凋落著しいセリエAに未来はあるのか=イタリアサッカー界を襲う危機
インテルからイブラヒモビッチ(左)、ミランからカカが去るなど、セリエAはスター選手の流出が続く 【Getty Images】
そして今日、そうした実態が、ここ数年のイタリア勢不振という形で表面化してきた。それはこの国のサッカー関係者の多くが早くから指摘していたことであり、にもかかわらず誰一人として、そして何一つとして具体的な策を施してこなかった“ツケ”である。より長期的な視野に立つプレミアリーグ(イングランド)、リーガ・エスパニョーラ(スペイン)、ブンデスリーガ(ドイツ)の今日に見る優位も、すでに10年も前から容易に予測し得ることであった。
放漫経営の果てにある巨額の赤字
まず第一に挙げるべきは、信じ難いまでの放漫経営。これは言うまでもなく収入を度外視したチーム作りであり、例えばインテルは年間200億円をはるかに超える赤字を記録し続けながら、選手の年俸は年を追うごとに増加を続け、昨シーズンはその総額がおおよそ170億円にも達している。
高額のサラリーを必要とする選手をかき集めてチームを作ったわけだが、結果はと言えば、一昨シーズン、そして昨季と続いて国内を圧倒的な強さで制するも、CLではいずれれも決勝トーナメント1回戦で敗退。タイトル獲得で舞い込んでくる賞金を手にすべくもくろむも、その夢はかなわず、そしてついに今季はほかならぬエース、イブラヒモビッチの売却を余儀なくされたというわけだ。
ちなみに、そのイブラヒモビッチの昨季の年俸は約16億円。これは、同じくセリエAに所属していたクラブ、レッジーナの選手全員の年俸総額を超える額である。
ミランもしかり。収支バランスはインテルとほぼ同額。よってカカの放出はあくまでも財政再建が目的であり、事実90億円もの売却益を得るも、獲得した大物はクラース・ヤン・フンテラールのみ(費やした額は約20億円)、その大半が赤字補てんに充てられている。ローマはクラブ売却問題になおも揺れ続け、上位クラブの中ではユベントスが半ば唯一のプラス収支とされるが、セリエA20クラブの約7割は惨憺(さんたん)たるマイナス経営であり、結果として約350億円規模の赤字をリーグ全体で記録し続けている。
“右肩下がり”を続ける観客動員数
従って、当然のことながら、収益全体に占める入場料収入の比率も下がり続けている。一昨シーズン、この比率をプレミアが35%としたのに対し、セリエAのそれはわずかに13%。クラブ経営の柱とされる収益「入場料、マーケティング、テレビ放映権」を、順に「35、26、39」とバランス良く配しているプレミアに対し、セリエAは「13、24、63」。著しいスタジアム離れと同時に、過度な「テレビ放映権料」への依存体質を如実に示している。