タレント不足を覆してつかんだ銅メダル=ユニバーシアード 男子サッカー
セルビア、イタリアのサッカーを否定している限りは勝てない
前線でくさびとなるFW三島も疲労が大きく、攻撃はサイド頼みに。だが、大柄なセルビア選手相手に中途半端なクロスはすべて跳ね返され、日本は攻め手を見いだすことができない。
後半に永井を投入するも、厳しいマークと裏に抜けるスペースを徹底的にケアされて手も足も出ず。0−0のままPK戦に突入し、GK河田晃兵(福岡大4年)が3本を止める活躍を見せて辛うじて準決勝進出を果たしたものの、準決勝のイタリア戦に向けて不安の残る試合となった。
イタリアは、前回大会の準々決勝で対戦しPK戦で敗退した因縁の相手。例年セリエBやCの若手を投入し、3大会連続で決勝進出を果たしている強豪だ。とはいえ、いずれの大会のイタリアも、いわゆる“うまい”チームではない。ただ、勝つための戦術は徹底している。最終ラインと球際の競り合いには決して負けず、前線の大柄な選手にボールを当ててゴール前の混戦に持ち込む。日本は、ボールをキープしている時間こそ長いが、くさびもサイドからの攻撃も封じられ、単発の攻撃に終始するばかり。三平のドリブルで得たPKで先制するものの、結局はそのシンプルなサッカーで2点を入れられ、逆転負けを喫した。
イタリア戦後「サッカーは難しい」とつぶやいたのは主将の高橋。ボールをキープしながら完敗を喫した内容もさることながら、1失点目の反省からGKの河田にやや前のポジションで守るよう指示したところ、そこを突かれてループシュートで2点目を奪われた。わずかな変化をチャンスに結びつける「勝負どころを知っている」(秋田監督)強さがイタリアにはあった。
「選手たちはイタリアもセルビアも全然うまくないと思っているかもしれない。しかし日本は勝てなかったし、点を取ることができなかった。彼らのサッカーを面白くないと否定するのは簡単だが、否定している限りは勝てない。そのサッカーを認めた上で自分たちのサッカーを見いださなければ」(秋田監督)
目指したサッカーで銅メダルを獲得
「結局、ボールを奪ってからゴールまでは3つの動きしかない」(秋田監督)。中盤からのスピーディーなパスワークで、イタリア戦とは見違えるようなサッカーを展開した日本だが、そのベースにあったのは「ゴールを奪うためには、少ない動きでボールを前線に運ぶ」(秋田監督)という、このチームが目指した“スピードサッカー”だった。
実は日本が優勝以外の結果でメダルを獲得したのは今大会が初めて。前回はそれでも5位入賞を果たしたが、過去には決勝トーナメントにすら進めなかった大会もある。
五輪代表もJ内定者もいない、タレント不足を指摘され続けてきた今大会のユニバ代表。先達の金には届かなかったが、決勝トーナメントで対戦した相手のサッカーを消化した上で、最後の最後に自分たちのサッカーでメダルを獲得した。銅メダルという結果、そして大会中に見せた成長は、大学サッカー界においても、今後の彼らにとっても大きな財産となるだろう。
<了>