キム・ヨナが五輪へ向けて始動=滑りに備わった自信と女王の貫録

辛仁夏

アイスショーで演技を披露

韓国で行われたアイスショー出演したキム・ヨナ 【辛仁夏】

 バンクーバー五輪シーズン開幕を約2カ月後に控え、世界女王のキム・ヨナが久しぶりに韓国ファンの前でその存在感を強烈にアピールした――

 昨季の世界選手権で初めて銀盤の女王に上り詰めたキム・ヨナ(18歳=高麗大)は、5月に渡った練習拠点のカナダ・トロントから、約3カ月ぶりにアイスショー出演のために韓国に戻ってきた。久々に韓国ファンの前で演技を披露したキム・ヨナは、世界女王のオーラを醸し出しながら、3年ぶりに氷上に復帰したミシェル・クワンや荒川静香ら五輪や世界選手権のメダリストらが集まった『三星エニーコール・ハウゼン・アイスオールスターズ』で、堂々たるホスト役を務めた。

 ソウルのオリンピック公園体操競技場特設リンクで開催されたアイスショーには連日、満員の約1万人強の観客が集まった。8月14日の初日から最終日の16日まで、オープニングからすごい盛り上がりを見せた。第1部は約60人のオーケストラがライブ演奏を行い、オペラ歌手の歌う中、各スケーターがプログラムを披露。そして、第2部のオープニングでは、突然の死を世界中の人たちが惜しんだ“キング・オブ・ポップ”こと、マイケル・ジャクソンを追慕するテーマで、メドレー曲が流れる中、全出演者がマイケルに扮(ふん)した格好でそれぞれ踊った。

洗練された滑りに加わった自信と貫録

 世界女王に5度君臨したクワンの久々の“生演技”にも注目が集まったが、韓国の大観衆が一番期待していたのはもちろん世界女王のキム・ヨナの演技だ。ショーの開始から終了まで途切れることがなかった大歓声と大きな拍手が、キム・ヨナがリンクに登場したときはひと際大きくなるほどの熱狂ぶりを見せた。

 今回のアイスショーでキム・ヨナが披露したプログラムは、第1部では昨季、高い評価を得たショートプログラム(SP)の「死の舞踏」だった。世界選手権で世界最高得点をマークしたこのプログラムをファンにもう一度楽しんでもらおうという気の利いた選曲で、観客はその完成度の高い演目に再び魅了されていた。そして、第2部はリアーナの「Don't stop the music」で、黒パンツのハード調のコスチュームを着てセクシーでダンサフルな滑りで引き込んだ。ジャンプは安定しており、スピンは昨季と比べて成長の跡がうかがえ、荒川の十八番であるレイバック・イナバウアーも見せるなど、今季のSPのイメージをほうふつさせる内容になっていたと言ってもいいだろう。

  今回、アイスショーで見せたキム・ヨナの洗練された滑りには、彼女が昨季、世界女王になって手に入れた「自信」と「女王の貫録」が備わっていた。2、3年前はシャイな普通の女の子だったが、いまや「国民の妹」として韓国では超がつくほどの有名人になり、同い年のライバル浅田真央と切磋琢磨(せっさたくま)して競い合ったフィギュアスケートでは瞬く間にトップスケーターの仲間入りを果たし、来年2月のバンクーバー五輪では金メダルの有力候補の一人だ。

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著者プロフィール

 東京生まれの横浜育ち。1991年大学卒業後、東京新聞運動部に所属。スポーツ記者として取材活動を始める。テニス、フィギュアスケート、サッカーなどのオリンピック種目からニュースポーツまで幅広く取材。大学時代は初心者ながら体育会テニス部でプレー。2000年秋から1年間、韓国に語学留学。帰国後、フリーランス記者として活動の場を開拓中も、営業力がいまひとつ? 韓国語を使う仕事も始めようと思案の今日この頃。各競技の世界選手権、アジア大会など海外にも足を運ぶ。

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