日本サッカーの新星を求めて=高円宮杯の潮流、今大会の見どころ

川端暁彦

すべてが激戦グループ

今大会の優勝候補はC大阪U−18か。U−18日本代表FWの永井龍(写真)らタレントがそろう 【エル・ゴラッソ】

 大会は9月6日から10月12日まで1カ月+1週間の長丁場だ。短期決戦のカップ戦の形態をとりながら、中期戦としての色を持つ独特の戦いである。関東や東海、交通の便が良い関西主要都市のチーム以外にとっては、毎週移動を重ねるつらさもある。当然ながら、学校は普段と変わらず運営されており、行事もある。この点でも、夏休みや冬休みといった長期休暇の時期を狙って開催される他競技を含めた日本の高校生年代の全国大会とは一線を画している。
 例年、初出場チームや出場が遠い過去となったチームはこの点に苦しめられる。経験が重要な大会とも言えるだろう。

 そして9月6日に始まるグループリーグ戦の組み合わせは、以下のように決まった。

グループA(主会場:西が丘サッカー場)
大阪桐蔭高校、三菱養和サッカークラブユース、サンフレッチェ広島ユース、大分トリニータU−18

グループB(主会場:藤枝総合運動公園サッカー場)
星稜高校、藤枝明誠高校、ジェフユナイテッド千葉U−18、青森山田高校

グループC(主会場:ひたちなか市総合運動公園)
桐光学園高校、ジュビロ磐田ユース、セレッソ大阪U−18、愛媛FCユース

グループD(主会場:習志野市秋津サッカー場)
東福岡高校、広島観音高校、流通経済大学付属柏高校、東京ヴェルディユース

グループE(主会場:群馬県立ラグビー・サッカー場)
ヴィッセル神戸ユース、横浜F・マリノスユース、前橋育英高校、コンサドーレ札幌ユースU−18

グループF(主会場:NACK5スタジアム大宮、駒場スタジアムなど)
米子北高校、静岡学園高校、FC東京U−18、浦和レッズユース

 シードされたのは過去の成績上位6地域のプリンスリーグ優勝チーム。つまり、Aの広島ユース、Bの青森山田、CのC大阪U−18、Dの東福岡、Eの神戸ユース、FのFC東京U−18がシードチームである。
 移動の不利という意味では藤枝会場は独特だ。青森山田高校の黒田剛監督が嘆いたように、多くの地方チームにとって、1週間に1度、東京に出て試合をするだけならそこまで大変ではない。ただ、東京へ出て、そこからもう一度移動するとなると、これは負荷が大きい。東京を起点として交通網を整備してきた日本ならではの事情とも言えるだろう。青森からだと飛行機を使っても6時間を要する。九州、四国勢の不利は言わずもがな。北海道勢は、気候の差というもう1つの敵とも戦わなくてはいけない。
 グループの激戦度について見ていくなら、恐らくE組が最高峰だが、高円宮杯の場合、どこへ行っても「レベル低すぎっ!」と嘆く心配は余りない。どのグループにも将来プロへ行く選手はいる。もし応援するチームがあるなら、そこへ行くのが一番だが、なくても興味があるという場合は第1、2節に関しては近場に行くか、サッカー専用スタジアムで行われるA、B、Dの会場がいいかもしれない。Fも第2節以外はサッカー専用の会場である。最終節は第2節までの結果を見ながら、激戦になりそうな会場をセレクトするといいだろう。

C大阪U−18が優勝候補 リベンジに燃える前橋育英

 過去の例を見ると、十分な実力がありながら夏にこけたチームが奮闘する傾向はある。となると、大阪桐蔭、広島ユース、三菱養和ユース、桐光学園、浦和ユース……と挙げていくと字数がなくなるのでやめておこう。
 ただ、そういう考えで見るなら、D組は猛烈に“熱い”グループだろう。東福岡、流経大柏、広島観音、東京Vユースと、高い期待値を持ちながら、全国大会、もしくはその予選で悔しい負けを経験している。いきなり個人的な話で恐縮だが、初戦はD組の習志野会場に行こうと思っている。このグループ、かなり熱い。
 こけたと言うには失礼な成績だが(ベスト8)、恐らく不本意な成績だったと思われる札幌U−18、横浜FMユースもポテンシャルの高い選手がそろう好チーム。札幌は中学生の“山瀬功治(現横浜FM)2世”MF神田夢実もエントリーされるなど目白押しの素材を誇り、見るのが今から楽しみなチームの1つ。横浜FMは中盤にタレントをそろえながら、夏は攻守でゴール前の勝負強さを欠いた。それがどれだけ改善されているかがポイントだろう。

 つまずいたチームにばかりに注目してしまったが、普通に考えれば、本命は夏のクラブユース選手権王者C大阪U−18となるのかもしれない。U−18日本代表FWの永井龍、同DFの扇原貴宏、U−17日本代表DF杉本健勇、夛田凌輔を擁し、道上隼人、細見諒ら脇役も粒ぞろいの好チームである。懸念材料は、この大会の上位進出経験がなく、独特の大会方式の中でコンディションを維持できるかという点だ。
 同大会準優勝のFC東京U−18は昨年も4強まで進出し、その点ではアドバンテージもある。今夏のU−18日本代表にFW重松健太郎ら最多の4人を送り込んだ布陣は個性と機能性の双方を兼ね備えている。個人的には本命に推すが、最近この大会の予想は当たっていないので、自信はない。
 夏の総体王者・前橋育英は、同大会をその開幕前から単なる通過点と位置付け、この高円宮杯を狙ってきた(※総体決勝進出チームはプリンスリーグの成績とは関係なしに高円宮杯への特別出場枠がある)。プリンスリーグは負傷者にも苦しみ、屈辱の2部落ちとなったが、もともと戦力的にはJクラブともわたり合えるだけのものはある。選手は口々に「ユースにリベンジしたい」と語っており、士気は非常に高い。地元で戦える利もあり、台風の目となるかもしれない。
 魅惑の魔法陣を中盤に構える三菱養和ユースやFW大崎淳矢を擁する広島ユースなど、ほかにも紹介したいチームは多々あるのだが、とりあえずここで筆を置きたい。

 高校年代のトップクラスにあるチームが一堂に会する様を見られる機会はここしかない。せっかくの機会なので、ぜひ会場へ足を運んでほしい。それはきっと選手や指導者の力にもなり、いずれは日本サッカー界の血となり、肉となるのだから。

<了>

「エルゴラ・プリンチペ」高円宮杯特集号

「エルゴラ・プリンチペ」高円宮杯特集号 【エル・ゴラッソ】

 サッカー専門新聞『エル・ゴラッソ』では、この大会に合わせて、新しく育成年代に特化したムック本『エルゴラ・プリンチペ』を創刊いたしました。大会の展望、注目選手紹介に加えて、出場24チームの完全名鑑、チーム紹介を網羅した本ですが、それにとどまらず、「育成年代を読者と一緒に考える本」として成長していければと考えております。

9月4日 全国書店にて発売!
500円(税込み)
A4変型/オールカラー/56ページ

主要コンテンツ
JFA育成年代改革特集
・犬飼基昭会長インタビュー
・ポカリスエットU−12リーグ
・JFAアカデミー
・高円宮杯等、主要大会時期移管問題

選手インタビュー
・岡崎慎司(清水エスパルス)
・山田直輝(浦和レッズ)

指導者インタビュー
・神戸ユース・黒田和生監督
・Jリーグ・上野山信行技術委員長
・C大阪U−18・中谷吉男監督

年代別日本代表特集
・U−17日本代表“池内ジャパン”特集
・SBSカップU−18日本代表レポート

夏休み特集
・全国高校総体
・日本クラブユース選手権(U−18)

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著者プロフィール

1979年8月7日生まれ。大分県中津市出身。フリーライターとして取材活動を始め、2004年10月に創刊したサッカー専門新聞『エル・ゴラッソ』の創刊事業に参画。創刊後は同紙の記者、編集者として活動し、2010年からは3年にわたって編集長を務めた。2013年8月からフリーランスとしての活動を再開。古巣の『エル・ゴラッソ』をはじめ、『スポーツナビ』『サッカーキング』『フットボリスタ』『サッカークリニック』『GOAL』など各種媒体にライターとして寄稿するほか、フリーの編集者としての活動も行っている。近著に『2050年W杯 日本代表優勝プラン』(ソル・メディア)がある

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