阪神・金本はなぜ苦しんだのか……来季の復活は?
今季は苦しいシーズンとなった金本。42歳を迎える来季は? 【写真は共同】
金本はなぜ苦しんだのか? そして、来季は成績を伸ばすことができるのか? 東北福祉大時代に金本の2年先輩としてプレーし、プロ入り以降も金本を見守ってきたプロ野球解説者の大塚光二氏に話を聞いた。
オフに十分な練習ができなかった影響が出た
金本の打撃の特徴として言えるのは、ポイントが近いということと、そこでさばけるパワーと技術があるということです。体を開かずにボールを呼び込んでおいて、スイングスピードの速さと、広角に打ち分ける技術で打球を飛ばす。厳しい練習を繰り返してきたことで、体を効果的に使うことができていますね。
また、4番打者というと引っ張りがちになりますし、金本自身もホームランにはすごくこだわりがあるんですが、状況に応じて打つことができるのも強みだと思います。
あと金本のすごいところは自己管理ができることと、精神力、闘争心ですね。毎年、取材をしたり、食事をしたりするんですが、まず弱音は吐きません。眼力や仕草を見ていて「今年はキツイかな」と思わされることがないんです。
――4月に月間MVPを獲得しましたが、そのあと調子を落とした原因は
左ひざの手術の影響で2、3月にしっかりトレーニングができなかったことが原因だと思います。本来はしっかり自分の体をつくり上げていくタイプなんですが、昨年と今年は手術をしたので練習ができませんでした。それでも、「阪神の4番」や「連続試合フルイニング出場」という責任と重圧があるので、無理して開幕に合わせた感じでしたね。その状態で4月にあれだけ打てるのはすごいことなんですが、オフに十分なトレーニングができなかった影響が徐々に出たんだと思います。
また、今季の阪神は打線がつながらなかったので、金本が孤立してしまったことも影響したと思います。
金本は「日本で一番プレッシャーのかかる選手」
金本は責任感が強いんですよ。連続試合フルイニング出場が継続中だから、まわりが気を使ってしまう。それがイヤだから「金本が出場して当たり前だ」と全員に言われるように鍛えているんです。
中日の岩瀬仁紀から死球を受けたとき(2004年7月29日)には、左手を骨折してしまったので岡田彰布監督(現オリックス監督)に「代えてください」と言ったらしいんですね。それでも、岡田監督が記録を続けさせてくれた。そして今は真弓明信監督が「使い続ける」と言ってくれている。この気持ちに応えるために金本は努力を続けているわけです。
僕は金本は「日本で一番プレッシャーのかかる選手」だと思っています。連続試合フルイニング出場を続けながら、4番を打ち続けるなんて普通は味わえないプレッシャーですよ。04年の岩瀬の死球のときだけは「もうダメだ」と思ったらしいですけど、今は「あのとき乗り越えられたんだから」と自信になっている部分もあると思います。