キム・ヨナが五輪へ向けて始動=滑りに備わった自信と女王の貫録

辛仁夏

イメージを一新するプログラムに挑戦

 16日に終えたアイスショーの翌日17日には練習拠点のカナダ・トロントに戻り、シーズン初戦となるグランプリ(GP)シリーズのフランス杯(10月15−18日、パリ)までの2カ月間は、五輪シーズン用のプログラムの完成度を高めるためにみっちりと滑り込みをする予定だという。ブライアン・オーサー・コーチは「世界には強い選手がたくさんいて、その中の一人が浅田真央選手だが、ヨナは自然体で競争することができる選手なので、われわれが照準を合わせているのは自分たちに集中することだけだ」と、五輪シーズンだからと言って特別な戦略は立てないようだ。

 五輪シーズンの今季、新たに作ったプログラムはSPもフリースケーティング(FS)もこれまでのイメージとは違い、「キム・ヨナの変身ぶり」が顕著な内容になっているようだ。著名な振付師のデイビット・ウィルソンは「『007』のSPは美しく危険でミステリアスなボンドガールを追求した。FSはヨナ自身の成長過程を反映させた内容になっている。昨季のプログラムがすごく成功したので、それに劣らないようにするためにはジャンルを変える必要があった。だから、今季は昨季とは違ったイメージでプログラムを作った。ヨナの演技はすべての人に気に入られるはずだ」と自信たっぷりに話した。

 キム・ヨナも新しいプログラムについて「『007』のSPは最初言われたときにはピンと来ず、自分にできるか不安があったが、練習を重ねてきて今は自然にやれると思えるようになった。FSは、これまでやったいろいろなプログラムで培ったあらゆる面を取り入れた内容になっていて、柔らかさと強さの両面を持つダイナミックな演技を見せたい。新シーズンで新しい試みをするのは心配もあるが、挑戦的なプログラムに向けて努力して期待に応えたい」と抱負を語った。

フランス杯から浅田真とキム・ヨナが対決

GPシリーズ初戦のフランス杯に出場する浅田真央 【写真は共同】

 今季は、GPシリーズ初戦のフランス杯から女王争いを繰り広げる浅田とキム・ヨナの対決が見ものだ。自分に集中すれば結果もついてくると自信と余裕を見せるキム・ヨナに対し、浅田の陣営では得意なジャンプを軸にさらなる高難度の構成で対抗しようとしている。
 初戦の戦いは、両者が同じ舞台でどんな評価を受け、どれだけの得点を得られるのかが鍵になるだろう。そして、次の対戦までに何をしなければいけないかがはっきりと分かるはずだ。浅田はフランス杯後、すぐにロシア杯に出場しなければならないが、キム・ヨナは第5戦のスケートアメリカまで時間的余裕がある中で調整を図ることができる優位さがありそうだ。10月中旬から始まるGPシリーズなどシーズン前半戦で、ほぼ五輪金メダル争いの行方は見えてきそうだが、最後はどこまでプログラムを完ぺきに仕上げ、五輪本番のひのき舞台で最高の演技ができるかどうかが勝負の分かれ目になるに違いない。
 
 勝負どころがどこにあるのか示唆するコメントをキム・ヨナ自身が残している。「五輪シーズンだからといって緊張はしていない。五輪まではまだ時間も多くあり、その前にグランプリシリーズにも出場しなければならない。常に同じ気持ちでいられるように準備し、常に最高のプログラムを完ぺきに演技できるように努めていきます」

 意気込みを語る言葉には静かな、そして確かな闘志が込められているように感じた。

<了>

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著者プロフィール

 東京生まれの横浜育ち。1991年大学卒業後、東京新聞運動部に所属。スポーツ記者として取材活動を始める。テニス、フィギュアスケート、サッカーなどのオリンピック種目からニュースポーツまで幅広く取材。大学時代は初心者ながら体育会テニス部でプレー。2000年秋から1年間、韓国に語学留学。帰国後、フリーランス記者として活動の場を開拓中も、営業力がいまひとつ? 韓国語を使う仕事も始めようと思案の今日この頃。各競技の世界選手権、アジア大会など海外にも足を運ぶ。

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