バレー男子、3戦全勝で世界選手権へ 効果を生んだ新たな試み
全日本男子が、14年連続14回目の世界選手権出場権をつかんだ 【坂本清】
※ランキングは2009年7月28日時点のもの
世界で戦うために取り組んだ事
ひょっとしたら、日本はアジアで勝つことすら難しいのではないか。ランキングでは日本が上回っているとはいえ、危惧(きぐ)する声があったのも事実だ。
日本は、高さやパワーという「個」の力で劣る部分をカバーするため、組織力と正確な技術をあらためて見直した。そのなかで重要課題として挙げられたのが、サーブとブロックの関係性を構築することだった。
サーブの種類を、ミスになるかもしれないが攻めを優先した「リスクサーブ」と、攻めつつも確実に入れていく「8割サーブ」、確実にコースや選手を狙う「作戦サーブ」と3つに区分する。石島雄介(堺)、清水邦広、福澤達哉(ともにパナソニック)らジャンプサーブ陣は対戦相手のデータによって「リスク」と「8割」に分け、宇佐美大輔(パナソニック)、山村宏太(サントリー)、松本慶彦(堺)らジャンプフローター陣は、前衛のウイングスパイカーや、後衛からパイプ攻撃(後衛からの高速バックアタック)を仕掛ける選手などを狙い、サーブで、ブロックの的を絞らせる。
日本のブロックは、3連戦で効果を発揮 【坂本清】
「サイドの選手が、ブロックのときにサインを出すようにしたんです。どのチームもパイプが増えたので、サイドで止めるよりも、気持ち、少しだけ中に寄る。それを個別に判断するのではなくて、全員が共通理解を持って動くためにサインを出す。大会前のゲーム形式での練習も、徹底して確認するようにしていました」
最終日の韓国戦は、まさにその成果が顕著に現れた。
まず第1セット、19−19の場面。「勝負をするサーブとはいえ、入る確率を上げるために、芦別合宿から、助走の距離を短く、トスを少し低くした」という清水のサーブが低い軌道で韓国コートに入り、サーブカットが乱れた。ブロックの選択肢からクイックとサイドからの速い攻撃が消え、日本の両サイドブロックがやや中央に寄る。苦しい体制から放たれたカン・ドンジンのバックアタックを、3枚ブロックで見事に仕留めた。
続いては第2セットの13−7と日本がリードした場面だった。サーバーの松本が、やはり後衛レフトのカンをサーブで狙う。セッターが前衛にいるため、韓国はAカットが入らなければセンターを使うことが少ないのはデータで確認していた。カット返球後、レフトのムン・ソンミンが中央に回り込んだことを確認すると3枚で時間差攻撃を仕留め、続いてレフトからのクロススパイクをやはり3枚でシャットアウト。韓国・カンは試合後にこんなコメントを残した。
「韓国の速攻がことごとく遮られるなど、日本はセットプレーの連携が取れていた。あれは練習なくして成り立たない。いかに練習を積んできたか、痛感させられた」