の全仏初制覇で大きな重責を取り去り、続くウィンブルドンでタイトルを奪回し、文字通り“史上最高の選手”となったフェデラー。双子の娘に自分のテニスを見せるという新たなモチベーションを手にしたスイスの巨匠は今後、自らのグランドスラム記録をどこまで伸ばしていくのだろうか。

<了>
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