南米王者エストゥディアンテス、3度目の“奇跡”を=クラブW杯
苦しみながらつかんだ南米王者の栄冠
09年コパ・リベルタドーレスMVPに輝き、笑顔を見せるベロン 【Photo:ロイター/アフロ】
エストゥディアンテスの09年コパ・リベルタドーレス優勝への道のりは簡単ではなかった。予選からスタートし、ブラジルのクルゼイロ、エクアドルのデポルティボ・キト、ボリビアのウニベルシタリオ・デ・スクレと同居したグループリーグでは、苦しみながらクルゼイロに次ぐ2位で通過した。準々決勝のデフェンソール・スポルティング(ウルグアイ)、準決勝のナシオナル・モンテビデオ(ウルグアイ)は危なげなく退けたが、決勝では再びクルゼイロとまみえ、ホームでの第1戦を0−0で終えた。この時点で、エストゥディアンテスの不利は明らかだった。実際、アウエーでの第2戦で1点のビハインドを背負い、形勢はますますクルゼイロ有利に傾いた。だが、そこからが神秘的なクラブの真骨頂。ガストン・フェルナンデスとマウロ・ボセッリがゴールを決め、敵地ベロオリゾンテで2−1と試合をひっくり返した。
この3年間、エストゥディアンテスは多くの主力選手を失ってきた。アルゼンチンのほとんどのクラブがそうであるように、選手を売却することで資金を得なければならないからだ。例えば、FWパブロ・ピアッティ(アルメリア/スペイン)、FWマリアーノ・パボーネ(ベティス/スペイン)、GKマリアーノ・アンドゥハル(カターニア/イタリア)、そしてG・フェルナンデス(彼の場合は、メキシコのティグレスからの期限付き移籍だったため、古巣に戻った)といった選手たちだ。
また、アルゼンチン代表の右サイドバック、マルコス・アンヘレリは負傷のため離脱中、ホセ・ルイス・カルデロンは近ごろ引退した。それでも、監督のサベージャはマーケットを注意深く観察して効果的な補強を都度行っているし、下部組織がしっかりしていることもクラブを助けている。
チーム全体をつかさどるベロンの存在
基本的な中盤のフォーメーションは、右にエンツォ・ペレス、左にレアンドロ・ベニテスと、テクニックの高い2人が両翼に並ぶ。ボランチの位置にはロドリゴ・ブラーニャと、、チーム全体のプレーをつかさどるベロン。エストゥディアンテスで復活を遂げた“ブルヒータ”(小さな魔法使い=ベロンの愛称)はコパ・リベルタドーレスでも大会MVPに輝いた。
FWは2枚。マウロ・ボセッリはボカで長らくマルティン・パレルモの控えに甘んじてきたが、08年にエストゥディアンテスに加入すると主力として定着した。もう1人はウルグアイ人のファン・マヌエル・サルゲイロである。
エストゥディアンテスは各ポジションにキーマンがそろい、バランスの取れたチームである。だが極論を言えば、誰がこの赤と白の縦じまのユニホームをまとっているかは関係ない。このチームには“奇跡”を起こす何かが存在しているのだ。68年のオールド・トラフォード、09年のベロオリゾンテで見られたように。
<了>