ロシア対ドイツ、歓喜と落胆が隣り合わせのモスクワ決戦=W杯欧州予選

ドイツを追うロシア、主力が好調だがけが人も

モスクワの地に乗り込むドイツ代表。勝利で本大会への切符を手にできるか 【(C)アフロ】

 2010 FIFA World Cup(以下、W杯)南アフリカ・欧州予選グループ4では、10日に2位ロシアが首位のドイツをモスクワ・ルジニキ・スタジアム(2007−08シーズンにUEFAチャンピオンズリーグ=CL=決勝を開催)に迎える。両者の勝ち点差はわずか1。ドイツが勝てば本大会出場が決まるが、負ければ順位が逆転する。まさに、グループ首位の座を懸けた決戦となる。

 次が最終節ということで、小さなミスがこれまでの長い戦いを台無しにする恐れがある直接対決。特にドイツにとっては、ロシア戦は絶対に負けられない試合となる。最終節のロシアの相手は、ここまで勝ち星なしで最下位のアゼルバイジャン。ロシアの勝ち点3獲得は堅いと見られる。
 対するドイツの最終節の相手はフィンランド。ホームとはいえ、決してやさしい相手ではない。従って敵地とはいえ、ロシアに敗れればプレーオフに回る可能性が高くなる。ロシアを追い込んだように見えながら、実は追い込まれたのはドイツと思えるほどの緊迫した局面だ。

 この予選中、ドイツは手堅い戦いを見せており、大きなミスは犯していない。むしろ前節のアウエーでのウェールズ戦では、ロシアがヒヤリとする時間帯があった。残り19分の時点で1−1の同点。勝ち点を逃すと見られたロシアは、ここから相手DFのミスもあって2得点を挙げ、辛くもドイツとの勝ち点差1を保ったのだ。
 ロシアはこの試合でアンドレイ・アルシャービン(アーセナル)が活躍した。また後半ロスタイムにはロマン・パブリュチェンコ(トッテナム)がダメ押し点を決めるなど、キーマンが調子を維持している様子がうかがえる。

 アルシャービンはウェールズ戦で悪化した太ももつけ根の負傷で離脱したが、既にフル出場が可能な状態にまで回復している。9月29日に行われたCLのオリンピアコス戦に続き、10月4日のプレミアリーグ・ブラックバーン戦でもゴールを決めた。
 一方、W杯予選でここまで5得点を挙げチーム得点王のFWパブリュチェンコは、アキレス腱の負傷もあり、ここ最近は所属クラブでベンチ外が続いている。FWの選手層が厚い好調トッテナムでの出場機会が少ないことが気掛かりだが、代表では大事なところで結果を残しており、けがからの回復具合が気になるところだ。
 ロシア代表のフース・ヒディンク監督はドイツ・ブンデスリーガからシュツットガルトのFWパベル・ポグレブニャクを招集。敵を良く知るストライカーの存在は心強いだろう。

ドイツの不安とバラックの悲願

 一方、ドイツはFWマリオ・ゴメスが今季加入したバイエルンで3ゴールを挙げているものの、昨シーズンに比べるといまひとつピリッとしない。ゴメスとストライカーのポジションを争うクローゼは不調。攻撃の二枚看板が万全ではないことは、不安要因と言える。圧倒的なタレントをそろえながら波に乗れていないこのビッグクラブの負のバイオリズムが、シュバインシュタイガーらほかのバイエルン勢に悪影響を及ぼしていなければいいのだが……。

 ロシアのカウンター攻撃は強烈だ。ロシアに先制を許すようなことがあれば、ドイツもスクランブル的に攻め上がらなければならない。だが、サイドバックが安易に前線に飛び出せば、アルシャービンやセルゲイ・セマク(ルビン・カザン)らの正確無比なロングフィードから、裏に飛び出た長身のパブリュチェンコに続けざまにパスが通るだろう(もし彼が万全な状態で合流すればであるが)。

 ドイツにはディフェンスラインを立て直す時間は与えられない。この攻撃を続けられれば、いかにドイツであっても、やすやすとはね返せるものではないだろう。かと言って、FW陣だけをマークしても、今度はセカンドストライカーのアルシャービンらが敵陣の隙間を切り裂いて進入し、分厚い攻撃を仕掛ける。ユーロ(欧州選手権)2008では、まさにこの連続攻撃でオランダを撃沈させたのだ。そしてこのオランダ戦で決勝ゴールを決めたドミトリー・トルビンスキー(ロコモティフ・モスクワ)が半年ぶりに、ドイツ戦のために招集されている。

 とはいえ、昨年10月に行われたドルトムントでの対戦は、ホームのドイツがロシアを下している。ロシアの“飛び道具”の研究は間違いなく進んでいるはずだ。ユーロでの「連戦で疲労がたまったオランダvs.出場停止明け2試合目でフレッシュなアルシャービン」の構図をそのまま当てはめるのは無理がある。
 ましてや来年のW杯を最後に代表引退とのうわさもあるドイツの大黒柱ミヒャエル・バラック(チェルシー)にとって、目指すのは本大会での優勝。“シルバーコレクター”の汚名を返上するためには、こんなところで立ち止まるわけにはいかないだろう。

「世界がようやくロシアを発見した」(ヒディンク監督)ユーロ2008では、実現しなかったこのカード。究極のサバイバルゲームを制するのはどちらか? 10万人以上収容のルジニキ・スタジアムで、ホームの大観衆を背負った“レッド・アーミー”(ロシア代表の愛称)がドイツ代表を待ち構える。
 ちなみに、ルジニキ・スタジアムは人工芝のピッチで有名。08年CL決勝の際には天然芝を特別に用意しての実施となったが、今回は人工芝のまま。このピッチが決戦の行方を左右する可能性もあるだろう。FIFA(国際サッカー連盟)の公式サイトによると、シュバインシュタイガーは降雨の場合の濡れた人工芝への不安を口にしている。

<了>

W杯予選 フジテレビNEXT・フジテレビONE放送予定

CS放送フジテレビNEXT・フジテレビONEでは、2010 FIFA ワールドカップ 南アフリカ 欧州予選・南米予選の大一番を生中継! そのほかにも予選終盤の注目カードを放送します。

ロシア対ドイツ 10月10日(土) 23:50〜(生中継) フジテレビNEXT
アルゼンチン対ペルー 10月11日(日) 6:50〜(生中継) フジテレビONE
ドイツ対フィンランド 10月14(水) 24:54〜(生中継) フジテレビNEXT
イングランド対ベラルーシ 10月14(水) 27:50〜(生中継) フジテレビONE
ウルグアイ対アルゼンチン 10月15日(木) 6:50〜(生中継) フジテレビNEXT

※詳しい放送スケジュールは、番組オフィシャルサイトをご覧ください。
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