タレント不足を覆してつかんだ銅メダル=ユニバーシアード 男子サッカー
過去大会に比べタレント不足の感がある今大会のチーム
日本のサッカー男子は大学リーグ所属選手のみで構成され、01年北京大会では巻誠一郎、深井正樹(ジェフ千葉)、羽生直剛(FC東京)、03年大邱大会では岩政大樹(鹿島アントラーズ)、山崎雅人(ガンバ大阪)、05年イズミル大会では藤本淳吾(清水エスパルス)、徳永悠平(FC東京)、小宮山尊信(横浜F・マリノス)、高橋大輔(大分トリニータ)、前回大会の05年タイ大会では長友佑都(FC東京)、渡邉千真(横浜FM)らを輩出。高校時代無名で地方の大学に進学した山岸範宏(浦和レッズ、99年マジョルカ大会代表)のように、「ユニバ代表に入ることがプロになるための最低条件」ととらえている選手も少なくない。
今大会では巻、深井らを育てた駒澤大の秋田浩一氏が監督に就任。前線からの厳しいプレスと少ないタッチでゴールを狙う“スピードサッカー”を掲げ、約1年半前より準備を進めてきた。
チームの中心は、主将の高橋秀人(東京学芸大4年・FC東京特別指定選手)。所属する東学大ではセンターバックだが、ユニバ代表ではボランチでプレー。小柄な選手の多い中盤にあって182センチの長身を生かしたプレーで相手の攻撃を跳ね返し、的確な判断力で攻守両面でチームを引っ張る。また、湘南ベルマーレを退団し昨年から大学でプレーすることになった中町公祐(慶應大4年)も、秘密兵器としてこの春から代表に加わった。さらにセンターバックの山村和也(流通経済大2年)、FWの永井謙佑(福岡大3年)らU−20代表組も名を連ねている。
ただ、過去の大会に比べるとどうしてもタレント不足の感が否めないのも事実。前回は、大会前に5人がJクラブへの内定を決めていたが、今大会はゼロ。さらには、唯一のJ内定者だったFWの小林悠(拓殖大4年・川崎フロンターレ内定)が大会直前のオーストラリア合宿で骨折し、参加を辞退。FWは三島康平(駒澤大4年)、三平和司(神奈川大4年)と永井の3人だけになるなど、不安を抱えたまま大会に臨むことになった。
永井の連続ハットトリックなど、3戦全勝でグループリーグを突破
グループリーグでの快勝は、秋田監督の狙いが的中した結果といえる。フランスやブラジルといった相手は、FIFA(国際サッカー連盟)ランキングでは日本より上位だが、ユニバはあくまで大学生の大会。A代表とは様相が違ってくる。テクニックはあってもノープレッシャーだったり、スタミナ不足で自滅することも多い。日本は前線から厳しいプレスを掛けると同時に、両サイドの山田大記(明治大3年)、伊藤大介(順天堂大4年)らスピードと運動量のある選手が相手を消耗させ、足の止まった後半に永井を投入。相手の裏を狙う作戦で得点を重ねてきた。
また、ユニバは猛暑の夏に、中1日で6試合を連戦する過酷な大会でもある。いかに選手の体力を温存させて決勝トーナメントに臨むかがポイントだ。もとより、90分間常にプレスを掛け続けるというハードワークを強いるのが秋田監督のサッカー。したがってユニバ代表もそのほとんどが運動量豊富な選手だ。永井に関しては後半投入などで温存されているが、それも彼のスピードを効果的に使うためのものであった。