米国陸連の長距離強化プロジェクトとは?

及川彩子

ニューヨークシティマラソンがマラソン初挑戦となったカラ・ガウチャー。3位という好成績を残した 【Getty Images】

 北京での『熱い』戦いから2カ月以上が過ぎた。短距離やフィールド勢は冬季練習に、長距離勢はクロスカントリー、ロードレース、そしてマラソンを転戦している。11月2日に米国・ニューヨークで行われたニューヨークシティーマラソンでは、昨年の世界選手権(大阪)の女子1万mの銅メダリストであり、米国期待のカラ・ガウチャーが初マラソンに挑戦。初マラソン・米国新記録の2時間25分53秒で3位に入った。ガウチャーの目標は、ロンドン五輪のマラソンV。ガウチャーをはじめ、ここ数年、飛躍を見せる米国長距離の軌跡をたどっていく。

ガウチャー、ニューヨークで初マラソン

 北京五輪からわずか2カ月後、ニューヨークには世界トップレベルの女子マラソン選手が顔をそろえた。世界記録保持者のポーラ・ラドクリフ(英国)、世界選手権を制し北京五輪では銀メダルを獲得したキャサリン・ヌデレバ(ケニア)、2006−07年ワールドマラソンメジャーズ優勝のゲテ・ワミ(エチオピア)ら、実力者が北京五輪のリベンジを図るべく、集結した。一方、米国勢は、北京五輪代表のマグダレーナ・ルイーブレ、ロードに強いケイティ・マクレガー、そして初マラソンに挑戦するガウチャーらが参戦。注目は、北京で23位と惨敗したラドクリフの走りと、初マラソンのガウチャーがどこまでラドクリフについていけるか。特に、4年後のロンドン五輪でマラソン出場を表明しているガウチャーに、米国陸連、そして記者たちの大きな期待がかかった。

 スタート時の気温が4度、また強い風に悩まされ、選手たちは序盤から苦しんだ。そんな中、風よけの「貧乏くじ」を引いたのは、“フロントランナー”の異名を持つラドクリフ。「ポーラに悪いなと思ったけど、前に出るつもりはなかった」とガウチャーはラドクリフをぴったりとマーク。
 ニューヨークは、ほかのメジャーなマラソンと比べ、2分30秒から3分程度記録が悪く、「難関コース」と呼ばれている。特に30キロからのダラダラと続くアップダウンは『The Wall(壁)』とも呼ばれ、選手たちを苦しめる。これが3回目のニューヨークとなるラドクリフは、後半に備えて前半抑え目に入り、ハーフの通過は1時間13分23秒で通過した。

 レースが動いたのは、やはり30キロだった。「後半ペースアップする走りを目指した」と言うラドクリフがペースを上げると、集団は縦に長くなり、35キロで独走状態に。後半ハーフを1時間10分33秒で、前半よりもマイナス3分で走り切ったラドクリフが2時間23分56秒で連覇のV。初マラソンのガウチャーは、最初のゆさぶりで脱落し、一時は5位まで落ちたが、その後、持ち前の粘りを見せ2時間25分53秒で3位に食い込んだ。

1/2ページ

著者プロフィール

米国、ニューヨーク在住スポーツライター。五輪スポーツを中心に取材活動を行っている。(Twitter: @AyakoOikawa)

新着記事

編集部ピックアップ

コラムランキング

おすすめ記事(Doスポーツ)

記事一覧

新着公式情報

公式情報一覧

日本オリンピック委員会公式サイト

JOC公式アカウント