甲子園を駆け抜けた初出場11校の夏=2009年夏の甲子園リポート

松倉雄太

選手宣誓の吉永主将率いる伊万里農林に涙なし

八千代東高(千葉)
1回戦 2−3 西条高(愛媛)

 チーム打率は出場49校で最も低い2割3厘。それでもノーシードから接戦の連続で勝ち上がった千葉大会同様、この甲子園でも西条高・秋山拓巳を相手に一歩も引かない戦いぶり。最後は力尽きたが、「8月まで高校野球ができると思っていなかった」とエースの村上浩一が話した通り、選手の目には充実感が漂っていた。

南砺総合高福野高(富山)
1回戦 1−15 天理高(奈良)

 富山大会決勝で9回に逆転した勢いをこの甲子園でも持ち込みたかったが、強豪・天理高を相手にまさかの初回7失点。守りも乱れ、自分たちの野球ができなかった。それでも5回に挙げた甲子園初得点の持つ意味は大きい。さらにベンチ入り18人全員が試合に出場。エース・上田航平ら半数が新チームにも残る。この屈辱を晴らす機会は残されている。

伊万里農林高(佐賀)
1回戦 2−6 横浜隼人高(神奈川)

「最高の仲間ときずなを深め、全国の人々に希望と感動を与え続けます」
 吉永圭太主将の選手宣誓で始まった今夏の甲子園。吉永は今大会唯一のエースで主将。初戦の相手は同じ春夏通じて初出場の横浜隼人高。初回に3本のヒットで満塁のチャンスを作ったが、あと1本が出なかった。結果的にこの好機を逃したことが響いた。5回、6回で計6失点。初戦突破はならなかった。それでも最高の仲間ときずなを深めたナインに涙はなかった。

徳島北高(徳島)
1回戦 0−2 日大三高(西東京)

 出場49校中最高打率4割8分8厘を誇る日大三打線に対し、エース左腕・阪本寛典が躍動した。徳島大会を1人で投げ抜いた阪本。「県大会の時より調子は良かった」と話した通り、甲子園でも制球は乱れなかった。日大三高は狙い球を絞り切れずにわずか3安打。しかし4回に守備が乱れ失点すると、5回にも1点を失った。味方打線の援護がなく阪本の甲子園はわずか108球で終わった。試合後、この日が誕生日だったことに触れられると、「甲子園が誕生日と重なるなんて運命です。勝ちたかった」と無念の涙を流した。

滋賀学園高(滋賀)
1回戦 0−2 智弁和歌山高(和歌山)

 智弁和歌山高との近畿勢対決。相手エース・岡田俊哉のピッチングに注目が集まったが、同じ左腕である滋賀学園高・棚上拓也も堂々としたピッチングを見せた。2点を失ったものの、無四球。岡田ほどの球威や変化球のキレはないが、リリースポイントの見難いフォームが、智弁和歌山打線に的を絞らせなかった。山口達也監督は「試合には負けましたが、選手たちは滋賀学園の新しい歴史を作ったと思います」と誇らしかった。

鳥取城北高(鳥取)
1回戦 3−6 札幌第一高(南北海道)

 昨秋の中国大会では4強に進出しながら、あと一歩で選抜出場を逃した鳥取城北高。その悔しさをバネに悲願の甲子園初出場を果たした。初戦の札幌第一高戦。絶対的エースの中尾健が相手打線につかまる苦しい展開。しかも抜群の安定感を誇る制球力が乱れてのものだっただけに、チームの動揺は大きかった。「試合間隔が開いてベストの状態にしてやれなかった。私の責任」と話した石川晴久監督。しかし9回に2年生の田村凌が放った本塁打は必ず次へのステップとなるはずだ。

<了>

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著者プロフィール

 1980年12月5日生まれ。小学校時代はリトルリーグでプレーしていたが、中学時代からは野球観戦に没頭。極端な言い方をすれば、野球を観戦するためならば、どこへでも行ってしまう。2004年からスポーツライターとなり、野球雑誌『ホームラン』などに寄稿している。また、2005年からはABCテレビ『速報甲子園への道』のリサーチャーとしても活動中。

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