山梨学院大附、選手に疑われて信頼されたベテラン監督

平野貴也

選手が信頼を寄せるベテラン監督の存在

山梨学院大附を指揮する横森監督(中央)。就任1年目で全国制覇を果たした 【写真は共同】

 自信という言葉は選手との信頼関係に置き換えることができるのかもしれない。監督就任1年目だが、実際には総監督的な立場で4〜5年前から部の強化に携わり、スカウティング活動も積極的に行った。監督業に復帰した現場では、自ら素質を見抜いて評価した選手たちの育成にあたった。

 選手に監督の印象を聞くと、皆が口をそろえて「勝ち方を知っている人」と答える。その1人が横森監督が守備ラインで最も頼りにしていた井上だ。大阪からやってきた守備の要は、疑いの目が絶大なる信頼感へ変わっていった期間を笑いながら振り返った。
「最初、ボールを使った腕立て伏せとかをやらされたときは、みんなで『いまどき、こんな練習古いんじゃないの』って疑ったこともあったけど、今になってみると先生は勝ち方を知っている人なんだと思う。いつも『サッカーは足でやるけど、下半身じゃなくて上半身でやるもんや』って言われてやってきた。それもはじめは『何を言ってるんや』って思ったけど、先生は空中戦での跳び方とか一から教えてくれて、大きくはないセンターバックの中田寛人(170センチ)が長身FWに競り勝てるようになったりした。あれは、絶対に横森先生のおかげ。あんなに強くなかった。サイドハーフの平塚拓真もレギュラーで出られる感じじゃなかったのに、サイド攻撃のやり方を教えてもらって主力になった。先生についていくと、試合も大事なところでなぜか勝てる」

 試合後、歓喜の輪を作った山梨学院大附のイレブンは、偉大な指導者を囲んだ。韮崎時代の高校総体制覇以来、人生2度目の胴上げを受けた横森監督は「県内の予選でも胴上げの話があったけど、そのときは『県内なんかはいらない、全国大会でないと』と冗談みたいに言っていた。でも本音で言いますと、まさかここで胴上げしてもらえるとはまったく思っていませんでした。大変うれしかったです」と相好を崩した。監督にとっては選手権決勝戦4度目にして悲願の初優勝。相手を、そして教え子の力を認めて好判断を下したベテラン指導者の情熱が実った瞬間だった。

<了>

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著者プロフィール

1979年生まれ。東京都出身。専修大学卒業後、スポーツ総合サイト「スポーツナビ」の編集記者を経て2008年からフリーライターとなる。主に育成年代のサッカーを取材。2009年からJリーグの大宮アルディージャでオフィシャルライターを務めている。

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