3季連続最下位チームが目指すJ1昇格=躍進する徳島の改革・第2章
「継続性のある指導」という下地
チームメートと練習する柿谷(左)。 【佐藤拓也】
そして、昨年から大幅にメンバーが入れ替わりながらも、開幕からチームが機能していることも特筆すべき点だ。それは昨年1年をかけて、美濃部直彦監督がチームのベースを築いたからにほかならない。
昨季、3年連続でのリーグ最下位に終わったが「内容は評価している」と中田部長は話す。結果はついてこなかったものの、1年を通して攻撃的なパスサッカーを展開した。そして試合を重ねるごとにチームは成長していき、リーグ中盤からは上位チームが相手でも主導権を握って戦えるようになった。
「昨年、美濃部監督は結果が出ない中で苦しかったと思うけど、ブレずに戦ってくれた。だから今年は、新たな選手が加わって、上乗せすることができている」(中田部長)
パスサッカーという下地の上に、そのサッカーに順応できる選手を補強したことで、チームのレベルは上がった。さらに今季は、試合によってロングボールを多用したり、守備的に戦ったりと、柔軟な対応ができるようになった。システムも4−4−2だけでなく、4−3−3や4−5−1、あるいは3−5−2など、試合の状況や対戦相手との関係によって使い分けができるようになったことが、チームの強みとなっている。
最下位という結果に終わったが、徳島にとっての昨シーズンは、決して無駄な1年ではなかったのである。目の前の結果だけにこだわらず、着実な積み重ねをしてきたからこそ、今の徳島がある。また、加入したばかりの柿谷がすぐにフィットできたのも、しっかりとした土台が築かれているからこそ。美濃部監督の“継続性のある指導”が、チームをしっかりと進化させているのだ。
立ちはだかる大きな壁
柿谷加入後、選手とフロントスタッフに対し、中田部長はそう告げた。「6位以上」を掲げてスタートを切った徳島だが、折り返しとなる第26節終了時点でその6位をキープ。「半年でビジョンを達成できているのだから、次なるビジョンを掲げなくてはいけない」と中田部長が言うように、徳島は改革・第2章へと突入する。しかし、目の前に大きな壁が立ちふさがった。
第27節、大黒将志をはじめ、レアンドロや服部年宏、平本一樹、土屋征夫といった、J2でも圧倒的な個の力を誇る東京ヴェルディに対し、徳島は手も足も出ず0−4の大敗。「組織というよりも、個人の力の差でやられてしまった。完敗です」(中田部長)が認めるように、昇格を目指すチームとの力の差をまざまざと見せつけられた。さらに第28節には、水戸にも0−2で敗れ、今季初の連敗を喫することとなった。
ここにきて目立つようになったのが、ベテラン選手の動きの鈍さである。連戦と暑さにより、彼らの疲労困憊(こんぱい)ぶりは隠し切れない。ベテランをチームの中心に据えてきた徳島にとって、夏場の戦いはまさに正念場だが、こうなることは開幕前から懸念されていたこと。だからこそ「もっと底上げしてもらわないと困る」と美濃部監督は若手の台頭を求め続けてきたのである。
水戸戦では徳重が先発を外れ、倉貫や羽地はミスを繰り返して途中交代。プレーに影響が出るくらい、彼らの疲労はピークに達しようとしていた。ベテランの動きに合わせるように、チーム全体の動きの質も低下。倉貫、羽地がピッチを去った後、柿谷や青山がなんとか打開しようと奮闘は見せたものの、流れを変えることができないまま、試合に敗れることとなった。
改革・第2章の最大のテーマとは
徳島の中田強化育成部長はJ1昇格を目標に掲げる。 【佐藤拓也】
試合後、悔しさで目を赤くさせながら、こう語った柿谷。そして、自らに言い聞かせるように続ける。「これからは、僕ら若い選手がチームを引っ張っていかないといけない」――それが改革・第2章の最大のテーマと言えよう。
ベテラン選手の加入により「プロ意識の浸透」と「上位進出」という改革・第1章は一定の成果を出した。ここからさらに「上位進出」という壁を超え、「昇格争い」という次なる一歩を踏み出そうとしている徳島。だが今季初の連敗が、これからの道の険しさを示すこととなった。
「3季連続最下位のチームが、そんな簡単にうまくいくわけがない」と三木が言うように、まだまだ徳島は発展途上のチーム。これからも厳しい戦いが待ち受けていることだろう。そんな中、ベテランに代わって若い選手がチームを支えるようになるのか。改革・第2章の成否は、そこに懸かっているといえよう。その旗手として、柿谷にかかる期待と責任は大きい。
徳島にとっても、そして柿谷自身にとっても、これからが本当の戦い。新たな可能性を切り開くための戦いが始まる。
<了>